尾岡と相方さんとの出会い 第6話
さて、オフ会が終わって。意を決して電話してみたものの、尾岡の恋は終わってしまったのでした。
ただネットのお付き合いは続いていました。
詩の競作パートナーですし。何より僕が彼女のファンだったということもあります。
僕はと言えば、地域の市民劇団に入団していて、小説の創作とともに、役者や演劇の脚本にも勤しんでいました。
(何回か書いて、結局劇団でお披露目することはなかったのですが、出身高校の演劇部で使ってもらいました。あれは、嬉しかった)
そんななか。
劇団で音響スタッフであり、音楽製作をしていた子とお付き合いを始めました。
仮に、ハナさんとしますね。
彼女はミュージカルが好き。そして二人組超ビッグロックバンドが好きで、僕の趣味と重なりました。
けど、この恋はすぐに終わりました。
僕は千子さんのことが忘れられない。
ハナさんは、別れた彼氏さんのことが忘れられない。
僕とハナさんの関係は、最初から上手くいかなかった。そんな伏線があった。今ならそう思います。
お互い、やけに淡白に別れを決めた気がします。
僕は考え方を変えました。
しっかり気持ちを告げて、振られようと。
彼氏がいる人に気持ちを告げることが、どれほど迷惑だろうと思いながら。
でも引きずるよりも。
自分の気持ちを伝えたい。
思ったのは、ただそれだけでした。
秋だったと思います。
正直、この時のことはあまり憶えていない。それだけ自分のなかで、思い詰めていて。そして必死だった。
ただストレートに告げた気がします。
「蝸牛さんのことが好きです」と。
返ってきた言葉に、耳を疑いました。
「私も、れきさんのことが好きです」
どんなことを、あの時話したんだろう。
たくさん話した記憶はあるのですが、それも曖昧で。
緊張が切れたのと、本当に嬉しかったんだと思います。
ネットの中で僕らは交流して。言葉を重ねて。
あのオフ会で僕らは出会った。
男性恐怖症の傾向がある彼女でしたが。僕と話している時は、全く緊張しなかった、と。後でそう教えてくれました。
彼氏さんとは、すでにお別れをしていたそうです。
僕に対して「もう、あんな風に魂が繋がるような人とは出会えない。だから諦めていました」千子さんは、そう教えてくれました。
今でこそ普通にタメ語ですけど、当時は普通にですます口調でお互いに言い合う関係でしたね。
彼女の言葉は、僕がそのまんま思っていたことだったので驚きを隠せませんでした。
当時、青森県に住んでいた僕と。
広島県に住んでいた彼女と。
その距離を考えたら、どうなの? と思わなくもない。でも、両想だったことを考えたら、それは些細な問題だった気がします。
今まで、人と関わる中で違和感を感じていたんですよ。
多分理解はされないだろうし。妙に構えてしまうというか。
だから。
誰かと一緒に過ごしたいと言う欲求はあれど。そのまま人生のパートナーになれる。そういう感覚にどうしてもなれなくて。
青臭いかもしれませんが。
初めてだったんです。
この人と人生を一緒に歩みたいと思ったことが。
彼女を前では、一切なくて。自然体に過ごせた。それが何より大きかった気がします。
それが千子さんも一緒だったと感じられたのが、何より嬉しかったのかもそれません。
ラストは、千子さんに捧げてもらった詩を引用して、今話を締めたいと思います。
この詩は本当に僕の宝物です。
________________
【ラブレター】
大好きなあなたへ・・・
何度口に出したことでしょう
尽きるともしれない あなたへの恋心
誰よりも必要と
私の全てが訴える
あなたの傍でいることが
私が微笑むためには必要だから
醜い嫉妬でさえも
あなたの前では従順で
寂しさと甘えが素顔を晒してるから
誰よりも愛しいあなた
ずっと傍にいてください
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