第三一話

「ギッ゙……ギギギィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ッ゙!?ギッ………ギィ…ィ………」


 それは小さく、醜い悲鳴を上げながら床で身体をくねらせて、まるで水の中で溺れて悶える人間のように苦しんでいた。その頭が真っ二つに切り裂かれても尚即死していない事から明らかにまともな生物ではなかった。


 妖刀に食いつかれて瀕死の妖が最後の悪足掻きのように吐き出した全身が真っ白の、目がない化け鰻のような出で立ちの化物……恐らくはそれはあの妖の本体か、分身、分け身のようなものだったのだろう。あのまま下水に逃げるのではなくて紫に向かっていた事から見て、もしかしたら寄生能力もあったのかも知れない。


 ……どちらにしろ、頭をかち割られた以上、くたばるのも時間の問題であるが。


「だ、旦那……此方回収しやした」

「ん?……あぁ、有り難う」


 恐る恐ると案内役が投擲した短刀を惨めに苦しむ化物から引き抜くと、よそよそしく怪我で動けない此方に差し出す。短刀は曲がりなりにもゴリラ謹製の一品である。結構値が張るのでそのまま着服するかも知れないと思っていたが……存外に素直で正直少し驚いていた。流石に失礼なので顔には出さないが。


「まさか最後の最後にこんなもの吐き出して来るなんて……全く、妖って奴らはどいつもこいつも気味の悪い奴ばかりですぜ」


 侮蔑しかない眼差しで案内役は床でひくつく鰻擬きを一瞥し、興味が失せたように視線を移す。鰻擬きを吐き出した妖が悲鳴を上げながら体をバリバリと豪快な音と共に妖刀に咀嚼され始めたのも一因だろう。


 叫びながら、必死に暴れて逃れようとする妖を、しかし妖刀が容赦なく生きながら食い千切っていく光景は余りに生々しく衝撃的で、案内役も紫もそちらに意識を向けてしまうのはある意味では仕方のない事だった。


「ギギッ…ザム゙…イ゙……グ、ルシィ゙ィ゙ヨ………」


 故に足元に転がる矮小な命の小さな慟哭が耳に届いたのは俺だけだった。パクパクと陸に上がった魚のように口を開いて何かを求めるように身体を捻る惨めで哀れな存在。


「ジニュ゙……ギッ……マ゙タ…ジヌ…ノ…ガ…?ギ……ギッ………」


 死に損ないの鰻は息絶え絶えに片言の言葉を呟いていた。そこには何処までも深い絶望と苦痛と嘆きと……そして孤独が感じ取られた。それはさながら妖の言葉というよりは寧ろ………。


「イヤ……ダ、ギッ…ギギ…イヤ、ダ…イエ、ニカエリタ…カゾ、クガ…グ…ギッ…ギッ…ギ………ギ……………」


 そこまで震える声で嘆息し、嘆願し、懇願するように囁き続けた化物は最後に深く息を吸い上げ、そして……永遠に沈黙した。ばたりと天を仰いでいた頭が地に伏すと、それは二度と立ち上がる事はなかった。


「……………」


 俺は何も口にせず、ただただ矮小な妖の亡骸を見つめていた。元より紫が産み直された時は描写的にほぼ完全に記憶と人格を引き継いでいた。彼女よりも遥かに材料の品質が劣るとは言え、複数人を材料とすればある程度記憶はこびりつくだろう。


 そして、質が悪いのは、人間にとって最も鮮烈に残る記憶と言えば死ぬ直前の苦しみであり、妖として引き継ぐ記憶もまたそういう記憶程受け継ぎやすい訳で………。


「………本当、救いがないな」

「へい?何かいいやしたか?」

「気にするな、ただの独り言だよ。ただの……感傷さ」


 傍らの案内役が怪訝な表情を向けるので俺はそう言い捨てた。そうだ、これはただの身勝手で自己満足な感傷に過ぎない。


 この世界が救いがなくて、碌でもないのは口にするのも今更な事で、足元で息絶えた「人間だったもの達」の悲惨な運命すら、この残酷な世界においては必ずしも最悪とは言えなかった。


 だから別に同情する必要も、哀れむ必要もない筈だ。その筈だった。それが当然だった。しかし……それでも……………。


(家族、か………)


 その事を考えた途端、ズキズキと頭痛が鳴り響き俺は頭を抱えて顔をしかめる。糞、母親面したあの気狂いに精神を弄られてから頭が奥の方から痛む。ずっと無視していたが前後の記憶が曖昧で、一度深く考えると意識が混乱しそうだった。


「は、はぁ…そう、ですか。それはそうと……ひっ!?だ、旦那っ!?あの野郎、此方にやって来ましたぜ!?」


 ふと、案内役がそれに気付いたらしく、怯えるように指差した。その方向を見れば妖を完全に丸呑みにした妖刀はずるずると此方に向けて這うように向かってきているのが確認出来た。


