第29話 反撃のBBQを上げろ!

「――報告します! A班、トラップ設置完了しました!」

「B班同じく完了です!」

「C班同じく終わりました!」

「ご苦労……奴らがこの第18階深層に辿り着くのはおそらく明日。そしてその翌日も我々が仕掛けた罠で1日を費やすことになるだろう」


 第18階深層中ボスの扉手前。

 全てのトラップを設置し終え、リーズは安堵したように椅子へと座り込む。


「フフッ、淡色の魔女パステルウィッチも所詮この程度か……敵の妨害を読み取れないなど、戦場では生きていけないな」


 『蝦の爪』はノインたちより先回りしたのは、まず第17階深層に罠を一つ張るためだった。

 見たところ彼らはリナを除くといずれもLv.50前後。レベル差がありすぎて直接的な妨害は避けたかったのだろう。

 だから、敢えて彼らの思い通りにさせた。第16階深層を出来るだけ早く攻略し、第17階深層へと降下。相手が一安心したところで第17階深層に一つだけ壁を設置したのだ。


 あの4人は第17階深層にどのくらい時間を費やしたのだろうか。1時間? 2時間? もっとそれ以上? ……いや、そもそもまだ第17階深層に辿り着いてないのかもしれない。いくらトップランカーとはいえ、あんな低レベルの3人というお荷物を抱えているのだ。


 そして第17階深層の中ボス、『スノーコブラ・スケルトン』。毒攻撃がない代わりに氷魔法を使う厄介なモンスターである。リーズたちでさえ少し苦戦した相手に、あの4人がそんな簡単に攻略できるだろうか? いや、そんなはずはない。


 きっとあの4人が第18階深層へと来た時、絶望するだろう。なにせ第18階深層には全25箇所に壁トラップを仕掛けたのだ。これを攻略するには相当な労力がいる。


 とはいえ、『蝦の爪』もいいことばかりではない。無理に早めに攻略した為、20人のうち4人がゲームオーバーとなってしまった。そしてこの第18階深層へと侵攻して1日内で全てのマッピングを完了させ尚且つ罠を張り巡らせた為、残ったメンバーもだいぶ疲弊してしまっている。今の状態で第18階深層の中ボスを攻略するのは悪手というものだろう。


 というわけで、『蝦の爪』は第18階深層の中ボス前を陣取り今夜はゆっくり休息をとるつもりである。攻略の速度が落ちるが……リターンはありすぎるほどだ。


「……キャプテーン」


 と、思考を巡らせているリーズにRui子が不満げな顔をしていた。


「そろそろあの人たちとも正々堂々と勝負しません? ボクたちに勝機があるって思ってるなら、こんな卑怯な手を使わなくてもいいじゃないですかー」

「Rui子、お前は何もわかってない。戦いってのはな戦場だけで起こるものじゃないのだ。我々はなんとしてでもこの深層を攻略しなければならない」


 Rui子を窘めるリーズだが、彼女の不服そうな表情は消えない。


「いいか、Rui子。お前はまだレベルが低い新人だが、プレイヤースキルには目を見張るものがある。お前はいずれ俺と同じように隊長になり得る存在だ。今のうちに俺の元で色んなことを覚えておくんだ」


 Rui子はまだLv.55。まだLv.60にも達してない彼女だが、戦闘での動きはもはやLv.70台とも渡り合えるPSを持っているとリーズは確信していた。

 だから深層攻略にも彼女を連れて行こうと決めたのだ。高ランク帯の刺激を受け、いつかその才能を開花させるために。


 ――そうすれば俺はもっと上になれる。Rui子という優秀な人材を育て上げその功績が認められれば、Rui子はこの『蝦の爪』の隊長となり、そして俺はあのセブンス様とシーダ様直属の第1部隊に配属できるかもしれない。


