獣少女と面食い王子
神夜
プロローグ 面食い王子
「あーすみません。俺、今は勉強に集中したいので」
授業が終わった学校の放課後。
校舎裏には一本の大きな木があり、そこで告白をすると結ばれるという言い伝えが生徒達の間であった。
それは勿論、今でも続いており、今まさにその真っ最中だった。
木の方には身長が百七十センチ程ある少年が立っていた。反対に校舎側には髪をポニーテールに結んだ少女が立っていた。
「えーと、どうしても駄目かな? 私も学年では一番の成績だよ。分からないところがあったら教えれるし」
少女は顔を赤らめそう言った。モジモジして下を見ている少女を少年は、慣れているかのように言葉を放った。
「あー、でも先輩二年生ですよね? すみません俺もう中三の勉強入り始めてて」
申し訳なさそうに頭に手を当てて少年は言うと、少女は「だ、だけど!」と涙目で少年の制服の袖を掴んだ。
「本当にすみません。気持ちは嬉しいですけどやっぱ気持ちには答えられません」
少年は少女の手を振りほどき校門の方へ去っていった。
「あ、あと······」
少年はそう言って、少女の方へ振り返った。きょとんとする少女を見ながら少年はこう言葉を放って去っていった。
「俺、面食いですから」
笑顔で少年にそう言われた少女は一人、木の下でただ少年の後ろ姿を眺めるだけだったーー。
タッタッタッタッタッ。
トンッッ!。
「よっ! 見てたぜーこのこの。あの子、俺のクラスでも人気で可愛いのに、なんで振るんだよ~」
少年が校門まで来たとき、身長が百八十センチはありそうな高い男子が飛び付いてきて言った。
男子は髪を左右に分けて、制服も腕まくりなどしており、少し着崩している様子だった。
「犬山さんやめてください」
少年はその犬山という男子を押し退け、校門を抜けて横断歩道の方面へ歩いていった。
少年に続き、犬山も後を追った。
「乱暴だなー別に良いじゃないか。男子同士がくっついても。今は需要あるらしいよ」
犬山は笑いながら少年の肩を叩く。その手を少年は振りほどき犬山の方を睨んだ。
「そういう問題じゃありません。そもそも犬山さん知ってますよね?」
少年は横断歩道で立ち止まり、呆れてるようにそう言った。
「あぁ知ってるとも。今までに告白された人数は約百人。どんなに美人、可愛い女子も受け付けない······面食い王子の向井日向(むかいひなた)くん。······あ、あと向井くんの好みは猫だったっけ? フフッ」
犬山は最後、笑いつつもそう答えた。
「そんなにおかしいですか? ん、まあ自分でも、なんで猫のような顔が好きなのか分からないんですが」
向井がそう言うと、笑いから戻った犬山が「まあいつか分かるさ」と言って、また歩きだした。
「そういうもんですかね」
向井はボソッ言い、犬山の後に続いて、透き通った空の下を歩いていった。
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