魔導院秘譚

海部野 アリス

~常識破りの魔導師見習い~

プロローグ

アレットマープ王国

 アレットマーブ王国。


 大陸のはずれ、突き出た半島にあるその国は特殊な地理条件が幸いして、永きに渡り繁栄を続けていた。八千メートル級の山々を背に、半ば孤立しているようなその半島と大陸との交通手段は、厳重な警備下にある跳ね橋ただ一つ。


 攻めるには難く、護るには魔導院という強力な盾を得て、アレットマーブは他国からの侵略を不可能としてきた。商才に長けた先達により、貿易によって国力を増し、それは現在もなお盤石である。


 王宮は、アレットマーブの中央にその威風を示している。そして、北に魔導院、南に祭祀院、東に医薬院、西に評議院が配置されている。それぞれの院の敷地には、美しい流線形を描いた白く細く高い塔がある。古より存在するその塔は、いったいどのような方法を以て誰が建てたものやら、どんな素材を用いたものやら、一切明らかではない。


 ただし、その用途は明確である。アレットマーブを結界地とするための守護塔だ。天変地異からの防壁として、また、海を渡る際の灯台の役目も果たす。


 北東に魔導騎士団、北西に農業ギルド、南東に工業ギルド、南西に商業ギルドがある。これらの建物の敷地にも、院よりはずいぶんと小さいがそれぞれに塔が配されている。


 八つの塔を上空から見下ろすと、そこには正しく八角を成す図形が描かれる。王族に伝わる古代の書物にはもはや解読できる者のいない文字列で、塔にまつわる内容が記されているという。


 王国の北、アルアエリア魔導院。


 王宮に仕える魔導、軍事を担う魔導騎士、祭事、それから医術を行う魔導たちのすべてを統べ、また養成するための機関だ。


 この物語は、ここ、アルアエリア魔導院にまつわるものである。

 

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魔導院秘譚 海部野 アリス @amano_alis

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