 彼にとってこの深層攻略は失敗できないものだ。夢の第1歩として、あの二人に任命されたこのチャンスを逃すわけにはいかない。


「むー……ボクはもっと普通に競い合いたかったなー」

「ふん、期待するだけ無駄だと思うぞ? あの淡色の魔女パステルウィッチが一人いるだけで、他の3人はレベルもチーム力も低い。普通に戦ったら圧勝するだろうな」

「……ボクはそう思いませんよ」


 鼻を鳴らして小馬鹿にするリーズだが、対するRui子は至って真剣な瞳をしていた。


「そりゃあのおねーさんは頭一つ抜けて強いです。レベルを見ればわかります……でもワンマンチームなんかじゃない。確かにチーム力はまだまだな感じですが、一人一人にオフェンス力があるように見えました。外からでも中からでも点数を確実に取れるかのような。特にあの――」

「なあRui子。前々から気になってたんだが……その物事をなんでもバスケットで例える癖はなんとかならないのか?」

「えっ、あっ、いやぁ……バスケのことを忘れまいとこの世界に閉じ込められた時から意識して、わざとこういう風に喋ってたんで。今じゃこれが普通なんですよねぇ。あっはっはっは!」


 と豪快に笑うRui子。RRO内でも常日頃バスケの練習をしている彼女は、どうやらこよなくバスケを愛しているらしい。

 PS面は確かに素質がある彼女だが、対話する上では難ありだなと静かに頭を抱えるリーズである。


「あっ、キャプテン! 今から練習していいですか!? あの、軽ーくフリースローするだけなので!」

「……好きにしろ」

「ありがとうございますっ!」


 こうなってしまったら、もはや何を言ってもやめないと知っているリーズは諦めたかのように返事をし、Rui子はウキウキと自身のインベントリからバスケットゴールとボールを取り出した。


 訊けばボールもゴールも全て彼女の自作らしい。そこまでしてバスケをしたいという熱意がよくわからないリーズ。過去にスポーツでもしていれば少しは理解できたのだろうか。


 ――さて、もうRui子のことは放っておこう。俺は明日の予定を考えておかないとな。


「た、大変です、リーズ隊長!」


 と。

 コーヒーでも飲みながら優雅に明日の攻略スケジュールを考えようとしたところで、一人の男が慌てたように彼の元までやってきた。


「ん、どうした?」

「そ、それが『心眼』で第18階深層の入り口を偵察していたのですが……奴らが! あの4人がもう降りてきたのです!」

「っ!!」


 その瞬間、リーズの顔が強張った。……もっとも、フルフェイスをしているためにその表情の変化は誰からも読み取れないのだが。


 ――想定より早い……いや、早すぎる!


 彼の想定では明日の朝、ようやく第17階深層のボスに挑み始めるはずなのだ。つまり、第18階深層に辿り着くのは早くても正午を過ぎた後。


 だというのに……実際はどうだろう。まだ日付も越えてないというのに、もう下へと降りてきてるではないか。


「……落ち着け。奴らがここに降りてきたところで何もできやしない。こんなハイペースで攻略しては体力がもたないはずだ」


 その言葉はリーズ自身にも言い聞かせているかのようだった。

 しかし……そんな彼の予想も大きく裏切られることとなる。


「…………っ!? な、なんだ……!?」


 第18階深層に響き渡る震動。明らかにこのフロアで何かが暴れている。


「――次! そこの壁だユキ先輩! 龍矢はそっちの壁!」

「はい! 【天狗】!」

「【その連撃は天を割くドラゴンクロー】!」


 その元凶は……もちろん降りてきた4人の仕業だ。

 ユキと龍矢が指示された壁に攻撃を仕掛ける。


「おっと、邪魔はさせないよっ! 【エターナルシェル】!」


 そんな二人をモンスターから守るのはリナとノインの役目。水の球体が連続で出現し、モンスターたちを蹂躙する。


「ノインさん! 右の壁が壊れました!」

「前の壁もだ!」

「よし、次は右に攻めるぞ!」


 ノインの指示に勇ましく駆け出す音が聞こえてくる。


 ――バカな!? 奴らには第18階深層のマッピングがわかっているというのか!?


