第8話 ギルド内で揉め事は「めーッ!」
「このアマァッ、野郎共やっちまえ!」
女冒険者に対峙する数人の男の中から一人の男が叫んだ。
一人の女性冒険者に対して一声に飛び掛かる男達。
しかし男達の拳は全て簡単に躱されていく。
「避けるなっ卑怯だぞっ。」
いやいや、それだけの人数でかかって一回も当てられないお前らが情けないだろ、とレティシアは思った。
「ギルド内での揉め事はご法度です。めーっ!!」
ギルドの受付から女子職員が大きな声で叫んだ。
最初の一人を吹っ飛ばす前に言わないとダメなんじゃ?とレティシアは思った。
「職員が可哀想だから終わらせるか。」
女性冒険者がようやく喋った。
その声はとても可愛い声だった。
うげっとかうごっとか言いながら男達が、扉の無くなった出入口の方へ吹っ飛んでいく。
「出口はあちらでございま~す。」
そして最後の一人が吹っ飛んでいく。
「ぶべらっはべらっ……キテハァー」
男達は全員、ギルドの外に綺麗に山積みとなっていた。
「もう、ユーフォリアさん。いくらSランクでもギルド内での乱闘は困りますよ。」
めーっと叫んだギルド職員が勇猛な女性冒険者に注意をしていた。
橙色した髪の女性冒険者の名前はユーフォリアと呼ばれていた。
ギルド員の話から彼女はSランク冒険者である事もわかった。
しかし揉め事を起こしていた理由は明らかにされていない。
「いや、そもそも最初に絡まれていたのはあんたじゃないか。仲裁に入った私の方がとばっちりだと思うけど?」
ユーフォリアが反論をする。
「はい、そうでした。申し訳ありません。しかしもっと穏便に済ます事も出来たのではないでしょうか。」
その後、二人の会話から今回の騒動の経緯について語られた。
最初に男達が、女性職員……カルナに対して卑猥な言葉を交えながらデートに誘っていた。
その時点で誘いに乗る者など皆無なのだが、冒険者ランクどころかおつむのランクも低い男達にはそうは思っていないらしい。
先程の男達は殆どEランクとかDランクだがCランクも混じっていた。
あんな別れ方はしたけれど、レティシアの元パーティメンバーの個人ランクと然程変わらないという事になる。
あくまでランクはであるが。
しつこく誘う男達が備品を破壊したりしたものだから、仲裁が入った。
それが橙の髪の女、ユーフォリアだった。
彼女は名前とランクは周囲にも知られているようで、Sランぼっち女は引っ込んでろとなり口論となる。
ユーフォリアはソロで活動しており、こういう時にぼっちと揶揄される事がままある。
実質一人パーティとして登録もしているので、ソロ・パーティ共にSランクではあった。
パーティの人数が増える時は追加される冒険者のランクとの兼ね合いもあるので、一緒に組むとなると一つ下のAランクでないと加入は出来ない。
その時点でそもそも彼女と一緒に組める人間は限られてくる事になる。
離れた実力の者と組む事で、下位ランクの冒険者が危険に晒されるのを防ぐ意味合いがあった。
Fランク冒険者がSランク冒険者が挑む高難易度ダンジョン等に行ったら、入る前に命を落とす事になりかねない。
例えこの後に何らかの理由があって意気投合して仲良しになっても、Cランクである今のレティシア達も彼女と組む事は出来ない。
胸のサイズだけで言えばAランクだな……自分とユーリとユーフォリアを見てレティシアは思った。
話は戻るが、因縁を吹っ掛ける形で男達はカルナからユーフォリアへと標的を変え……
あっさり返り討ちにあった。
それだけの話。
男達が壊した備品と扉は後日彼らへと請求が回る。
吹き飛ばしたのはユーフォリアであるが、原因は男達であるし、吹き飛んだとはいえ男の身体が当たって壊れたのだから責任は男達にある。
漸く落ち着きを取り戻したギルド内。
レティシアはカウンターへ行き挨拶を交わす。
「ごきげんよう……じゃない。こんにちは、素材の買い取りなんだけど良いかな?」
ユータにこっぴどく振られたダンジョン探索は依頼を受けて潜ったわけではない。
それでも素材等の買い取りは可能である。
もちろん〇〇の素材の納品や、〇〇の討伐のような依頼も出回るし、そういった依頼を受けて潜る方が多いのではあるが。
実力アップとランクアップメインだったために特に依頼を受けずに潜っていた。
「あれ?レティシアさんにユーリさんですよね?」
受付嬢は二人を見て何やら疑問に感じていた。
「そうですが何か?」
レティシアは聞き返す。。
「記録によると公爵領にあるダンジョンに行かれていたのでは?それと、ギルド通信内で回ってますけど、ユータさんのパーティからお二人が除名されておりますが……」
「かくかくしかじか。」というわけなのですとレティシアが説明すると……
「それじゃわかりませんよ。ギルド通信の情報によると、除名の申請は先日ユータさんから行われておりますね。」
あっさり受付嬢に返されてしまう。そして除名の事に関して軽く報告があった。
「そして、お二人が除名された後、新しい人が加入されているようです。あまり踏み込むのは良くはないのですが、何があったんです?」
受付嬢は基本的に個人的な粋にまでは口を挟まない。
お互いの守秘義務というものがあるし、公私を挟んではいけないためだ。
「ボス部屋で解雇通告された。あとついでに婚約破棄された。以上!」
「ひっ!お、お察しします。差し出がましい事を聞いてしまい申し訳ありません。」
受付嬢が頭を下げる。長い髪が左右の肩から流れるように前に垂れていた。ついでにお胸も地面へと引かれて強調されていた。
「それはもう済んだ事なので良いですわ。それはそうと魔物の素材買い取りお願いします。」
受付嬢により隣にある卸所に案内されると、レティシア達はそこの置き場に出してくれと解体作業員に言われる。
「じゃぁいくつか出しますね。」
レティシアはそう言うとダンジョンで一撃屠りまくった魔物の
その中にあの裏ボスは含まれていなかったが職員たちを驚かすには充分だった。
「ゴ、ゴールデンスライム?あの超美味な?レア過ぎて高級デザートにもなるあのゴールデンスライム?」
ゴールデスライムは食すと高級なメロンゼリーみたいな味がする。
そのため老若男女問わず人気が高い。しかし食材として確保するのであれば、毒等の攻撃をして倒してはいけない。
それに逃げ足(足はついてないけど)が早いため、「見つける・即・倒す」でないと逃げられてしまう事が殆どである。
「それにこれはオークロード。キング程ではないけれど、高級焼肉素材!それも傷が顎の一ヶ所のみなんて……」
オークは豚のイメージではあるけれど、その肉はまるで牛肉である。
役職のついたオークの肉は高級焼肉素材として欠かせない。
ノーマルオークであれば一般家庭にも出回るが、味は普通に美味しい程度である。
ロードとなれば手塩にかけて育てた有名牧場の牛肉のような美味は確実であった。
「これ全部お二人で?」
解体職員が問いかけてくる。
「いえ、ほぼ全てシアの一撃必殺でした。」
ここに来てようやくユーリが言葉を発した。
あのゴールデンスライムも一発で核を打ち抜いている。
空間収納に全てを収め、清浄の魔法で地面に着いた部分含め綺麗にしているので可食部分は大きい。
いい値段になる事は間違いなかった。
「これだけの事が出来る人をユータさんはなんで除名されたのでしょうね。」
受付嬢のカルナ氏はしみじみと呟いていた。
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後書きです。
ダンジョン素材で料亭開けそうです。
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