美少女レスキュー・ビューティーファイブ 【リメイク版】

暗黒星雲

ビューティーファイブ発進します!

第1話 颯爽登場☆ビューティーファイブ

 時は二十五世紀半ば。これは、人類が太陽系のほとんどの領域へと進出していた時代の物語である。


 ここは宇宙ステーション大鳳たいほう


 月の裏側にあるラグランジュポイント・L2に位置している。太陽系開発機構の所有する宇宙基地であり、ここを拠点に様々な宇宙開発が行われている。この大鳳に常駐しているレスキュー部隊がある。その名はビューティーファイブ。

 メンバーは十代の若い女性で構成されている。宇宙飛行士として優秀なだけではなく、外見も美しく、また優れた歌唱力を持っている少女が集められている。

 太陽系内で発生した事故により発生した要救助者の為に、日々忙しく飛び回っている宇宙のアイドルである。


 ビューティーファイブ最大の特徴は、まだ開発されたばかりで普及していない次元跳躍ワープ航法を駆使し、光速を突破して救助活動を行う事である。


 光速突破のビューティーファイブ。


 宇宙で暮らし、仕事をしている者たちにとって、彼女達は非常に心強い味方なのだ。


 そのビューティーファイブは、アイドルユニットとしても活動している。ガールズバンドとして、素晴らしい楽曲を披露している彼女達に、太陽系の全男性が恋焦がれていると言っても過言ではない。


 今、宇宙ステーション大鳳の特設ステージにおいて、彼女達のコンサートが始まろうとしていた。


 今、控室にいるメンバーは5名。


 リーダーの綾瀬美沙希あやせみさきは一見清楚な印象だが、そのグラマスなボディは限りなくエロティックと称賛されるセクシャルアイドルである。髪は明るい茶色でセミロングだ。

 サブリーダーの相生香織あいおいかおりは、スマートな体形で色白。染めていない黒髪はセミロングだが、今日はポニーテールにしている。

 日に焼けた長身の少女は綾川知子あやかわともこ。筋肉質の彼女は稀代の格闘家でもある。極めて短い刈り上げショートヘア。

 地味系の眼鏡っ娘は有原波里ありはらはり。赤髪を三つ編みおさげにしているのだがスタイルは良く、隠れ巨乳と噂されている。

 そして、ぽっちゃり系の黒田星子くろだせいこ。天然系フワフワ巨乳女子だ。


「みんなで歌うのは今日で最後になります。ごめんなさい」


 メンバー四人の前で頭を下げているのは美沙希だ。


「問題ありません。リーダーは堂々とご自身の人生を歩んでください」


 そう力強く声を上げるのはサブリーダーの香織。


「結婚なんて、超うらやましいですう」


 巨乳を揺らしながら飛び跳ねているのは黒子。


「これで数千万の男が泣き崩れるんだ。ふふふ」


 ニヒルな笑みをこぼしているのは長身の知子だ。


「でも、私は黒子ちゃんさえいれば……」


 波里はそろりと黒子に近づいて、その豊かな胸を触ろうとするのだが、その手は香織に掴まれてた。


「不謹慎だぞ。波里」

「でへへ。ごめんなさい」


 波里は謝ってはいるが、反省している素振りはない。


「私の結婚と引退については、ステージ上での告知となります。ファンの皆様がどんな反応をされるのかは未知数ですが……」

「ステージに上がり込んでくる奴がいれば、私が息の根を止めるさ」


 美沙希の不安げな発言に、知子さんが物騒な発言で応える。美沙希はそれに笑いながら頷いていた。


「さすがは知子さんです。心強いですわ」

「任せてくれ」


 知子さんはそう言って力強く拳を握った。


「そんなハプニングは起こらないと思いますが、万一会場が紛糾するような場合は私に任せて。何とか言い聞かせてみますから」


 美沙希の言葉にメンバー全員が頷いている。

 その時、控室の扉をノックする音が聞こえた。入ってきたのは小柄なアンドロイドだった。


「そろそろ時間です。ステージの方へ」


 一礼してメンバーを促す。グレーの肌に深紅の瞳を持つ彼女は、ビューティーファイブの航海士を務めているララだった。

 ララはメンバーを先導してステージ脇へと進む。ステージといっても、正式な設備ではない。宇宙ステーション内に設けられた特設ステージなのだが、既に千数百名のファンが集まっていた。暗がりの中、メンバー5名がステージに上がると、熱い声援が沸き起こった。


 ビューティーファイブはガールズバンドでもある。

 ドラムスは知子さんでベースは黒子、ギターは香織、キーボードは波里が担当している。マイクを持って中央に立つのは美沙希だ。 


 メンバーはそれぞれ舞台衣装を着ている。今日の衣装は半袖のブラウスにチェックのミニスカートとベストを合わせている。その衣装は色違となっていて、各々が自分のイメージカラーの衣装を身に着けている。美沙希がレッド、香織がブルー、知子さんがグリーン、波里がイエロー、黒子がピンクである。


 知子さんが頭上でスティックを叩いて拍子を取る。そしてドラムスを叩き始めた。それに合わせ、黒子がベースを爪弾き低音でリズムを刻む。そして照明が灯り、ステージには煌びやかな数多の光芒が交差した。


 会場の歓声は一気に高鳴る。ギターの香織とキーボードの波里が加わり、音が一気に深みを増す。そして美沙希が歌い始めた。


「ありがとう 貴方の為に歌います

 ありがとう 貴方の為に心から


 命を懸けて 宇宙そらを飛ぶ貴方

 必ず帰って来て

 無事に帰って来て


 私の願いはただそれだけ」


 間奏パートに入り、会場はさらに盛り上がった。

 ハイ! ハイ! と高鳴るコール。そして色とりどりのペンライトが乱舞する会場には、美沙希コールが沸き上がる。


 美沙希に熱い声援を送る彼らのほとんどは宇宙飛行士だ。中には涙を流しながら彼女の名を叫ぶ者もいる。今、美沙希が歌っているのは、『君の為の祈り』という曲だ。これは、宇宙で飛ぶ恋人の無事を祈る歌。その心情は、飛行士の心を熱く揺さぶっていた。


「一度だけわがままを言わせて

 今日だけは私の傍にいて

 

 心配なの 不安なの

 だって あなたを失いたくないから」


 コーラスパートになる。美沙希に合わせ香織の歌声がハーモニーを織りなしていく。そして、黒子と波里の高音パートも加わった。


 美沙希一色だった会場の声援は、黒子、波里、香織とメンバーそれぞれの名を叫ぶようになる。


「だから何度でも歌います

 だから 貴方の為に心を込めて

 だから 貴方の為に声を枯らして」


 曲が終わり演奏が止む。再び沸き上がる大歓声。美沙希はもとより、メンバー全員が両手を振ってその声援に応えていた。

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