「あっ……う………」

「紫様、落ち着いて下さい。見てましたから分かります。あれは貴女の刀です。ならば我々を襲う事はない筈です」


 俺は手の傷の痛みも、破れた衣装も忘れて床にへたりこんで怯える紫をそう宥めて、励ます。当然ながらそれは善意ではなく裏の意味がある。


(腐っても妖刀だからな……主人がなめられ過ぎると反逆されかねねぇ。そうなったら俺ら全員終わりだ)


 ゲームを始め、原作内で妖刀(笑)扱いされている『根切り首削ぎ丸』であるが、ぶっちゃけ赤穂家のような剣技に特化しまくった家だから御せている側面があるのも事実なのだ。原作の一線級のキャラクターなら兎も角、俺のようなモブでは一度牙を剥かれたら文字通り抵抗すら出来ずに食い殺されるだろう。故に、紫にちゃんと奴の手綱を引いて貰わなければ困る。


 ……まぁ、実際にはこの歴代の赤穂家によって念入りに分からせ(物理)させられた妖刀がそうそうトラウマを克服して人間を襲う事はないだろうが。


 原作のゲームは無論、外伝その他でもそんな事例はなかった筈だ。紫を裏切って串刺しにしてぶっ殺した際もその時点で彼女は妖に産み直された後……より正確には産み直された紫が父と戦い瀕死になった事で妖刀の制御が出来なくなった瞬間……の事だ。


 逆に言えばこの妖刀は入念に歴代所有者に調教されたお陰で少なくとも狂暴な「捕食形態」になってもただの空腹だけが理由で人間を襲う事はない筈だ。


 ………そう。その筈だったんだけどなぁ。


「えっ………?」


 轟音、そして直後に感じたその浮遊感に俺は自身が宙を飛んでいる事に気付いた。事態について来れず、俺は思考が真っ白になって混乱する。は?何だ?何が起きた?これはどういう……。


「あ゙っ゙……?」


 若干遅れて感じたのは左腕に走る激痛だった。俺は視界が真反対になった瞬間、偶然に衝撃を感じた左手を視界に収めた。


 ………左腕が完全に折れて明らかに可笑しな方向を向いていた。


「あ゙がっ!?があ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙っ゙!!!??」


 地下水道の床に転がるように叩きつけられた俺が最初に感じたのは疑念と疑問だった。どうなっている?何が起きた?何が起きている?誰の仕業だ?


 床に派手に吐血して、仰向けになった身体をくねらせるように動かし、周囲を見渡す事で俺は漸くその原因を見つけ出す。恐らくはその頭から頭突きをされたのだろう。その頭に俺の血がこびりつかせた「捕食形態」の妖刀が此方を最大限の警戒と敵意を以て睨み付けていた。


「……な、何故?」


 理解が出来なかった。理由が分からなかった。原因が分からなかった。ただどうしようもなく自身が危険な状況に追い込まれている事だけは分かった。そして頭の中に様々な疑念が溢れかえっている間にも妖刀はその姿をより禍々しく変質させていた。それは明確に俺を殺そうとしてのものだった。


「は、は……冗談じゃねぇ、ぞ?この、恩知らずめ……!」


「捕食形態」になるための手伝いをしてやったというのにこの糞妖刀は………悲惨過ぎる現実に俺は気付けば泣き笑いしていた。完全な現実逃避だった。はは、マジ泣きそうだわ。


『グウオオオオォォォォォ!!!!!』


 刹那、獰猛な妖刀はグロテスクな咆哮と共に俺に向かって襲い掛かっていた………。


 




「な、何を……っ!?や、止めなさい!!一体どうしてっ……!!?」


 今日一日で何度も顔を青ざめさせた赤穂紫は、これまでで一番顔を引きつらせて叫んでいた。


 それは余りにも突然の事に過ぎた。その姿を狂暴な妖に変貌させた自身の刀を、既に弱りきっていた彼女は制御出来るか不安だった。彼は安心するように言ってくれたが、それでも不安は残る。正直次の瞬間妖に対してそうしたように締め付けられて食い殺される事すら覚悟していたのだ。それが……しかし、これはある意味自身が食い殺されるよりも最悪な状況だった。


 妖刀は……大蛇の姿をした『根切り首削ぎ丸』はゆっくりと近付いた自身を完全に無視した。その長大な体躯を以て彼女の横を擦り抜けて、飛び付いて、そのまま頭突きで襲い掛かったのはあの下人に対してであった。しかも、よりによって殺傷力を増すためか衝突直前にその頭から何本もの刃が生えたのを彼女は確認していた。そこには明確な殺意と敵意が垣間見えた。


