十九話目

 ウィルサール国王は一度席を外した。ウィルサールの冷たい正論のせいで静まり返った会場は、ウィルサールがいないことにより騒がれた。

「やはりあの若造は。」

「よく関係がないのに口を挟めたものだ。」

 全く、大人が負けて恥ずかしい。さらにこいつ等は自分が彼に勝てないからって屁理屈を言っている。これぞまさに負け犬の遠吠え。私は笑うのをこらえワインを飲んだ。

「で、どうかね。さっきの提案は。」

「そうだな。検討するとしよう。」

 その一言でX共和国の総統が顔色を変えた。そして怒鳴った。

「何故だ!?まさか貴様我が国に戦争を仕掛けるつもりなのか!?だからこの条約を結べない?」

 あ〜煩い煩い。耳を塞ぎたい。

「そのつもりはない。ただ、今の状況ではその条約の利益が見つからないだけだ。」

 すると奴は悔しそうにしながらも歯を食いしばり黙り込んだ。ウィルサールが帰ってきて暫くして無駄な会議が行われた。赤いワインとカーテン。黒い空。私は浮かぬ気持ちでワインの飲んだ。

 

 今回は何もなしか。



 何も出来なかったヴィラは怒っていた。

「ほんっと面白くない!!俺を連れてきた癖に一人にしやがって!」

 とプリプリ怒る。まぁ、本当にただの無意味な会議だったな。なんかサプライズがないのも気にかかる。本当にどういうつもりなのだろう。

「なぁ、アディーレのことなんだけど。」

 急に冷たく殺意を出してそう言った。

「アディーレ?」

「あいつ、スパイだったのになんで信用できんの?」

 スパイ、確かに一時期はスパイ活動のお陰でこちらはだいぶ不利になったのを覚えてる。けれど、私はおかしくて大笑いした。するとヴィラは驚いていた。

「な、なんだよ。」

「信用も何も疑う要素がないだろう。」

「なんで?罠かもしれないじゃん。」

 そう言うヴィラを見て私は笑った。酒のせいかふわふわする頭で言葉を探し笑う。酔ってると察しているヴィラはうんざりと溜め息をつき呆然としていた。

「なんで信じたん?」

「んー?なんか信じてみたかったんだよ!」

 単純に私が楽しんでることは誰でもわかっていた。ヴィラは呆れていたが子供みたいに笑って言った。

「変なの。」

「そういえば、ビルの件なんだが、」

「あぁビルね。」

「あまり期待はしないほうがいいかもな。連絡が切れ始めてしまったからな。」

「思ってた以上に早いな。」  

 暗い夜に私は不安とよく似た嫌気を覚えた。

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