第一一五話

 その妖はずっと人間共を監視していた。己の優れた幻惑と隠行の異能で以て手勢と共に森の中に忍んでいた。


 いや、正確に言えば少なくとも一人以上の人間からはその存在を察知されてはいる事を自覚しているが……何故かその人間は己の存在を滅する事もなければ誰かにそれを伝える事もないように見受けられた。


 それは極めて不可思議な事であったが、同時に明瞭たる事実である以上は受け入れなければならぬ現実であった。まぁ、それこそあの死屍累々の地獄であった五百年前の大乱の時すら人間共の中には様々な理由で仲間同士で足を引っ張り合う事例が無かった訳ではない。表面上人間共に力の天秤が傾いている今現在ではそれは一層有り得ぬ話ではなかった。監視役を務めるそれは己のその種族としての高い知能と経験からそのように結論を見出だして納得する。


 ……どの道、それは今は重要な用件ではなかった。


『それよりも問題は、中の様子ですからねぇ?』


 人間共があのガワばかり無駄に御立派な御殿を総出で袋叩きにするまで、もう半刻を切っていた。未だに脱出出来ていない味方がいるにもかかわらず刻一刻と連中は屋敷を、『迷い家』を吹き飛ばす準備を進める。相変わらず人間という連中は冷血の集まりだとそれは思った。


 尤も、己もまた内からの連絡が無い故にひたすら機械的に待機をする羽目となっているのも事実であるのだが……。


『さてさて、鼬枷さんは何をしているのですかね?早く目標を回収して欲しいのですがねぇ?』


 あの鼬からすれば所詮幾度でも出来る分け身の一つだから構わないのかも知れないが、此方は違う。こう何時までも退魔士共がわらわらといる場所に潜み続けるのは精神衛生上ご免だった。さっさと仕事を終わらせて帰らせて貰えないものか……それは深く深く嘆息する。現場仕事をしなければならぬ己の立場を悲嘆する。


「いけないいけない。確か溜め息すると幸せが逃げるのでしたか?それは困ります!非常に困りますよ!!」


 この世のありとあらゆる者共が地の底まで不幸になろうとどうでも良い事であるが、己だけは幸福でなければならぬと信じる監視役は自身の愚かな行動を戒める。いっそ、態とらしい位に頭を横に振って戒めて……。


「んんっ?」


 ……ふと、偶然その存在を視界に収めた。


「おや?おやおやおや?あれは……」


 一瞬己の目を疑った監視役は、木陰から目を細めて改めてそれを凝視する。見通すように額に手を当ててじっと観察する。念には念を入れて二度三度と……そして漸く認める。その者の存在を。


 人間共の陣中に当然とばかりの面で紛れこんでいる白い狐の子供を、見つめる。


「これはもしや……いや、しかし。またどうして彼女のような者がこんな所に?それにあの姿は……」


 それは思わず顎に手をやり首を捻って、疑念を呟く。監視役からして見れば彼女がこんな所で、よりにもよってあんなチンチクリンの情けない姿で、そして何をしているのかその全てが不可解で不可思議だったのだ。


「いやはや、困りましたねぇ。『人間遊び』でもしているのか、それとも……何か狙ってるのでしたら獲物の奪い合いになったら厄介なんですよねぇ?」


 其ほど深い関係があった訳ではないが決して面識が無かった訳でもない。昔の事だが『姉様』を通じて顔見知り程度の関わりはあったし、他の同胞達と共に人間共を使った『遊興』に洒落こんだ事もある。


 そして、だからこそ監視役は彼女の気性の荒さに短慮、悪癖を善く善く知っていた。その癖に際立ったその素質と才能も……逆鱗に触れたらどんな癇癪を引き起こしてくれるものか。種族からしてねちっこい性格が多いのだ、こんな所で無駄な恨みを買うのはご免被りたい話だった。


「とは言え此方も仕事ですしぃ、職務放棄する訳にも行きませんからねぇ」


 互いに見なかった事として無視出来るのならばそれがよし。欲を言えばこんな場所で会ったのも何かの縁と言うものだろう。あの性格の悪さを自分のために利用してやりたい。


「そうですね。折角の機会ですしぃ、ここは一つ、機を見て御誘いでも掛けて見ましょうかね?」


 口はどうせタダですし、そういって監視役は口元を吊り上げた。背後より伸びる八つの尾を妖艶にくねらせて……。





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 斬撃が交差する。金属がぶつかり合う金切音が周囲に間断なく鳴り響く。


