ポジティブ先生
「ええと、ですね。この様に、未来においては、ひとり一人がクリエーターとなって価値を創造する事によって、それを好む誰かの評価がそのまま財産としてストックされる様な世の中に……なると良いですねぇ」
西湖大学の教室のあちこちからクスクスと笑う声が聞こえた。
「あの、先生!」
「はい、望月さん、どうぞ」
もはや、恒例となりつつある望月さんとのやり取り。
「あの、食料や衣服などを作る人も必要だと思いますけど」
「あぁ、それは、AIが全てやってくれる世の中に……なると良いですよねぇ」
教室のあちこちで
「でた!」
とか「さすがポジティブ先生!」
とかの掛け声が上がった。
「せ、先生!真剣に考えてください。笑われますよ」
堪らずいつもは、やりあう望月も庇うような事を言った。
「いいの、いいの。素晴らしい未来を想像する事が大切なのよ」
そう言って取り合わない教授に望月は呆れたという顔をして諦めた様に座った。
それを見計らったかの様に終業のチャイムが鳴った。
「じゃあ、今日はここまでー」
教授が出ていくとすかさず望月の周りには男子学生が集まった。
「いやぁ、傑作だったね今日も」
「望月さんも、バトルの相手が弱すぎると庇うしかないかぁ」
などと勝手な事を言いながら容姿端麗な望月にかまって貰おうしていた。
「私はそんなに酷い内容の授業だとは思わなかったわ」
望月の一言に周りの学生は驚きを隠せない。
「前の授業よりは全然素敵だと思うなぁ、ポジティブな授業の方が」
彼女がそう言って何処か上の空なので、まさか恋愛感情はないよなとゲスな勘繰りをする男子までいたが言葉には出さなかった。
代わりに
「流石は望月さん、心が広いなぁ」
と言って愛想笑いをした。
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