「どうしてこんな事を!?根切り、答えなさいっ……!!」


 紫は自身の刀の略名を叫び、問い質す。しかしながら妖刀はそんな彼女を一顧だにもせず、床に倒れて呻き苦しむ青年に這い寄る。その装束こそ汚れの分かりにくい黒い法衣ではあったが、現在進行形で床に広がっている赤い染みからして、その出血量は尋常なものでないのは明らかだった。これ以上の出血は命に関わる。


「っ……!?根切り!!私の命令が聞けないの!?所有者であるこの私の命令を!?」


 焦燥感に駆られた少女は妖刀の前に出てその両手を広げて立ち塞がる。妖に襲われたせいで破れた衣装がかなり際どい事になっているが必死な少女はその事に気付かないし、気付いたとしてもそんな事は細事であった。


『………』


 妖刀はその赤黒色に不気味に輝く双眼で主人を一瞥すると、しかし直ぐに関心を失ったようにその横脇から下人に近付こうとする。自身を完全に無視された事に少女はその自尊心を酷く傷つけられた。


「っ………!!?止めなさいって言っているでしょう………!!?」


 一瞬躊躇した紫は、しかし直ぐに声を荒げて鉄の大蛇に触れる。瞬間、紫は顔を苦痛に歪めた。妖刀の鱗は無数の刃で構成されているのだ。ましてやそれが動いている時にその表面に不用意に触れればどうなるか、考える迄もない。


 元より妖に貫かれた右腕であった事もあり、紫の感じ取った痛みは相当なものであった。それでも彼女は手を離す事はない。血塗れの手で妖刀に触れて再度命令する。


「命令よ、動かないで!!これ以上動けばどんな事になるのか、分かっているでしょう……!!?」


 それは自身の身体を使った脅迫だった。彼女自身が妖刀にどう思われているのかは知らない。命令を黙殺されている時点で大体の予想はつくが……だが、それはこの際どうでも良い事だ。


 大事なのは彼女の立場だ。曲がりなりにも赤穂家本家の娘、それが文字通り身を呈して妖刀に命令をするのだ。もし妖刀が彼女の命令を無視して動けば彼女の掌の傷はより一層惨たらしいものへと変わるだろう。


 紫は自身が刀に軽視されている事を認めた。その上で、自身が人質になり得ると理解していた。これ以上命令無視して動けば紫が更に傷つく。そうなれば赤穂家の無才の恥晒しとは言え一族に連なる者を傷つけた妖刀に何をするのか……それが分からぬ程『根切り首削ぎ丸』は下等な怪異ではない筈だ。


『…………』


 暫しその動きを止め、自身の胴に触れる紫を睨み付ける鋼の怪物。紫はその反応に勝利を確信した。だが……。


「っ……!?そこまで……そこまでしてまで私の命令を無視するのですか、お前は……!!?」


 紫はその顔を悲痛に歪める。妖刀は紫の脅しに対して諦めるのではなく、その刃を引き込める事で対応した。銀色に輝く滑らかな身体が紫の掌を撫でるように過ぎ去る。真っ赤な血の跡がその白銀の身体に一本の線のように残された。


「ひ、ひぃ……!?だ、旦那、やべぇです。に、逃げま……ひ、ひぃぃぃぃ!!?」


 血塗れの青年を引き摺って逃げようとしていた案内役は大蛇に軽く咥えられる。


「ま、待て!!俺は毎日風呂にも入ってねぇし、汗かきで美味くねぇですぜ!?ま、待て待て待てマジで勘弁してくれ、俺には腹空かせた妹が……ふげっ!?」


 必死に命乞いする案内役を大蛇は心底どうでも良さそうにぽいっと投げ捨てた。悲鳴を上げる案内役はそのまま頭から下水の中に突っ込む。大蛇はそれきり案内役に興味を失うと未だ怪我による激痛に悶え苦しむ青年の前に迄進んでいく。


「止めなさいって言っているでしょうが………!!?」


 紫はヒステリックとも言える程に必死の形相で刀の前に駆け込むとそのまま血に濡れた拳で殴りかかる。ガンガン、と自身の拳の痛みも気にせず何度も何度も殴りかかる紫、しかし……霊力の大半を失った小娘の殴打なぞ、何を恐れる必要があろうか?