「このっ、良く粘る……!!」


 獅子の女は眼前の少女の刀使いに、皮肉げな称賛の言葉を漏らした。事実、相対する少女退魔士……蛍夜環のその剣筋は、技量は、その道の玄人でも舌を巻く事だろう。


 蛍夜環の立回りは、刻一刻と、そして明確に手練れのそれに脱皮しつつあった。幾度か危うい場面こそあったし、獅子舞の薙刀は其処を狙い打ちして攻め立てるが当の環は咄嗟に最善手を打って持ち直す。到底退魔士となって半年にも満たぬ新人とは思えぬ動きであった。天賦の才、そんな言葉が思い浮かべそうだ。


「獅子舞さん、どうして、どうしてこんな……!!止めて下さい!!」


 突き出される薙刀を脇差の鍔で反らして環は叫ぶ。顔をひきつらせて静止を求める。だが……。


「それが、出来たら……苦労しないのよっ!!」


 斬り合いが埒が明かない故に、一気に身体を肉薄して振るわれるのは回し蹴りであった。半妖の強靭な脚力に霊気と妖気を纏わせた一撃。


「っ!!?」


 環もまた腕に備えていた籠手で蹴りを受け止める。受け止めて、吹き飛ばされる。衝撃を受け止めた籠手が打ち砕かれる。土壁に背中から叩きつけられる環。


「くっ……ああっ!!?」


 視界の端に映る光に咄嗟に脇差で防護するがそれまでだった。直後に金属疲労によってボロボロの脇差はその刃を砕かれる。絶望するように顔を青ざめさせる環。其処に直ぐ薙刀が深く突き刺さる。面を上げる。視線が交わる。獅子舞の、鋭い眼光と交差する。


「獅子舞、さん……どうして、僕を助けてくれたのに、どうしてこんな……!!?」

「っ……!?止めなさいよ。そんな顔で見ないでくれないかしら?」


 暫し嘆きに満ちた環の眼差しを直視していた獅子舞は、しかし気まずそうにそれを逸らす。苦虫を噛み締める。


「アンタに恨みはないのだけれどね。仕方ないわよ。誰も、自分の立場には逆らえないのよ。私はこんな場所で死ねないのよ。……死ぬわけにはいかないのよ」

「死ぬわけには……?」


 獅子舞が吐露する言葉に、環が反応する。獅子舞は一見どうするべきか迷った表情を見せるが、まるで吐き捨てるようにして己の立場を僅かながらに漏らす。


『迷い家』との契約を。


「化物の眷属、手下、それとも奴隷かしら?命乞いした結果がこれよ。奴の思うがままに従う手駒って事ね。ははは、笑えるわね」


 獅子舞は答える。己を取り巻く状況を。自分が化物に助命を求めて、囚われた事を。そして、己の今の役目を。


「アンタを助けたのはこの屋敷の主がそれを必要としただけよ。随分と臆病な事よね。どうやらあの野郎、私の記憶を封印してアンタに送りつけたみたいね」


 そして嘆息するように息を吐く獅子舞。


「襲撃の際に敢えて記憶の封印を解かずに身体を操って来たのは……アンタらの動揺を誘うため、って所かしら?まぁ、あの下人と退魔士には効果は無かったみたいだけどね」

「……?っ!?」


 環に浮かび上がる怪訝な表情を無視して、獅子舞は冷笑しながら土壁に突き刺さる薙刀を引き抜く。振り上げる。


「さて、お喋りはおしまいにしましょうか?」

「獅子舞さん……!!」

「殺しはしないわよ。そう命令されているから。……四肢は切り落とさせて貰うけれど」


 怯える環に何かに耐えるような仕草を浮かべて、それを振り払うようにして獅子舞は薙刀を振り下ろす……。


『させませんよ、傀儡?』

「っ!!?」


 何処からかも知れぬ呼び掛け。刹那、何かによって視界を塞がれる獅子舞。それは式符だった。この迷宮に迷いこんでからずっと隠行して環に貼り付いていた式符。それが獅子舞の顔面に勢い良く貼り付いた。その細やかな奇襲に驚いて、獅子舞は振り下ろす薙刀の軌道を逸らしてしまう。その刃はその切っ先が環の頬を僅かに掠れるのみだった。


「!!?……このぉ!!」


 一瞬の混乱、驚愕。しかしながら頬に走った鈍い刺激で我に返った環は眼前で生まれたその隙に腰元に備えたそれの柄を引き抜いた。下人から貸し出された短刀で薙刀の刃をその根元から切り払った。


「なっ!?」


 薙刀を失った事への一瞬の驚愕。だが、即座に判断して顔面に貼り付いた式符を破り捨てて己の爪と身体能力での肉弾戦を仕掛けようとする獅子舞。それは明らかに悪手だった。


『言いましたでしょう?させないと』


 次の瞬間、破り捨てた式符より放たれた濁竜が獅子舞を背後より襲いかかった。


「なぁっ……」


 反応するよりも早く建材で構成された不出来な竜は獅子舞を呑み込んで、そのままの勢いで背後の土壁を貫く。一枚だけではない。立て続けに何枚もの壁を突き破って行く。まるで環から獅子舞を引き離そうとするかのように……。


