第7話 さきっちょだけよ……
「もうお嫁に行けない……」
顔全体が真っ赤になったユーリ。
レティシアがユーリの身体を拭いている最中に呟く。
何があったかといえば、西方無敵の殺気に当てられお漏らしをしてしまった際、ユーリは放心状態となり……
お姫様抱っこで抱えられている時も、抗議の言葉も恥ずかしがる事もなかった。
よくよく思い返してみれば、レティシアが西方無敵の事を紹介している時には返事すらしていない。
焦点は合っていなかったのをレティシアは思い出した。
確かに放心状態のままであったと。
「女同士なんだし気にする事ではなくて?それにマッサージの時、ユーリは私の身体結構まさぐってたじゃない。」
だからこれでイーブンだよとレティシアは言いたいわけだ。
「私はタオル越し、シアは直じゃないですか。」
モロと言わないところで生々しさは減少するが、事実は変わらない。
乙女の素肌は神聖なものなのだ。少なくとも貴族の間では。
ユーリは貴族ではないけれども、その精神は平民でも大差はない。
「大丈夫、さきっちょしか……」
「そういう問題ではありませ~ん。」
ユーリの苦情の間にもレティシアの手は止まらない。
片足を上げてショーツを通し、反対側も通す。
そのまま上に持っていって正規の位置へとセットする。
レティシアはその際に秘密の三角地帯を拝むのは忘れていなかった。
パンパンッと手を二回叩き「ぱんつー」とアピールしながら頭を下げていた。
この様子を見れば、婚約破棄されても仕方ないかもしれないが、ユータ達はレティシアとユーリが仲が良い友人である事以外は知らない。
☆ ☆ ☆
メイの運んできた紅茶で有意義な午後を時間を過ごしているレティシアとユーリ。
知らぬ人が見れば姉妹にしか見えない。
銀髪が映えるレティシアに対して、東方の人形のような綺麗な黒髪のユーリ。
色こそ違うが黙っていれば二人共お嬢様然としていた。
少し下がった所に控えているメイが涎を垂らしながら「尊い」とか言っているが二人は無視をしている。
なんだかんだでユーリはメイの使い方というか、付き合い方を既に心得ていた。
「この後、冒険者ギルドに行かない?」
レティシアはユーリに提案した。
本来は建設予定地を見学した後、ギルドへ行く予定だった。
思わぬ
「そうですね。いくつか売買してモノづくりの材料を仕入れるのでしたね。」
「メイ、紅茶とお菓子ありがとう。私達はギルドと他少しお店を回ってきますね。」
ところどころ丁寧な口調になるのは、これでも貴族の娘という意識の表れかもしれない。
自室であればもっと砕けた口調になる事が多い。
普通貴族の令嬢が街へと赴く際には護衛等のお供が付くのは当たり前である。
しかし冒険者でもあり、天職の事もありレティシアはその限りではなかった。
もっともフラベル家は基本自分の身は自分で守れたりはする。
☆ ☆ ☆
「あー久しぶりの自領のギルに来ましたね。」
レティシアは何度か訪問した事があるが、ユーリは二度目だった。
「さて、入りますか。」とレティシアが進もうとしたところで足を止めた。
直後、ギルドの扉毎人間が吹っ飛んできた。
あのまま進んでいたら直撃を喰らっていただろう。
もっとも、レティシアであればひょいっと避けた事は容易に想像がつくが。
「わっわっなんですか。」
ユーリは驚いて飛び跳ねながら声を挙げた。
「ギルド名物、揉め事じゃないでしょうか。血の気が多いのが大勢いるのも冒険者の特徴ですからね。」
それ以上誰も跳んでこない事を確認し、レティシアは外れた扉を潜っていく。
その先で目に入ったのは……
橙色の髪をした女と数人のやられ役にしか見えない男数人が対峙していた。
「あ、あの女の人、デキる。」
デキるだけすっぱ抜くとやらしい言い方にしか聞こえないが、かなりの実力者だという意味である。
「私の眼でも見れないなんて相当な実力者だろうね。」
レティシアの眼が怪しく光るがその映る視界は本人にしかわからない。
「へぇ。シアの眼で
「みたいだね。だからやっぱり私は言う程万能じゃないんです。」
レティシアとユーリが会話をしている中、件の二組の男女達は一触即発だった。
先程既に一人吹き飛んではいたけれど。
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後書きです。
新たな女登場です。
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