第70話 波のお悩み〜支部開設は茨の道〜

私がやることとなった四国支部の開設。


それは部下として数人つくと言えど、過酷な作業には変わりなかった。


前例もあるしやり方もある程度型が決まっているので、その通りにやるだけではある。だけではあるのだが……なにせ仕事量がハンパじゃない。


土地の予定候補選出まではやってあったので、初っ端から自分の身で四国まで行って、予定候補地を回る。


まだ四国ということしか決まってなくて、県もバラバラに4,5箇所を一日で周る。


かなり無理ゲー。


新幹線で大阪まで行き、そこから徳島に行って、一つ見て。


上の香川で二つ見て愛媛で二つ見て、そこから広島に渡って、新幹線に乗り東京に戻る。


ハードでキツキツなスケジュールだ。

高知県は予定地があったけど、先に取られちゃっていて買えなくなってしまった。


予定地をすべて回って東京に戻ったら、その報告書を書いて、どこにするか話し合い。


土地決定はかなり大きなことなので、私だけじゃ決められず、専務や取締役。時には社長も混ぜて話し合いをして決めていく。


うちは銀行だけどそこまで大きくないので、社長たちのフットワークは軽い。それはいいことなのだが、正直言って彼らが来るとかなりの確率で会議が長引く。


私達でやれば2回で終わるのを、5回くらいかけて話し合い、結局は二択まで絞ってあとは現場の自由ということになった。


だから、再び四国に行き、二箇所を回ってきた。今度は部下も連れて一泊して、しっかりとその周りや近隣の会社なども調査して。


そして結局は、愛媛の県庁所在地である松山市に建てることに決まった。


ここにした理由はいくつかあるけど、主なものは県庁所在地であり大きめの都市であること。


あとは、ほかは更地に新しく建てなければいけないのに比べて、ここは元々ビルが建っているから建築費も時間もかからないということ。


結局、世の中最後はお金なのだ。


ここまではまだまだ序の口。

これから更に、取引する会社との話し合いに、ATMの設置などの話し合い。地元企業に融資のお誘いなどなど。


話し合いに次ぐ、話し合い。もう中年男性の顔を見るのは嫌になるほどに、話し合いを重ねる。


もちろん現場なので愛媛でやるしかなく、数週間ホテル暮らし。


さらに報告書も書かなければならないから、本当に大変だ。


これなら、誰もやりたがらないのも頷ける。

世間で言うところのブラックというやつだ。


けど、これでも週休二日はあったし、睡眠時間はあるし。残業手当も心ばかりではあるが出るから、うちはまだ白い方なのであろう。


日常的にこれよりも多い業務をこなして、休みなんてなしに会社に住んで働くなんて、私には到底無理だ。


世のブラック企業の社員というのは、本当にどうにかしているのだろう。


私は改めてブラックの怖さを感じながら、支部開設に力を注いでいった。

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