「獅子舞さん……っ!!?」


 その光景を暫し唖然と見つめ、後に続こうかと迷う環は、しかし直後に迷宮に鳴り響く轟音と咆哮に恐れ戦く。戦いて、そしてその咆哮が誰のものなのかを直ぐに察する。


「伴部くん……!!」


 僅かな時間、その間に迷いに迷って、しかしながら環は咆哮の方向へと駆けていく。環もまた、今己が優先しなければならぬ事を、物事の順序を理解していたから。


 息を切らせて走る環の耳に、今一度野獣のような吠え声が響き渡っていた。


 何故か、それは泣き叫ぶような悲鳴に聞こえた…………。






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 眼前に広がるのは迫り来る化物共の濁流だった。しかしそれも腕を振るえば一瞬で赤い塵と成り果てる。成り果てるが……その骸を乗り越えて次々と新手が襲いかかる。四方八方から、間断なく流れ込む。


 それに対して黒い獣がやる事は変わらない。ひたすらに眼前の怪物の群れを屠っていく。爪で薙ぎ払い、足で踏み潰し、尾で叩き潰し、牙で引き千切る。無数の返り血を浴びて、その姿を赤く染め上げる。けたけたと嘲るように嗤う。獣のように吠える。


「っ!?呑まれかけていたかっ!!?」


 引き裂いた獣妖怪の首を乱雑に放り捨てて、俺は吐き捨てる。危なかった。先程の何処ぞの完全生物染みた笑い声が自身の漏らしたものだとは思いたくなかった。


「おい、糞蜘蛛。もっとだ、もっと豪快に食らっちまえ。遠慮してくれるなよ!!」

『( =^ω^)ウンメェウンメェ(*゚∀゚)!!モシヤコレガレディノアコガレノスイーツビュッフェッ!!?』


 焦燥する俺の要望を聞いているのかいないのか、多分八割方聞いていないのだろう。呑気な戯れ言を言ってくれる糞餓鬼蜘蛛であった。何時から俺の血液はデザートになった……!!?


『ブオオオオオォォォォッ!!!!』


 一つ目の、ゴリラみたいな出で立ちの一際大柄な獣妖が俺に突貫する。前方の味方連中を御構い無しに吹き飛ばして、あるいは踏み潰して迫り来る。激突する刹那に俺は血濡れの爪で切り裂きにかかるが……!!


「硬っ……!!?」


 硬い毛皮、厚い毛皮を前にその化物を殺しきれなかった俺は同時に避けきる事も出来ず、結果として真正面から怪物の衝撃と質量を受け止める羽目に陥った。叩き飛ばされそうになるのを踏ん張って受け止めきる。地面に足の爪がめり込んだ。押し込まれるが……耐えきる!!


「そして、お返しだ……!!」


 爪で切り裂くのが駄目ならば、と俺は化物に対してその顔面を全力殴打で以て返した。……化物の首が千切れて背後に吹き飛んだ。一瞬後に千切れた切断面から噴水のように赤い雨が噴き出す。それは俺の全身にも降り注ぐ。


「……うわ、怖っ!?」

『(゚∀゚;)チョウ!エキサイティング!!』


 色々言いたい事はあったが第一声がそんな台詞なのはある意味でお気楽であったかも知れない。何にせよ、俺は今更のようにこの状態の自身がかなり人間から逸脱した化物に成り果てているのだと自覚させられる。


 ……いや、馬鹿蜘蛛。今のをネタに出来るお前ある意味すげぇよ。


『(*´ω`*)ワーイ!ホメラレタァ!!』

「褒めてはねぇよ!!」

『残り、四〇〇じゃ』

「っ!?マジかよ!?ならば……!!」


 蜂鳥の警告、それに舌打ちした俺は背後から肉薄してきていた猿妖怪二体を裏拳で殴り殺し、足を踏み締める。そして……轟音と共に跳躍した。


「消耗戦は下策だからなぁ……!!」


 何時までも湯水の如く投入されている眷属共を相手にしていても切りがなかった。時は金なり。時間に限りがある以上、対症療法ではなく根幹治療が必要だった。


(何処だ……!!?)


