俺は別れるために生きている

昨日彼女と別れた

俺は昨日大学在籍時から付き合っていた彼女と別れることにした。理由なんて単純だ。彼女のことを生理的に受け入れられなくなったからだ。彼女は乾燥肌で時期になると肌が荒れる。付き合いたての頃はなんとも思っていなかったのに時が経つにつれ、その事実から目を背けることが出来なくなった。言い訳だと思われるかも知れないが俺だって努力をした。乾燥肌なのは生まれ持った性質だから仕方ない。そう思って彼女のことを抱こうとしたが体は正直で全く反応しなくなった。それが積み重なった結果、彼女の裸を見て「気持ち悪い」と思うようになったのだ。だから昨日、そのことを全て打ち明けた。彼女は酷く落ち込んだ声色で泣いていた。そんな彼女の声を聞いて俺は心配するような素振りも見せず「俺だって若いんだからセックスがしたい」と言ってしまった。彼女は更に泣いていた。そんな様子に間が悪くなった俺は通話を切ってしまった。翌日、彼女から連絡は来なかった。俺は自分のことを淡白な性格だと思っていたので寝て起きたら忘れているだろうと思ったがそんなことはなかった。窓の外に広がる青空の反面、俺の心はどこか靄がかかったように酷く落ち込んでいた。俺の中では完全に冷めてしまった女性なのにどうしてだろう、心の感情に脳が追いつかない。初めてだったのだ。こんなにも一人の女性を愛したのは。俺は起きてすぐ本を読む癖がある。こんな心境の中でも本だけは読めることに驚いたが集中力が切れ始めたくらいからは彼女のことを思い出してばかりだった。就職してやめていたタバコを久しぶりに吸ってみた。そうすれば少しは気が晴れると思っていたがそんなことは無かった。ハイライトの生臭い香りが口の中で唾液と混ざり合って少々不快な気持ちになりまた心が暗くなった。だけど、人間というのは不思議なものでこんな時ですらお腹は減るらしい。重い腰をあげ、具が何も入っていない袋焼きそばを作り食べたがあまり美味しくは無かった。ふと、彼女の作ってくれていた手料理を思い出して少し泣いてしまった。ご飯を食べた後はぼーっとして、何もしなかった。何もしないという行為がセンチメンタルを掻き立ててまた泣いた。この感情をなんとか収めようと思い、スマホを見るとLINEの通知が来ていた。ロックを解除し、確認するとセフレからの連絡だった。何の感情も湧かなかったが体は反応してしまって勃起した。なんで彼女には反応しないのにセフレには反応してしまうのだろうかと思うと自分が情けなくなった。だから、思ったんだ。

「俺は別れるために生きている」

結局、俺は肉体関係でしか心が動かない。短絡的な快楽に溺れる俺のような人間は種付けしたいがために生きている。それは誰かと付き合う権利を持っていないことと同義である。結局、自分の性欲が赴くままに生きていると誰かと付き合っても次第に生理的に受け付けなくなってそれでまた別れる。結末がバットエンドしかない俺の人生はなんてつまらないのだろうか。だけど、将来は幸せな家庭を築きたいと思ってしまう。そんな俺の考え方は酷く独善的で軽蔑されるべき考え方なのかも知れない。だけど俺は死を望んではいない。だから、どうかこれから先心が動かされるような女性と出会いませんように。そう本気で願って今日も生きる。

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