第73話 初詣……?
「神社なんて初詣ぶりでしたけど、気持ちいいですね。」
車までの道、関が背を伸ばしながら言う。
「俺は初詣行ったっけ?」
ちゃんと行っておみくじ引いたような気もするし、バタバタしてて行ってないような気もする……。
昔の俺が行っていることを祈ろう。
「私は今年初詣すら行ってないような気が。」
俺のつぶやきを聞いて、部長が頬をかきながら言った。
「初詣って、その人が初めて詣でたときらしいですから、これが初詣かもですね。」
「そうなんだ〜!」
俺がフォローを入れれば、部長は輝かしい笑顔でいい事を知ったとばかり言う。
部長、そういう素直なところ素敵です。輝いてらっしゃいますよ。頭も。
「次、どこ行くんすか?」
車に戻ってエンジンをかける俺に、関が尋ねる。
「
「早口言葉っぽいですね。」
さっきから、神社に花畑に随分と渋いかと言われるかもしれない。
そう、渋いのだ。渋くて結構。
だって、ここにいるのおじさんたちだもん。
まぁ、関はまだまだ若いけどね。
俺も一応20代でやらせてもらってます。
感覚的には隠居する60代だけど。
「名前的に花とか咲いてるの?」
「そうですね。海岸線沿いの丘陵に、水仙がたくさん咲いていてとてもにキレイらしいです。」
部長の問いに、俺はパンフレットで見た解説そのまんまを返す。実は俺も行ったことなかったりする。
パンフレットには海と水仙の花畑というとてもきれいな写真が載っていたので、結構ワクワクしているのは内緒だ。
「水仙って、いつ咲きますっけ?」
「いつだっけ……?」
関の問いに俺が困っていると、
「見頃は12〜1月だよ。」
部長がそう教えてくれる。
ぶ、部長!! お花にまで詳しいんですね!!
このフォローといい、俺の部長への好感度が2上がった。
まぁ、おじさんのおじさんへの好感度なんて、上がったところで意味ないけど。
「ちょっと遅いですね。」
腕時計を見て関が言う。
なぜ時計を見て、月日を確認するのかって?
腕時計の中には、今日が何日とか何曜日とか書いているやつもあるのだよ。俺は時間だけのシンプルなのが好みだけど。
凝ってるやつになると、方角とか海外の時間とか知れるやつあるけど、俺は必要ない。
山で遭難することも、海外支部とやり取りすることもないからね。
「まぁ、何とかなるんじゃね?」
俺はミラーを確認して、車を発進させて言う。
「そんなもんすか。」
「そんなものだよ。」
関のつぶやきに、俺ではなく部長が深く頷いて返した。
その言葉はやけに重く、たくさんのものが詰まっていた。
部長……苦労してるんですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます