二十二話目

 



 あせあせと薬品などを整えながら銃弾や火炎瓶を提供する。落ち着いて薬品をイジる。外は見ず、怖がらずに手元だけ見て行動する。すると近くでどんっと鈍い音がした。振動が伝わって薬品が倒れる。恐怖に体がガタガタ震えていた。火薬の香り。部隊長が「銃を構えろ!」と怒鳴るから私は焦って重いライフルを持って構えた。ついにこのときがきた。私は震える手で銃の引き金に手をかけた。すると爆弾が投げ込まれた。心臓が痛い。そう思っていると部隊員がその爆弾をすぐさま拾い投げ返した。流石としか言いようがない。すると誰か入ってきた。ぱんぱんッと銃を撃つ。すると今度は火炎瓶を投げ込まれた。受け取れず地面に叩き込まれた火炎瓶は中の油に火がついて広がった。そしてすぐ爆弾を投げ込まれた。それは戸惑いのあまり誰も受け取れなかった。部隊員の体がバラバラになる。顔についた血が恐ろしかった。銃を撃っても手が震えまともに当たらない。そのとき、もう一つの爆弾によって吹き飛ばされた。



________暗転。







 戦争は我々が考えている以上に長引いた。予想以上に戦車や兵器が強くなっている。やはり二次大戦はこうなってしまうか。様子を知り、相手もしっかり対処してきやがった。優秀な我々ですらも少し引き腰で撤退を繰り返した。それに比べR王国の紅の軍隊は強かった。ひよってる我々の前で兵器を振るう。冷静に対処し表情を変えないウィルサールは恐ろしい程頼もしかった。私は護衛であり相棒のニコライの隣で戦車に指揮をしていた。撃てと命じ、方角を定める。

 そこら中で火が黒い煙を吹き舞き上げる。悲鳴と爆発音と怒鳴り声は戦場を戦慄とさせた。

 



 俺は自分の足のように使える足に驚いた。慣れた手付きで銃を撃ち、敵を倒す。するとインカム越しに声がした。戦場医務官フリッツの焦る怒鳴り声。焦った。その声に。まさか______


 

 アディーレの部隊がやられたなんて。



 駆け出した。その場から。総統アレクサンドルを書記官エドワードにたくして。銃をしまい動かしやすい剣を構える。そして急いで科学研究部隊に向かう。確かにそこからは黒い煙が出ていて崩壊していた。鳥肌が立つ。つま先から押し寄せてくる恐怖に身震いした。しかし俺が向かったのは緊急医務室だった。フリッツからきた連絡だからきっと緊急医務室にいると判断した。

 廊下を走ると弾を重そうに抱えて走る兵士とすれ違った。緊急医務室を開けると倒れた兵士の中に白いいや、赤く染まった白衣をきたフリッツと特殊暗殺部隊のヴィラがいることに気がついた。


 ヴィラは俺と目が合うとキッと睨んで顔をそむけた。フリッツのそばのベッドにはアディーレがいた。慌てて駆け寄るとフリッツが「落ち着いて。」と俺をあやした。

「助けてくれたのはヴィラなんだけど、どうやら時間が経ってて。」

 俺は泣けずじっとアディーレを見つめていた。

「ヴィラ、ありがとう。」

「なんでお前がお礼してんの?」

 アレクサンドルから聞いている。ヴィラはアディーレとドラジエントの反対派なんだと。なのにヴィラはアディーレを救ってくれた。

「なんで、助けてくれたの?」

「なんでって…、俺も信頼…してみたかったから。」

 顔を赤くして俯く赤ヴィラ。俺はその姿に見覚えがあった。よく、ヴィラはわがままを言うときに、すねているときに照れ隠しするときの顔だ。

 俺はおかしくて笑った。弱々しく笑った。

「な、なんだよ。」

「別にぃ?」

 笑いは消えるように喉から出たなくなり体が震えた。アディーレに視点を戻すと頬を撫でてやった。傷だらけで黒くあざがある頬を。まだ温もりあることに安心ながら。

「すまんな。そばにいてやれなくて。義足ありがとぉな。本当に…。」

 そう言うと俺はフリッツを見た。

「アレクサンドルのところに戻る。フリッツ、アディーレを頼んだ。」

 フリッツはヘラヘラ笑っている「任せてよ!」と言った。

 

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