 そんなことを考えるが……そんなわけがない。普通の階層と違い、この深層はということをあの二人から聞いているのだから。

 そんなこと、不可能なのだ。


「龍矢さん! 思いっきり暴れ回ちゃってください!」

「ああ、ユキさんもいくぞ! 蒼き力よ、今こそ怒れる赤きオーラへと変われ!」


 二人は息を揃え、スキルを発動する。


「「――【バーサーク】!!」」

「よし、先輩はあっちの壁から! 龍矢は逆側から攻めていけ!」

「「了解!」」


 ユキと龍矢が再び壁に猛攻を仕掛ける。


「……まさか」


 鳴り止まない震動の中、心なしかリーズの声も震えていた。


 まさか――全ての壁に攻撃を仕掛け、強行突破する作戦なのか。


 なんて……なんて非効率的な作戦なのだろう。

 確実性はあるが、その分無駄な労力をかける。また、全部終わらせるまでに一体どのくらいの時間がかかるだろうか。


 ――いやそれよりも。なんであの4人はまだあんなに元気なのか?


 第17階深層の中ボスが楽だった? いや、そんなわけがない。実際に戦ってみたリーズがそう否定するのだから、そんな簡単に勝てる相手じゃないはずだ。


 なんて考えてみるが……答えは見つからず。


「――次、ここだ!」

「っ!!」


 気がつけば声はかなり近く……いや、すぐ傍まで来ていた。


 ――まずい!


「――全員、構えろっ」


 なるべく小声で全員に伝達する。

 リーズたちは疲弊しているが……勝機は十二分にあるはず。レベルも人数もこちらの方が上なのだ。


「おいRui子! お前も態勢を整えろ!」

「あっ、待ってくださいキャプテン。こういう時こそフリースローシュートは外せないんです」

「お前、状況わかってて言ってるのか!?」

「はい、めっちゃ緊迫した雰囲気ですよね!」

「じゃあお前は何と戦っているんだ!?」

「ボク自身とです!」

「頼むからもうすぐやって来る敵と戦ってくれ!」


 などと言い合ってるうちに壁を攻撃する音がどんどん大きくなっていく。


 そして遂にリーズたちが置いたダミーに迫ってきて――!


「――ストーップ!!」


 バリケードが壊されるその瞬間……ノインの大声により、攻撃がピタリと止んだ。


 ――助かった、のか?


 とりあえず正面衝突の危機は免れ安堵しつつも、まだ警戒は解かない。

 というのも、いきなりここで止めたのが不自然すぎるのだ。てっきりこのままの勢いで壁を破壊し乗り込んでくるかと思っていたのに。


 ――いや、そうか! あいつらも勢いのまま入ってきたところで勝てるわけがないのだ!


 よくよく考えてみればそうだ。いくら勢いがあれど所詮Lv.50程度なのだから、完全にリーズたちが優勢のはずである。


 となれば、次の手は二つ。この場を離れて別の場所へと移動するか、一旦ペースを落ち着かせて合図と共に突入してくるか。


 リーズは一瞬で静まり返った壁の向こう側を見つめ息を呑む。


「――よしっ!!」


 ――来る!


 ノインの掛け声と共にリーズは剣を構える。




「今からここでキャンプだ!」

「「「イエッサー!!」」」


「………………………………………………は?」


 ノインの宣言にリーズは思わず間抜けな声をあげてしまった。


「飯にしよう! その間、テントを張って焚火をするんだ!」


 ――な、なんでぇ?


「やっぱり泊りがけダンジョンの醍醐味と言えば、キャンプですよね!」


 ――いや、違うと思うんだけどぉ?


「うむ! この場所こそ蒼き果てが見えるほどの絶好の景色だな!」


 ――周り、壁で囲まれてるよぉー?


「テント、設置完了したよ! 後は……【フレイムスロウアー】! 焚火も準備できたよ!」


 ――それ、攻撃魔法だよね?