 冷めた視線で紫の抵抗を見つめる大蛇。そのまま大蛇は自身の顎を開くと……その舌を針のように一気に伸ばして青年の首を狙う。


「ひぎっ……あがっ!?」


 その一撃は直前に青年が掌を翳すとともに床を転がった事で致命傷とはならなかった。だが、金属の針と化した舌は青年の掌を貫くとそのまま腕の骨と肉を通り抜けて肩まで貫通した。大声で悲鳴は上げないものの、青年は苦痛に満ちた呻き声を漏らしていた。大蛇がその舌を乱暴に引き抜けば新しい傷口から赤黒い血が止め処なく流れ出る。


「あ、ああぁぁ………!!?」


 その光景を見せつけられて、紫は顔を更に惨めに引き攣らせた。絶望と無力感と罪悪感に涙を目尻に浮かべて、必死に自身の刀を止めようと叫びながら殴り付ける。


 妖刀はそんな紫を全く気にする事すらなくその身体を伸ばしていく。何をするのか紫には分かった。つい先程の妖に対してそうしたように妖刀は蛇らしく獲物を締め付けて、その骨を砕き、頭から呑み込む積もりなのだ。


「駄目!!お願い!!お願いだからっ!!彼は関係ないでしょう!!?私を、私を襲えば良いじゃない!それを……何で………何でぇぇ……!!?」


 紫は叫ぶ。この妖刀が何故あの下人を優先して襲おうとするのか彼女には全く理解出来なかった。『根切り首削ぎ丸』の来歴からして自身を襲うのなら分かる。それが、何故よりによってあの青年を、彼ばかり狙う?どうして、よりによって彼を…………。


「駄目よ……お願いぃ……お願いだからぁ。ひぐっ、私の命令を聞いてよぅ………うぅ…憎いなら、お腹が減ってるなら……私が、私が代わりになるからぁ…………」


 紫の非難と怒りの命令は、次第に泣きながらの懇願へと変わっていた。すがり付くように紫は妖刀に請願する。それこそ、自身を身代わりにする事すら提案してまで。


 本来ならばそんな必要はない筈だった。所詮下人は下人であり、彼が紫のためにその身を犠牲にするのは当たり前の事で、それを当然のように受け入れる権利が彼女にはある筈で、自らを犠牲にしてまで、身代わりを提案してまで青年を助けねばならぬ義務なぞ紫には生じ得ないのだから。


 理由?分からない。彼女自身、そんな馬鹿げた事を言う理由が分からなかった。ただ、彼をこのまま死なせたくなかったのだ。そう、このまま自分を頼ってくれた彼に何も出来ずに見殺しにするなぞ………。


『…………』


 妖刀は、そんな主人を冷めた目で一瞥し、再度無視する。そして、そのまま踞り、呻く青年を絞め殺そうと這い寄る。紫が癇癪を起こしたように叫ぶがそれは何の意味もない。鬱陶しそうに妖刀はその尾で軽く紫を拘束し、これ以上の邪魔をしないようにした。


 そして、妖刀は青年の目と鼻の先まで来るとその顎をがばりと開く。そしてそのまま青年の頭を………。

 

「……何をしているのかしら?」


 その声は、地下水道の中に余りにも良く響き渡っていた。


 そう、その何処までも凍てついた言葉が紡がれた次の瞬間の事であった。妖刀のその巨躯は激しい衝撃と共に宙を跳んでいた。砕かれて四散した自身の表皮が雪のように煌めきながら地下水道を彩った。


『ッ………!!?』


 地下水道の壁に叩きつけられた妖刀は驚愕する。一見すれば何度も何度も赤穂家の人間にその反骨精神をへし折られてきた情けない刀であるが、その実『根切り首削ぎ丸』は世間一般の常識から考えれば十分に化物だ。


 そこらの妖刀程度では反抗すればそのまま存在自体消し飛ばされるのが関の山であり、これまで何度も全力で叩き潰されても尚その存在を維持し、自力で復活してきたこの妖刀は逆説的に言えば赤穂家の本家ですら易々と退治しきれない一級の化物なのだ。その身体を損傷させるなぞ………!!?


『グウオオオオォォォォォ!!!』


 妖刀は直ぐにその身体を起こして咆哮する。戦闘の邪魔となる紫を拘束から解くと、その蛇に似せた頭部が六つに裂ける。六つの顎は各々がその内側に無数の刃の牙を生やしていた。もしそれに捕まれば最後、鉄板すら切り裂く数百数千の刃によって獲物はバラバラに切り裂かれ、磨り潰されながら消化される事になるだろう。その忌まわしい姿を見ただけで大概の者は恐怖から足を竦める筈である。だが………。


「五月蝿い」

『グオオォッ!!?』


 直後、妖刀の頭部が衝撃波で爆ぜた。鋼鉄の頭は粉々に四散する。だが、まだ終わらない。


『ッ………!!!』


 元より妖刀は鋼で構成されたその刀身が、その身体全てが本体であり所謂脳というべきものはない。大蛇を象った「捕食形態」もあくまでも戦闘や捕縛、摂食に有利なために変化させた姿に過ぎず、頭が破壊されたからといってそれが致命傷になぞなりえない。