 地表を埋め尽くさんばかりに溢れ返る多種多様な怪物共の蠢きの中から、俺はそれを探す。


『あれじゃ』

『(*゚∀゚)ドコニカクレヨウトイウノカネ!?』

「っ!!見つけた……!!」


 蜘蛛の戯れ言はスルーするとして、耳元での蜂鳥の囁き。それに指し示されて俺はそれを見出だす。ポツンと妖の群れから離れた場所に隠れる火鉢を探り当てる。


『グアッ!!』


 直後に背後から音も置き去りにして迫り来ていた鳥妖は、寧ろ都合が良かった。此方の首を狙ってきた鉤爪をクルリと回避して、それに食らい付く。そして……妖それ自体を足場として突貫する。俺は砲弾となった。反動を食らった鳥妖怪は汚い花火となった事は追記しておく。実に尊い犠牲であった。


『ヾ(*´∇`)ノオソラヲトンデイルミターイ!!』

「跳んでんだよっ……!!ちぃっ!?駄目か!!」


 高速で迷宮の一角に鎮座する火鉢に突入する俺は首元から響く戯言に思わず突っ込む。直後、俺は己の攻撃が頓挫した事を悟る。


『ギッ!?』

『ギャッ!?』

『グオッ!?』


 火鉢に突っ込もうとした俺の目論見は眼前に構築される組体操染みた化物共の壁の前に呆気なく御破算した。相当分厚い壁であったのだろう。かなりの速度で突っ込んだにもかかわらず壁を抜く事は敵わなかった。俺の激突と同時に着弾点にいた雑魚妖怪共が数十単位で押し潰されて断末魔の叫びを漏らした。そして……その死骸を押し退けて残る妖共が転がり込んできた闖入者に向け全方位から我先にと群がりにかかる。


「ざけんじゃねぇ!!」


 幼妖小妖が殆どであった事もあり、腕の一振りで瞬く間にダース単位の妖が肉片と化した。問題は、そんなちまちました虱潰しのような作業では何時まで経っても奴の、『迷い家』の本体の所には届かないという事だ。


『残り三〇〇かの』

「畜生、時間稼ぎのつもりかぁ!!」


 遠目に眷属共に己を運ばせる火鉢を見やり、俺は毒づく。眼前の化物共を押し退けて突き進もうとするが此方が強行しようとすればする程に妖共の抵抗は激しさを増していく……不味い。攻めきれない!!


「ツ……!!グオオオオオォォォォォッ!!』


 苛立ちと焦りが俺の理性の天秤を怪物側に傾けたのか。次の瞬間には俺は辺り一面に鳴り響かんばかりの咆哮を響かせていた。そして腹の内に滾る熱を感じ取る。実感する。それは急速に増していき……本能的に俺は自身の行うべき事を理解した。


 巨大な顎を開いた俺は、喉の奥底から火炎を吐き出した。それはまるで口の中に火炎放射器でもあるかのような勢いだった。蒼白い業火が正面に溢れる妖連中をその『概念』から焼き払い、薙ぐように首を振るえば周囲の化物共は纏めて灰燼に帰していた。


『グオオオオオォォォォォッ!!!!』


 勝鬨を上げるかのような天を向いての咆哮は、己の精神を支配しようとする獣性を発散する意味もあった。僅かに傾く理性の天秤。俺は炭化した骸の山を掻き分けて疾走する。一直線に逃げる火鉢に向けて突き進む。


『ギャオ!!』

『シャアァァッ!!』

『じゃマダっ!!』


 前方を塞ぐように躍り出る数体の妖を擦れ違い様に爪で切り裂く。一撃で即死させる。普段ならば命懸けで戦う中妖共も、今の俺にとってはただの雑兵に過ぎない。


『ヴオオオオォォォッ!!』

『うせロ!!』


 背後から襲撃をするのは死骸の山に潜んでいた蜥蜴の大妖。だが俺は振り向く事もなかった。その価値もなかった。適当に尾を振るえばそれだけで巨体の怪物の身体は八つ裂きとなったから。


『残り、二〇〇じゃな』

『そんダケありゃあじュウぶンダ!!』


 制限時間が半分を切ったが、最早目標は目と鼻の先だった。距離にして三百歩程度。今一度口から業火を吐き出す。周囲に屯していた妖共が盾となって焼き尽くされる。問題なかった。想定内だった。お陰さまで前方がさっぱりした。


『死ネえぇぇぇぇっ!!』


 足腰に力を入れて、脚部の筋肉を倍近く膨らませて、妖力を足に結集させて、それらを解放する。目標に向けて、一気に俺は突撃した。何体かの大柄な妖が障壁となるが最早意味はない。文字通りに貫通する。全身に化物の血を纏った俺は火鉢に向けて迫る。数瞬後には俺は奴をズタボロに引き裂ける筈で……だが、それは叶わない。


 突如、全身が重くなる。動きが止められる。


『ガッ……!!?』


 まるで自分に掛かる重力だけが重くなったように感じられる、その不可思議な感覚は一秒ごとに指数関数的に強まる。一瞬の混乱、困惑、驚愕。しかしそれは直後に翁らの言にて判明する。


『背中じゃ!!』

『( ゚ロ゚)!!ジジイニバックヲトラレタ!?』

『なっ……コ、『児啼爺』かっ!!?』


 蜂鳥と蜘蛛の警告で漸く俺は自身の背中に何かが抱き着いている事実に気付く。全身に掛かる重さと妖化の進行による感覚の鈍化で、その存在が分からなかったのだ。視線が合えば醜く小柄な老男が化物みたいなおぞましい笑みを浮かべる。ぞわりと全身に走る嫌悪感!!