「よっしゃ、今日の飯はバーベキューだ!」

「「「BBQ! BBQ!」」」

「材料点呼!」

「ニンジン、玉ねぎ、ニンニク、キャベツ、とうもろこし! 野菜軍オーケーです!」

「ミノタウロス、オーク、グリフォン! 肉軍、ここに!」

「バナナ、林檎、マシュマロ! デザート軍も準備できたよん!」

「よし! 今から焼くぞ!」

「「「わっしょいわっしょい!」」」

「今夜は宴だ!!」

「「「いやっほう!! わっしょいわっしょい!!」」」


 ――っていうか、さっきから思ってたんだけど……こいつら、なんでこんなテンション高いの?


 わからない。

 こんなにテンションが高い理由も、急に宴を始めた理由も、ノインたちの目的も。

 リーズにはさっぱりわからなかった。


 火が爆ぜ、肉の焼く音が聞こえてくる。心なしか美味しそうな匂いさえ漂ってくるような気がした。


 そして時折聞こえてくる「わっしょいわっしょい!」の掛け声。何が「わっしょい」なのかさっぱりわからないが、とにかく楽しそうな4人になんだか張り詰めていた空気も大分緩んでしまった。


「――さて、明日の計画だが」


 そんなハイテンションな雰囲気も、ノインの一声でピタリと止まる。


「朝方にて第19階深層を攻略開始して、夜には第20階深層到着。明後日には第20階深層を攻略しようと思う」

「っ!?」


 堂々としたノインの発言にリーズの身体が強ばった。


 ――明日中に第20階深層に行き、明後日には完全攻略!? そんなの、我々にも不可能だぞ!?


 ハッタリだ、と彼は判断する。いや、そう思い込んでおかないと落ち着いていられないのだ。


「はい、明日もこの調子で行きましょう!」

「ふっ……世界の蒼茫の旅に比べれば、たわいもない……!」

「うん、このパーティーなら絶対行けると思うよ!」


 なのに、他の3人から出た言葉は全く疑ってない。まるで「それくらい余裕」と言っているかのようである。


「さて、一緒に侵入してきた『蝦の爪』だが……まあ問題はない。奴らもきっと

「――っ!!」


 ノインの言葉を聞き、リーズは背中に電流が走るかのような感覚がした。


 ――こ、こいつ……


 そう、彼はここでようやく気がついたのだ。

 なぜ目の前で止まったのか、なぜいきなり宴を始めたのか。


 これらは全て、壁の向こう側にリーズたちに向かっての挑発行為だということに。


 だとすれば――この余裕はきっとこう言いたいのだろう。「お前たちなんか普通に追い越せるぞ」と。


 ――まずい! まずいまずいまずい!


 リーズにとってこの深層攻略は大事な任務。ここで失敗に終わるわけにはいかない。


 ならば……ここで逆転できる手は一つしかない。


「……今から第18階深層の中ボスに挑むぞ」

「へ? い、今なんと……?」

「今から攻略再開だ! 皆も十分休んだだろう!?」

「し、しかし――」

「ええい、黙って俺の指示に従え! この深層攻略を失敗すれば、鷹隼騎士団の顔に泥を塗るんだぞ!? ほら、さっさと準備しろ!!」

『りょ、了解!』


 すっかり冷静さを無くしたリーズの指示に、『蝦の爪』の面々も慌ただしく準備を始めた。


 まるで見えない何かに追われているかのように……疲弊した身体を癒しきれてない戦士たちは、第18階深層の中ボスへ挑戦しにいった。



***



「……わぁ。ノインさんの言う通り、本当に挑みに行っちゃいましたね……あっ、龍矢さん。その肉取ってください」

「はいよ」


 扉が開いたかのような音を聞き、ユキは龍矢に取ってもらったミノタウロスの肉を頬張る。


「それにしても……ノイン、どうして奴らがここで休んでいることがわかったんだ?」

「いや、簡単な話さ。第18階深層来た時、壁トラップだらけだっただろう? つまり、罠を設置するのに相当な時間をかけている。んで、そんな疲れた状態で中ボスに挑んでも無駄に被害が大きくなるだけ。だからここで休んでるなって思っただけさ」