 頭を失ったまま全身から触手状の鞭を伸ばして妖刀は襲撃者に襲いかかる。その金属製の鞭の先端は刃になっており、また鞭の振るわれる速度は薄い鉄板程度であれば余裕で切り裂く程であった。唯人であればまず対処のしようがない攻撃………しかしそれでも、そう。それでも尚、目の前の人間を殺すには余りに足りなかった。


「はしゃぐな、駄犬が」


 その鞭は全てが切り刻まれ、細切れになっていた。ここに来て漸く妖刀は動揺する。切り刻まれるその瞬間まで妖刀はその動きを知覚する事が、その予兆の察知すら出来なかったから。


「……さて、邪魔ね」


 そして気付けば妖刀の身体に触れていた女。大蛇の腹を右手で撫でる。馬鹿な、いつの間にこんなに距離を詰められた……?


「命令よ。……去ね」


 少女がその言霊を放ったのと、大蛇がバラバラに四散にしたのはほぼ同時の事であった………。





 それは余りにも一方的なものであった。『根切り首削ぎ丸』は確かに赤穂家が所持する妖刀の中では下の下の最弱の刀ではある。


 それでもそれは赤穂家から見ての事、大妖に単独で戦える退魔士はそれだけで十分一線級の人材であり、捕食形態となった『根切り首削ぎ丸』は大概の大妖程度であれば危なげなく捕食してしまえるような怪物である。それを……それをこんな一方的な戦いに、しかもそれを為したのが高々一四歳の少女であり、明らかにそれが全力を尽くしたものではない事実はその道の専門家にとって戦慄するべき事実であった。


「………さて、答えなさい。これはどういう事なのかしら?どうして貴女の刀が私の伴部を襲っているのかしら?」


 床にへたりつきながら唖然として、呆然として、茫然としてその戦いを見ていた紫はその何処までも冷酷な声に身体を強ばらせた。


 その視線の先にいたのは桃色の少女だった。彼女の良く知る存在だった。その筈だった。


 紫は彼女を知らなかった。見た事もなかった。あの人は……紫にとって憧れであり、羨望の相手であったあの従姉は、彼女の知るそれとは完全に別人だった。


 優雅に彩られた衣装は相当に急いでいたのだろう、泥だらけで、何なら何処かで引っ掛かったのだろう生地の一部は破けていた。


 その常に艶があり、綺麗に下ろされただろう長髪は荒れていた。風にたなびく印象的な桜色の長髪……。


 何よりもその表情が紫にとって衝撃的だった。普段余裕綽々としていて、底が知れず、妖艶で、何よりも優美な仕草は何処にもなかった。ただただひたすらに怒気を滲ませて、冷酷で冷淡で……しかしそこには明らかな焦燥感があり、また親に叱られるのを待つ子供のような恐怖と不安の感情が見え隠れしていた。


「あっ……うぁ………」


 紫は敬愛し、尊敬する従姉の言葉に答えようとするが、その圧倒的な霊力と敵意と、何よりも今まで見た事もないその姿に動揺し言うべき言葉が出てこない。そして……今の従姉にとってそれを待つ精神的な寛大さなぞなかった。


「………何も言えないなら、そんな頭いらないわよね?」


 その何処までも冷たい言葉は紫の目の前で紡がれていた。いつの間にか、ほんの一瞬の間に距離を詰めた鬼月の次女は光のない瞳孔で紫を見下ろしていた。そして、最早それが当然のような仕草でその手にした扇を振るう。


 並々ならぬ霊力を注ぎ込まれた扇は鉄製のそれを超える程の硬度を誇り、それを空気を切り裂く程の速度で振るえばそれは刀剣を振るうのと変わらなかった。


 葵の振り下ろした扇は紫のそのか細い首元に吸い込まれるように向かっていく。赤穂の末娘は目の前で行われる行為を認識していても反応は出来なかった。ただ自身に振りかかる運命だけは理解していた。


 そして、彼女はふと思ってしまったのだ。それが余りにこの場に於いて相応しくない事を理解していながら、ある意味何処までも愚かしい思考だと分かっていながら。そう、地下水道の床に倒れる息絶え絶えの、それでも確かにまだ生きているあの青年を見て思ったのだ。


 ………あぁ。彼はまだ生きているのか、と。


 その事実を認識すると紫はあれだけ妖相手に恐怖し、泣きじゃくっていた紫は極々自然と、そして安心しながら自身の死を受け入れていた。受け入れてしまえていた。その理由は彼女にも分からない。彼女はただただ彼が生きている事に安堵してしまえていた。


