魔の峠を越えよ 「けものフレンズ死合同」寄稿作品

@TOKI_347

第1話 プロローグ

どうしてあの子はひとりぼっちなの?


何本もの線路が並んだ広い機関区の中、ニホンオオカミの指さす先に1両だけ形の違う機関車が止まっていた。他の機関車はなんというかその、ボンネットが前後に突き出た無骨な恰好をしているけれど、その1両だけは車体が箱型でどこかスラッとした見た目をしていた。

「ミナコに気づくとは、さてはお嬢ちゃん機関車が好きなんだな?」

「うん。ねぇ、なんであの子はひとりぼっちなの?」

「昔はなぁ……DF(ディエフ)(注1)にも仲間がいっぱいいたんだ」

「DF? さっきはミナコって言っていなかった?」

「あぁ、すまんすまん。あいつはDF50 という機関車の375号機。だから皆、DFとか375(ミナコ)って呼ぶのさ。DFは運転の仕方が難しくてな。扱いにくいからと、みんな新形のDD(デーデー)(注2)に変わってしまったんだ」

ボンネットの飛び出た機関車を指さしながら教えてくれた年配の運転士は少し寂しそうにそう言った。

いわれてみれば確かに赴任したての頃パークを走っていたのは箱型ボディの機関車が多かったかもしれないなと思うが、いまいちはっきりしない。ニホンオオカミの担当になってから列車を詳しく観察するようになった俄か鉄ちゃんには、昔見た機関車がDFだったのか、それとも今主力のDDだったのか区別が付かなかった。

「ではいずれはあの375号機も……?」「いや、飼育員さん、それはないと思うな。 あいつはパークをはじめて走った機関車、いわばこの鉄道の神様みたいなもんだ。今でもきちんと整備されているし、今後も残しておくと思うよ。おっそうだ、なんなら乗っていくかい?」

「えっ?」

「いいのっ!?」

ニホンオオカミの尻尾はバサバサと大きく振られパッと笑顔が咲いた。

「たまには動かさないと調子が悪くなっちまうからな。ただし、他の子には内緒だぞ? それから大人しくしてくれよ?」

「うん、わかった!」

「本当にいいんですか?」

「お嬢ちゃん、機関車が本当に好きみたいだし特別さ。しっかり手綱握っておいてくれよ、飼育員さん」

これがボクとミナコの出会いだった。

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