『児啼爺』……人に背負われ、あるいは抱き着き、その相手を押し潰す権能持ちの妖!!


『ヒッヒッヒッ!!』

『チィィぃィ!!?』


 直接の戦闘能力は低い代わりにほぼ上限なく重くなり、それに比例して硬くなる化物の対処手段は見敵必殺以外有り得ない。俺は即座に爺を切り裂こうと爪を立てる。


『ざぁんねん、そうはさせないよ?』

『ガぁ!!?』


 響いたのは何処かで聞いた覚えのある生意気な嘲りの声音。その直後に俺の両手両足から血が噴き出す。筋肉と、恐らくは神経が切り裂かれていた。思わずその場に跪く。無論、直ぐ様傷口は再生を開始するが……!!?


『何奴!?って、重ッ……!!?』


 四肢の傷口が再生している間にも全身を襲う重量は加速度的に増大していく。それでも、それでも俺は立ち上がろうとして、起き上がる。首を上げる。ゆっくりと、重たい顔を上げる。襲撃を仕掛けた敵を見定めようとする。


 そして、それは誤りだった。失敗だった。大失敗だった。化物共の狡猾さを余りにも甘く見ていた。全ては、奴らの掌の上だった。


『エッ……?』


 火鉢と俺の間を遮るようにそれは現れた。全身毛むくじゃらの、猿のような身体、しかし顔面は何処となく人間染みた化物が、視界に映る。化物は此方を見ると嗤った。顔が裂けるのではないかと言うくらいに嗤った。


 その造形に、その出で立ちに、俺は見覚えがあった。ノベル版の挿絵で描かれていた筈だ。『迷い家』をさ迷う主人公様を苦しめる刺客の一体として。その名は、その名は確か………。


『さ、サトり……?』


 大妖『覚』。その名を思い出した俺は、直後にその権能が何であったのかを思い出そうとして、そして……全てが遅かった。次の瞬間にはその術中に嵌まっていた。


 大猿の両眼が妖しく光り輝く。其処から目を離せない。身体は既に硬直していた。気が付けば周囲の景色が歪み始めていた。それは一種の瞳術であった。


『あ…アァ……あ゙ア゙ァ゙………!!?』


 それは『闇夜の蛍』の登場人物達相手にならば勿論、おおよそあらゆる人間に有効な権能。


 ……人の『心』を容赦なく責め立てる、悪辣な権能だった。


『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ッ゙!!!!???』


 迷宮に、文字通りに狂いきった絶叫が鳴り響き続けた……。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……!!」


 何れだけの時間が経過したのだろうか?ひたすらに道を進み、右折し、左折して、遮る妖を退治して、環は迷宮の先を進む。進むが……次第に迷い始めていた。


 理由は単純明快だった。道標を失ったためだ。より正確に言えば彼女が進む方角から響く轟音や咆哮がいつの間にか静まりかえっていた事による。


 方位磁石なんて持たず、あったとしても役に立たぬだろうこの空間で、音だけが方角を、そして彼女が向かうべき目的地を示していた。それが途切れれば入り込んだ迷宮で向かうべき方位が不明瞭になり始めるのは必定であっただろう。


「伴部くん……」


 心中にとめどなく溢れる不安。焦燥。己の恩人であり、頼りになる先達でもある青年の身を案じて、環は迷路の中を急ぐがそれは空回りに近かった。断続的に走っては息切れする始末だ。


「伴部くん……御願い、無事だよね……?」


 震える声で紡がれる呟きが疑問形だったのは環自身がそれを信じきれないからだった。己の恩人が手練れで経験豊かなのは知っている。実績も知っている。それでも……咆哮と轟音が鳴らなくなった事実が彼女を恐れさせる。彼が敵を全て討ち果たしたのだと欠片も疑わずに済めばどれだけ良かった事か。


 妖は人を食らう。霊力のある者は特に。もし彼が敗れたのだとすれば。もし、そのまま捕らわれたのだとすれば、最悪……!!


「っ……!!?何を馬鹿な事を!?その時は、その時は僕が助ければ良いだけじゃないか!!」


 絶望し、弱気になる心を奮い立たせる環。必死に虚勢を張って、前を向く。前を向いて環は再び走り続けた。迷宮の中をがむしゃらに進み続けた。彼を求めて。彼を探し求めて……!!