 そして死の運命は目の前まで迫っていた。その霊力で最大まで強化された扇子は彼女の首にまで届き……。


「戯れが過ぎないか、鬼月の従妹殿よ?一体何事か答えよ」


 直後、地下水道全体に響く金切り音……それが紫を現実へと引き戻した。そして紫は自身の目の前に立つ人影に今更のように気付いた。


 紫同様の色彩の髪を一本に纏めてたなびかせた、長身で痩せ型のその青年は一見表情に乏しかった。しかし、その瞳は細く狭められ、その声には警戒……いや、敵意が含まれていた。片手で持つ長刀が従姉妹の振るう扇と鍔迫り合いをして怪しげな音を鳴らす。


 赤穂一族本家が四男、赤穂透馬薄三郎は、常日頃そうするように淡々とした態度で妹を守り、従妹に向けて無感動に問い詰めていた………。


 



「戯れ……?あら、これが戯れとお前は宣うのかしら?赤穂の四男坊は随分と冗談が上手くなったのね?」

「戯れでなければ困るな。まさか縁戚に向けてこの刀を振るいたくはない」


 顔を凄惨に歪ませて挑発する葵に向けて、赤穂透馬は変わらず淡々とそう答えた。


「お、御兄様……これは…………」

「紫。後程幾つか確認したい事がある、が………まずはこれでも羽織っておきなさい。直に連れの者共が来る。嫁入り前の娘がその格好は宜しくない」

「えっ……?っ……!?」


 震える声で紫が言葉を紡ぐが、それに対して四番目の兄は無機質的な声でそう答え、鍔迫り合いをしながら自身の羽織る上着を投げつける。そして、その指摘で初めて紫は自身がどれだけ際どい出で立ちなのかを認識した。頬を赤くして、慌てて上着を羽織る。同時に自身の右腕の怪我の痛みも思い出したようで右手を握りしめると顔を歪める。


「……そちらは後程来る者らに手当てをして貰う事だ。……従妹殿の連れが手当てしているのは、そちらの家中の者かな?」


 妹を一瞥した後、透馬はちらりと地下水道の奥、葵の背後を見て尋ねる。血塗れの襤褸雑巾のようになっている人影に白い狐の少女が慌てて駆け寄り、顔を強張らせつつも包帯を使った止血作業を始めていた。


「貴方に答える義務があるのかしら?」

「その方が助かるのは事実だな。尤も、その様子では答えてくれないようだが………」


 透馬は少なくとも今の従妹に問い質した所でまともな返答が来ないであろうと理解する。仕方あるまい。ならばそれは後回しにしよう。それにしても………。


(あの従妹が此処まで頭に血が上っているのは珍しいものだな)


 別に嫌っている訳ではない。だがおおよそ、人のために何かをするという発想から最も遠い所にいるようなこの従妹が此処まで感情を高ぶらせる人物というだけで件の人物に興味が湧くのは至極当然の事であった。はて、赤穂の家の者でないのは間違いない。鬼月の家縁の者であのような者がいただろうか……?


「………」


 そして同時に赤穂家の四男は周囲に散らばる無数の鉄片をちらりと見やる。それは余りにも少しずつ、しかし確実に動いていた。まるで一ヶ所に集まろうとしているかのように……。


 それがバラバラに打ち砕かれた『根切り首削ぎ丸』である事に兄は直ぐに気付いていた。そして、再度葵の奥に倒れる青年に視線を向ける。そして警戒するように更に目を細めた。彼はこの時点で事情をある程度予測する事に成功していた。そして同時に、新たな疑念が生まれる。


(あの刀も馬鹿ではない。特別に理由もなく人間を殺せば痛い目に遭う事くらいは学習済みの筈、それを……何故?)


 透馬が疑念を抱いた事に葵は直感で理解していた。内心で舌打ちしてどうその疑念から意識を逸らそうかと葵は考える……が、その考えは直ぐに不要となる。悠長に何かを考える暇もなくなったからだ。


「ひ、姫様ぁ。その、血が……血が止まりません!!ど、どうしたら………!?」


 白が顔を青くして泣き声でそう報告する。その声にちらりと葵は二人の方向を見た。床に踞る青年は生きているのが奇跡ではないかと思える程の血を垂れ流していて、白は包帯や布地で必死に傷口を縛り上げて塞ごうとするが、塞ごうとする先から血が溢れ出ていて、到底子供一人でどうにか出来るものではなかった。


「っ……!?悪いけれど、私は切り上げさせて貰うわよ?文句なり抗議なりが必要なら、後で屋敷にでも来なさいな」


 焦燥感と緊張からか、殆ど吐き捨てるようにそう答えた葵は扇子を刀から離すとそのままとっとと踵を返してしまう。それからは最早紫の事も、その兄の事も眼中にはないようで、背後で倒れる青年に早歩きで駆け寄りつつ、袖から引き出した式神を放つとそれを実体化していく。