「はぁ、なるほどな」


 ノインの解説に龍矢から感嘆なため息が漏れる。


「ふぁの、ふぉふぉっふぁのふぇふふぁ――」

「先輩、そんなに急がなくても。きちんと食べてからでいいぞ」

「…………んぐ。あの、思ったのですが……こんなにテンション上げる必要、ありました?」


 伝えられたノインの作戦は実にシンプルだった。


 一つは出来るだけ暴れまわること。

 そしてもう一つは――なるべくテンションを上げることである。


「何が『絶景の景色だ』ですか、何が『ダンジョンの醍醐味といえばキャンプ』ですか……っていうか、『わっしょいわっしょい』ってなんなんですか……」


 さっきまでのテンションがユキにも完全に意味不明で、思い返せば顔を覆ってしまいたいくらい恥ずかしかった。


「テンションを上げるというのはチームの士気を高めるのと同時に、相手へプレッシャーを与えることにも繋がる。きちんとした戦略さ」

「そ、そうですか……それならいいんです……でも……わっしょいわっしょいって……うぅーっ……!」

「あはは、いいじゃないユキちゃん。私は結構楽しかったよ、わっしょいわっしょい」


 対してリナは楽しそうに語る。


「で、ノインくん。さっきの計画なんだけど……そっちに関しては本気なんだよね?」

「ああ、明後日で深層を完全攻略する」

「え゛っ!? あれ、本気で言ってたんですか!?」


 頷くノインに思わずユキが目を見開く。あれもてっきり相手にプレッシャーを放つだけのハッタリだと思っていたからだ。


「そんなに驚くことか? 第18階深層もこんな簡単に攻略できたじゃないか」

「それはノインさんが第17階深層の中ボスで……!」

「いや、この作戦を実行するにはユキ先輩と龍矢とリナさんの体力を温存しなくちゃならなかったからな。俺もあれくらいは頑張らないと」

「いや、あれくらいって……」

「うむ、Lv.87の中ボス相手にソロで討伐するのはちょっと……」

「あはは……あれは私が見てもちょっと気持ち悪い動きだったなあ……」


 それぞれがドン引きしたような声を漏らしていく。

 骨だけの大蛇に常時3rdモードで相手するノインの動きは、誰が見ても意味不明な動きだったと言えよう。


「まあ、とりあえず。明日は朝から第18階深層の中ボス攻略だ。きちんと休みを取って体力を回復しないとな」


 そう言うノインは、先ほどロクに休まずに慌てて攻略をリーズたちを皮肉めいているようにも聞こえた。



***



「はぁっ、はぁっ……!」


 ――そして一方。


「う、うわぁぁぁああああ!」

「や、やめ、ああああぁぁぁ!!」


【LK_zaian

HP 0/1400

MP 32/630】


『You Are Dead』


【キューロ@PSガチります

HP 0/1200

MP 6/1050】


『You Are Dead』


 第18階深層の中ボスに挑むリーズたちの戦況は悲惨的なものだった。


 元々疲労していた身体。

 相手に追い抜かれそうな焦り。

 そして士気の低さ。


 その全てが合わさり、『蝦の爪』はまさに満身創痍の状態である。


 そして、そんな状態で倒せるような相手ではないと言い聞かせるように次々と仲間を葬っていく中ボス。


 鳥類の頭蓋骨と大きな爪、下半身は獅子の脚。

 骨の翼をはためかせたグリフォン・スケルトンはまるでリーズたちを嘲笑うかのようにカタカタと嘴を鳴らした。


「くそ、くそっ!」


 完全に冷静さを失ったリーズに、もはや残ったメンバーを指揮する余裕すらない。


「こんなはずでは――!」


 グリフォン・スケルトンは宙へ飛び上がると、勢いよくリーズたちに向けて凶悪な爪で攻撃を仕掛けた。

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