『はい、迷宮攻略御苦労様ぁ!!』

「えっ……ぁ!!?」


 そして、狭い道を曲がって広間に出た直後に突風で以て環は吹き飛ばされた。無様に地面の上に転がっていく環。思わず頭を守るが、その代わりに装束から覗く白い肌が所々で容赦なく擦り剥かれていく。土壁にまで突っ込んだ所で漸く彼女の身体は止まった。


「う……ぐっ……!?」

『そしてここで追加でどーん!』

「あ゙ぁ゙!!?」


 呑気な宣言に続いた環の悲鳴は壮絶だった。左手に感じ取る経験した事のない激痛。


「な、何゙が……ひっ゙!!?」


 涙目の涙声になって視線を向ければ環はその光景に思わず息を漏らす。彼女の白魚のような白く細い掌からは真っ赤な血が溢れていた。貫かれていた。短刀に。恩人の下人から預かった短刀が、掌を貫いて地面まで突き刺さっていた。


「あ、あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ゙!!?」

『煩いなぁ。静かにしなよ』

「うぐっ!!?」


 思い出したかのように一気に襲いかかる激痛、遅れて溢れだした絶叫は頬を叩かれた事で無理矢理黙らせられる。尤も、その音は叩くというよりも殴るというべきものではあったが。頬に感じる鈍い痛み、口の中を切った環は顔を上げて、眼前に佇む存在に目を見開いて驚愕する。


「かはっ!?あ、はぁ……ゔぐっ゙!!?お、お゙前、はぁ……!!?」

『やぁやぁ。暫くぶりだねぇ。牝猿?』


 目の前でニタニタと笑う中性的な子供の表情。しかしながらそれが仮初めの擬態に過ぎない事を環は十分に知っていた。それは己の故郷を滅ぼそうとした、そして己の友の腹を裂いた憎き仇……!!


「鎌、鼬……!!?お前、どうしてここ…かはっ!?」


 環の詰問は容赦なく腹に捩じ込まれた蹴りによって強制的に中断する。咳き込む少女退魔士。顔を歪めて首を上げれば何処までも冷たい眼が自分を見下していた。思わず怖じ気づいて息を呑む。


『相変わらずピーピー騒がしいなぁ。猿は猿でも若い牝猿は一際煩くて仕方無いんだよねぇ?何かこう、金切声が頭に響くというか?ねぇ、この感覚分かるかなぁ、諸君?』


 鎌鼬が、鼬枷が演技がかった物言いで周囲にそう呼び掛ける。そして漸く環は周囲の状況に気が付いた。


 其処ら中に屯する妖共の群れ。その視線が自分を凝視している事、涎を垂らして睨み付けている事を、己を獲物として見据えている事を理解する。


 そして……そんな化物共に踏みつけられ、のしかかられて、全身生傷だらけの身体で倒れ伏す人影を認めると、環は自身の置かれた立場にもかかわらず叫び声を上げていた。


「伴部くん……!!?ぐぅっ!?」


 ボロボロの、そして血塗れと成り果てた恩人の無惨な姿。慌てて駆け寄ろうとして、しかし掌に深く突き刺さった短刀でそれは阻まれる。涙を目元に浮かべた環は、いっそ痛みを覚悟して短刀を引き抜こうかと迷うが……。


「っ……!?」

『はァはぁ、漸く黙っタわね。糞ガっ!!』


 直後、直ぐ隣の土壁が吹き飛んで粉塵が舞った。打ち倒れるのは竜を模した建材と土の塊で、その頭を踏みつけた女の影が掌に捕らえた式の核を握り潰す。獣染みた罵倒を吐き捨てる。その声音を環は知っていたが、声は掛けなかった。


 いや、違う。掛けられなかったのだ。周囲の状況もあったが、その姿を前にして掛けるべき言葉が見つけられなかった。


 土煙が晴れた時、其処にいた獅子舞麻美の姿は前回見た時に競べて更に変貌していた。半人半獣というには獣側に寄り過ぎていた。相当な死闘だったのだろう。全身から血を流す獅子舞は凍えるような唸り声を上げ続ける。前回見た時よりも肥大化した獣尾が荒々しく地面を何度も叩きつける……。


「し、獅子舞さん……」


 痛みを堪えているためもあって、環の震える呟きに、妖獣化の進む獅子舞は垂れ下がる髪の隙間からギロリと睨み付ける。獣のように瞳孔の開ききった鋭い眼光は、直後に網膜の表面に環の姿が映し出されるとその瞳を細める。その反応は何処となく、理性が戻って来ているようにも思われた。その事だけが環の唯一の救いで、そして余りにも儚い希望だった。


