尾岡と相方さんの出会い 第5話


さて、夜はオフ会本番でした。

もうテンションマックスでウキウキしてました。

居酒屋で美味しいご飯を食べながら、お酒を飲んで。

多分、僕、この時は飲んでいて。ハイテンションになっていた気がします。


で、まんべんなくメンバーとお話をしていたと思うのですが、

結局は蝸牛さん(千子さん)のもとに戻って、二人でお話をしてましたね。


彼女、この自分は手話サークルや要約筆記のサークルに参加していて。

一方の僕は福祉の仕事にようやく齧った程度。

福祉に対しての思い入れは、彼女がとても強かったように思います。


今でも憶えてますが。

当時、精神障がい者の方を

精神薄弱者(児)と呼んでいた時期がありました。


僕が短大時代 幼児教育学科での実習の話題になっって

この話題、このワードを出して、

千子さんに苦言を申されたのを、今でも覚えています。


僕としては

「やらかしたー」という思い出なのですが、

素直に、誤ったことは誤っていると

言える関係が、僕らにはあった。そう思うと嬉しさも込み上げてきました。


彼女自身は、福祉業界に進みたかったけど、

体力の問題から断念した経緯があったからこそ。

仕事として福祉に関わっている人間が中途半端であって欲しくないという想いがあったようです。


ストレートにお互いのことについて言える。

遠慮なく。

それが本当に嬉しいことでした。


もちろん千子さんだけではなく。

この時、所属しているメンバーと創作について大いに語り合って楽しかったことを憶えています。


でも一番の思い出は翌日、原宿を周っての東京観光。

僕と千子さん、たっちゃん市街を運営していた市長さん、宮様

(当時、お二人はお付き合いをされていましたね)

とのダブルデート。


迷子になったらいけないからと、二人で袖と袖を掴み、

クレープを食べ。確か、違う味を頼んだので、食べさせあった記憶があります。

千子さんと過ごしている時間が、本当に居心地がよくて、心地良かったんですね。


これって、何なんだろうと

帰りの飛行機でずっと考えていました。


帰ってきてから

当時飼っていた「ウル」君という雑種の猫がいたのですが。

彼にも話しかけていて。自問自答していました。


僕の作品を読んでくださっている方は、あれ? と思う方ももしかしたらいらっしゃるかもしれませんが、「君がいるから呼吸ができる」のルルは、このウルをモデルにしています。それはさておき――。


彼と対話をするなかで、

自分の気持ちを整理できた気がしたのです。

帰ってきてから、寝ても覚めても

彼女のことを思い浮かんでしまって。


職場の同僚とも相談もして。

「東京まで行って、なんで告白してないんだよ?」

と呆れられました。ごもっとも。


だってね。

自分自身、彼女をそういう目では見てなかったし。

物書き、詩人として尊敬する人だったし。今回のオフ会で、福祉に関わる人間としても、改めて本当に尊敬できる人だなぁ、って思ったのでした。


でもね、自覚しちゃうとダメですね。恋ってさ。

途端に、千子さんの声を聞きたくなってしまって。止まらないんですね。


僕は衝動的に、電話をかけてしまいました。

(オフ会の時に連絡先を交換していたので。そういえば連絡先の交換をしたのは、千子さんだけでしたね。そういう意味でも彼女は、この時から彼女が特別だったのかも)


千子さんは戸惑いながらも、歓迎してくれたのを憶えています。

オフ会のことを振り返ったり。仕事のこと。日常のこと。とりとめのない話をしていました。


そんななか、時間も限られているので

(青森⇔広島間ですからね。電話料金も察してくださいませ)

僕は意を決して、彼女に言葉を投げてみました。


「蝸牛さんって、好きな人とかいるんですか?」


今なら思います。ヘタレかよ。

そして帰ってきた言葉は、自分の中ではなかなか衝撃的な一言でした。




「……好きな人というか……。今、お付き合いしている人がいます」

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