 人形を象った影が数体半妖の少女から持ち場を交代すると、襤褸雑巾のような姿になった青年をゆっくりと運んでいく。紫は何かを口にしようとするが、それは声にならなかった。何を口にすれば良いのか分からなかったから。


「行くわよ。……何時までもこんな汚くて不快な場所に留まるのはご免だわ」

「え?は、はいっ……!!」


 葵は白にそう命じると青年を運ぶ式神達の傍らに付きながらその場を後にする。同行していた白狐の少女は主君の命令に従いてくてくと付いていき、ちらりと紫達の方を見やると小さく、遠慮がちに会釈だけして、それきり振り向く事はなかった。


 こうして地下水道の奥に消えていく葵達……その後ろ姿を紫は、ただただ無力な少女はこれ迄と同じようにその光景を見ている事しか出来なかった。


 そう、何故自身の刀があの下人を襲ったのかも、何故腐っても自身の持ち主たる紫の命令を彼処まで無視していたのかも、ましてやたかが一下人が何故あれだけ身体が傷ついても尚息をしているのか、その疑念を抱く事もなく………。




 ………因みに下水の中に叩き込まれた案内役は、人の姿をした化物達が殺気を撒き散らすがためにその間ずっと汚水まみれのままに上がってくる事が出来なかったのはまた別の話である。


 










 都から離れたある山地……地下水道の汚水が吐き捨てられる事になっていたその通路の出口で鬼は待ち構えていた。


「あら、これはこれは碧鬼ちゃんじゃないですか?随分と懐かしいですね?再会は何時ぶりの事でしたでしょうか?もしかして、寂しくなって久々に母に会いたくなりましたか?」

「ははは、相変わらずこいつ話通じないなぁ。真性でイカれているね」


 無数の怪異の群れと共に地下水道から現れた『母』の第一声を、修験僧の出で立ちに笠を被った碧鬼は皮肉げな表情で言い捨てる。


「ふふふ、照れ屋さんなのですね、貴女は。そんな恥ずかしがらずとも母は何時でも何処でも、喜んで子供達を迎えてあげますよ?ほら、ぎゅっとしてあげましょうか?」

「気持ち悪いんだよ、ババア。そんな事のために俺が貴様のような気違いに会いに来たとでも思ってるのか?」


 心からの善意でそう宣う『妖母』を、碧鬼は罵倒する。罵倒した上で鬼は尋ねる。


「用件は分かっているだろう?ちと聞かせて貰えないかな?態態あんた程の妖がまた何でこんな夜逃げみたいな事をしているんだ?しかもこの時期に」


 半分以上その理由を分かっていても、それでも尚鬼は期待を込めて問う。そして『妖母』はそんな鬼の身勝手な質問に喜んで答えた。


「そうですね。実は坊やが、少し反抗期みたいでしてね?……もしかして気になるのかな?」

「勿論だとも。教えて貰っても良いよな?」


 その言葉に鬼は口元を裂けそうな程に歪めて答えた。その美貌に浮かべるは喜悦の笑み。そしてそれは『妖母』の短くて、しかし要件を押さえた説明によってより凄惨なものとなる。


「ふふふ……ふふふふふ………くふふふふふふっ!!!それはそれは、また何とも素晴らしい話じゃあないか?最高だよ!!ふふふ、そうか、ババアの甘言を振り切ったとは!相変わらず楽しませてくれるなぁ!!!」


 話を聞き進めていくと共に、鬼はその笑顔を一層歪め、気味の悪い程邪悪な笑い声を上げる。


 当然だ、この誰それ構わず母親面する化物の言葉は魅了と魅惑の暴力だ。その甘言を一度聴けば多幸感と安心感とで碌に思考する事も、ましてやその快楽を振り切る事も容易ではなかろうに、それを………!!


「ぐふふ……あぁ!!やっぱりアイツは期待通りの男だよ!!そうだ、そうだとも!そうでないと!私を!殺す!!英雄は!!!そうでないと………!!!!」


 何処か芝居がかった、酔うような仕草で鬼は叫ぶ。その顔は自身の期待通りの、いやそれ以上の結果を出した未来の英雄の活躍に恍惚の表情を浮かべていた。ついでに言えば『妖母』の顔を彼女の御気に入りが突き刺した話を聞いた時には思わず『イって』いた。法衣で見えないが鬼の下の下着はその時に完全にぐちょぐちょに濡れそぼっていたのだ。


 顔だけは美女を装う化物のその快楽に浸った表情は何処までも魅惑的で魅力的であった……が、『妖母』の周りに侍る妖達はその姿に寧ろ怯える。興奮した鬼の出す強烈な匂いに有象無象の怪異共は恐怖していたからだ。鬼の体臭なんて嗅げば大抵の妖はどれ程遠くから匂ってきたものであろうとも、それを感じた瞬間に即座にその場から全力で逃走するものだ。