『ふむふむ。御仕事御苦労だね。……そいつ、見た事あるね。確かお前達の郷にお邪魔した時にも似たようなものがいたかな?』


 獅子舞に対して殆ど心の籠っていない労いの言葉を口にした後、最早唯の石と土と木材の混ぜ物に過ぎなくなった『崩山濁竜』の外殻を検分して鼬枷は宣う。そしてそれも直ぐに飽きたのかクルリと回転すると鎌鼬は環を見て笑った。


「あ゙ぁ゙……!!?」


 前触れもなく、環の両足の太股から血が噴き出す。


『この前は痛い目にあったからねぇ。全身丸呑みされるのに比べたら随分と有情だろう?』


 太股の出血に悲痛な嗚咽を漏らす環に対して、けらけらと嘲笑うような鼬枷の言い分であった。それは本気でそう思っているというよりも環をいたぶるための言い訳のように思われた。


『……良イノカ?危険ナ存在ナラバ、手足ヲ千切ッタ方ガ安全ダロウ?』

『いやいや、そいつは駄目だ。あんまり追い詰め過ぎると腹の中の不味いのが覚醒しかねない。間違ってもその大猿の権能は使ってくれるなよ?……って待て?もしや捕らえる時に千切るつもりだったのかい?危ないなぁ。報連相はちゃんとしないとねぇ?』


 小妖共によって運ばれてやって来る火鉢の中から何かが問い掛ければ、鎌鼬は危ない危ないとわざとらしく肩を竦める。


『まぁ。これで漸く此方の仕事もおしまいだ。……さて、では今回の相棒に連絡をしないとね、多分退屈しているだろうし』


 そんな事を嘯いて、鎌鼬は袖の下から式符を取り出した。一瞬後にそれは醜く不出来な、奇形の鳥の形を取るとバサバサと不器用に飛び立っていく。


『うーん、試しに妖力で使って見たけどやっぱり駄目だねぇ。式符も式神術も猿共の規格に合わせているから、僕なんかが使ってもこの様だ』


 伝令の式神が空中をふらつきながら去って行く様に見つめての、鼬枷のぼやきであった。


『デ、デハコレデ……!!?』

『……そうそう。直ぐに外の連中については排除するから安心してよ。それよりも、こいつらの移送をしないとね。荷運び役共は頼めるよね?』

 

 火鉢の中より僅かに姿を覗かせるそれの、期待に満ちた言葉に対して思い出したように頼み込む鎌鼬。見る者が見ればそれが適当に話を合わせているだけだと気付けようが相手たる火鉢の中の存在はそれを素直に信じきっているように思われた。


『オ安イゴ用ダ!!丁度其処ニ剛力ノ持主ガイルトコロナノダカラナ!!……オイ!!貴様、ソイツラヲ運ビ出セ!!』

『…………』


 火鉢の内の存在は嬉々とした口調で叫ぶ。その視線の先にいるのは獅子舞であった。獅子舞は無言で環の元へと向かう。そして、その正面で立ち止まる。


「獅子舞さん……!!」

『…………』


 此方を見下ろす迷宮の恩人に、環は呼び掛ける。己の声が届くのを祈るように。


『あー、無駄無駄。情に訴えるとか絵面は美しいけどね、そういうのは彼女には無意味だよ?ねぇ?家主殿?』


 環の健気な態度に対して、鼬枷はへらへらと嘲笑う。火鉢の中から顔を覗かせるその存在もそれに合意するように一層嘲笑を漏らした。その態度に環は悔しさに歯を食い縛る。その胸の内にこれまで感じた事のない怒りが渦巻く。


「……っ!!よくもそんな事を言えるね!?ぐっ、もう伴部くん達から話は聞いているんだよ!?獅子舞さん、御願い、聞いてくれよ!!貴女がどうして奴らの眷属になったのかは知らない。けど、だけど貴女は騙されてるんだ!!貴女は……!!」

『だから騒ぐな』

「うるさ……きゃっ!!?」


 再度の殴打に環は背後の壁に身体を打つ。身体が突き飛ばされた事に連動して短刀が傷口を開く。激し過ぎる痛みが環を襲う。とめどない涙が溢れる。己の無力さに惨めになる。それら全てを憎しみに変えて、環は眼前の化物共を必死に睨み付ける。


 ……これまでの人生で感じた事のないドス黒い憎しみが溢れていくのを環は朧気に感じた。


『クククク、随分ト無様ナ様ダナ?ソウハ思ワナイカネ?』

『……このままは余り宜しくはないなぁ』


 何処までも惨めな環の姿に火鉢の内に潜む『迷い家』の『家主』はせせら笑う。しかし今一体の凶妖は違った。寧ろ険しい表情を浮かべて環の姿を観察する。


 状況と力量差に絶望し、命惜しさに怯え切ってくれれば良かったのだが……どうやらこの牝猿は思ったよりも馬鹿のようだった。問題は今回の場合、その蛮勇と思い上がりこそが恐ろしかった。

 

(失敗したね。そんな付き合いのない傀儡相手にここまで激昂するものなのか。こういう猿は扱うのが面倒なんだよなぁ)


 いつ爆発するかも知れぬ爆弾程危険なものはない。蛍夜環、この牝の内に眠る呪いが、権能が暴れ出したら厄介この上ない。少なくとも生かして捕らえる事は困難だろう。ならばやはり意識を刈り取るべきなのだろう。


『殺すだけなら簡単なんだけどねぇ?』

「ひっ……!?」


 その袖の内から伸びる爪状の……否、鎌状の爪。風のように環の側にまで迫ると彼女の喉笛にその先端を突き立てる。薄皮を一枚、突き刺せば一筋の赤い線が流れる。ぎっと、口吸いが出来そうな程に顔を合わせる。環の瞳に、人を装う化物の姿が反射する。


『頼むよ。余り傷つけるなって言われてるんだ。五体満足で意識刈り取るのって中々難しいんだよ?』


 そんな冗談染みた口調で嘯き、直後に切り裂かれるのは環の衣服だった。より正しくは上着の胸元。退魔士用の呪いを仕込んだ金属糸で編まれたそれは本来ならば其処らの刀では破り裂く事すら叶わない筈の代物。呆気なく布切れは引き裂かれて少女の白い柔肌を外気に晒し出した。下着と胸元の谷間すらも露わとする。


「きゃあぁっ!!?」


 環の少女染みた羞恥の悲鳴、上質な霊力持ちの女の色香に堪らず周囲で涎を垂らした妖共が幾体か突撃するが、それは鎌の一薙ぎで瞬時に塵と化す。慌てて距離を取る有象無象の怪物共。距離を取って、尚も物欲しげに唸り、娘を凝視する。


『ふん。脳足りんの雑魚共が』


 それを詰まらなそうに一瞥して、鼬枷は未だ自由な方の手で胸元を隠す環を見下した。先程まで第六感で感じていた嫌な気配は薄らいでいた。遠退いていた。やはり……。


『ははは。随分と可愛い声で啼くじゃないか?退魔士としての覚悟が足りないんじゃあないのかい?』


 馬鹿にしたように嘲笑って、今一度指を振るう。今度は左肩の下着の紐を切り落とした。御丁寧に白い肌には傷一つ付けずに。優しさではない。傷の痛みを憎悪に転換されたら困るからだった。


「い、いやっ……!!?」


 ズレる下着、自身の身体を隠そうと奇妙な前屈みにならざるを得なくなる環。その滑稽な姿に鼬枷は更に笑う。鼬枷が指示すれば周囲の獣共もまたせせら笑うように次々と吠えては唸る。嘲笑の大合唱だった。


「う、ゔゔゔゔゔぅ゙ぅ゙ぅ゙……っ!!??」


 そんな周囲の反応に環は怒りと恥ずかしさと悲しみとで、心は最早めちゃくちゃだった。そして、だからこそ底の見えないまでの心の『闇』はそれを叩き付ける行き場を無くして、かといって全てを投げ捨てて自棄になる事も出来ず、ただ霧散していく……。


(そうさ、それで良い。憎むな、怨むな、敵意を向けるな。怯えて、恐れて、打ち震えろよ。殻の中に閉じ籠れ)


 そんな環の姿を見下して、鼬枷は己の狙いが上手く行った事に心からほくそ笑む。さてもう一押し、と其処でふと注意がそのものに向いた。己の傍らでひたすら黙りこむその存在に。


『そうさな。君も一つ嗤ってやれよ。間抜けにも演技に騙されてくれたこの馬鹿女をさぁ!獅子妖怪の血が入ってるんだろう?さぁさぁ、ここはいっちょ豪快に大笑いしてやって……ん?』


 何処までも環の尊厳をいたぶるため、けらけら笑いながら話を振った鼬枷は漸くその事に気が付いた。件の獅子女が何かに感付いたように背後を向いていた事に。


『……』


 直後、獣妖怪としての第六感が再び警鐘を鳴らした。先程と同じくらいに、あるいはそれ以上に。思わず獅子舞の視線を追うようにして振り返る。


 そして重なった。視線が、重なった。その男と。その下人と。グルリ、と倒れ臥していた男の首が捻れながら持ち上がる。此方を睨み付ける。明確な敵意を向けて。


『おい、嘘だろ?』


 気付けなかった。油断していた。小娘に意識を向け過ぎていた。あるいは、その男の「心」を余りにも過少評価していたのかも知れない。


 ……何にせよ、言える事は一つだった。気付くのが遅過ぎた。


『何をしている貴様らぁ!!今すぐそいつをこ……!!』


 鼬枷の叫びは、直後に空間を満たした咆哮と蒼白い業火によって掻き消されるのだった……。


 

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