 それが、妖の中でも一際強欲で身勝手で我儘で狡猾な『鬼』という存在であった。


「あらあら、確かにあの坊やには沢山式神が張り付いていましたし、動きに見覚えがあったので予想はしていましたけれど……まさか本当に貴女の式神もいたのは驚きましたよ?」


 まさか手助けをする程に入れ込んでいるとは……碧鬼の性格と好みを良く知る『妖母』は、其ほどまでにあの青年に彼女が入れ込んでいる事実に素直に驚いていた。同時に、彼女自身もまたそれ故に一層『我が子』への愛情と愛着を強め………。


「おいおい、冗談は止してくれよ。何で俺のための英雄を自分の餓鬼扱いしているんだ?そんな来歴、設定してないんだがな?」


 『妖母』の思考に対してそう吐き捨てる碧鬼。そう、そんな経歴、碧鬼は認める積もりはなかった。当然だ、彼は彼女を討ち果たして英雄となる男なのだから。そこに『妖母』なぞが入り込む余地なぞない。それでは……それでは彼女は『妖母』の前のただの前座ではないか!そんな事認められる訳がない!!


「しかもだ。お前……アイツを『汚した』よな?」


 そして何よりも、碧鬼は此度の一件で一番気に入らない事実について指摘する。何時しか碧鬼の顔の右半分には影が差していた。右目が鬼火のように赤く、紅く輝く……その口調も、様子も剣呑であり、妖気が荒ぶり、唯人でも分かる程に恐々しい殺気が垂れ流されている。


 そうだ、長年自分を討ち果たす理想の英雄を探し続けていた碧鬼にとってそれこそ何よりも気に入らず、そして許せぬのはその事であった。そのような因子を、そのような要素を彼女は構想していなかった。


 故に問い詰める。その内容次第では、折角見出だした英雄を諦める必要もあったが……。


「ふふふ。そうですね、直接産み直してあげるのに比べればかなり時間はかかりそうですけれど……まぁ、仕方ありませんよね?どうやらあの子は一度お腹の中に戻るのは好きではないようですから。仕方ありません。可愛い坊やの望みです。それくらいの我儘は聞いてあげませんとね?」


 常人ならば失禁して失神しそうな特大の殺気を向けられているにもかかわらず、妖の母はのほほんとした態度で何処か的外れな返答をした。それは挑発でもふざけている訳でもなく、本当に素の態度であるように見えた。


「……そうか。時間はかかるのか。それに……うん。まぁ、これ迄色々此方の期待に応えてくれたんだ。少し位は大目に見て上げないとな?」


 碧鬼は『妖母』の言葉を吟味して考える。そして、最終的には彼を『許した』。


 それは鬼という独善の塊としては驚く程に寛大な決定であった。たかが人間相手に、それが不可抗力であろうとも少しでも自身の計画から外れるような要因があれば他の鬼ならば大いに憤慨していただろうから。


 ……無論、その判断には碧鬼なりに自分勝手な思惑があるのだが。


 ……さて、それは兎も角として、碧鬼は『妖母』を許した訳ではない。いや、許せる訳がない。自身の獲物を、英雄を、御気に入り相手に勝手にちょっかいを出され、挙げ句の果てには汚されて、奪われるなぞ冗談ではない。冗談ではないのだ。


「まぁ、そういう訳で………取リ敢エズ、オ前死ネヨ?」


 次の瞬間、異形の姿に変貌した碧鬼は殆ど瞬間移動のような挙動で『妖母』に向かって突貫していた。『妖母』の頭を吹き飛ばそうとして振り上げられる白い足………それは咄嗟に『妖母』を庇うように立ち塞がった何十という妖共を一度に肉片へと変えた。


「あらあら、貴女も反抗期なのかしら?良いでしょう。ふふふ……何でしたらもう一度母のお腹に帰りますか?次はあの子と一緒に産んであげても良いですよ?」

「ブチコロスゾ、クソババア!!」


 目の前で子供らが一度に何十と引き裂かれても、自身が殺されかけた直後であると言うのにそんな呑気でイカれた事を言う元地母神……その世迷い言に対して人を装った姿をかなぐり捨てた鬼は絶叫にも似た禍々しく獰猛しく、怒りに満ち満ちた咆哮を叫び襲いかかる。


 山林に爆音が轟いた。


 ……この数日後、地下水道の大規模な掃討と捜索を実施した陰陽寮の退魔士達の一隊は、この地下水道の出口にて数千からなる妖の散乱死体の山を発見する事となったのであった。

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