第42話 車を探すのは難しい

「お待たせいたしました! お客様のご指定の条件ですと、この辺になりますね。」


俺がしばしのお茶休憩を楽しんでいると、お兄さんがタブレットを置いて言った。


どれどれ。


見てみると、画面には『17件ヒット』と書かれている。


17か。この店舗規模見たら少なくねと思っちゃうけど、そもそも普通じゃない商用車だし、これだけ選択肢があればいい方だ。


「こちらなんかは、数年前の機種で、ワンセグ対応ナビに、レコーダーがついて35万円になります。」


お兄さんは、一番最初に出てきた画像をタップして見せる。

確かに小綺麗で、今風だ。


ナビね。

ナビつけるのか、ワンセグ見れるのか問題ってあるよな。


俺的には、別にテレビ見れなくてもいいかな。普通に、ラジオくらい聞ければいい。

ただ、道にはがっつり迷うタイプなので、カーナビはほしい。


レコーダーは……どっちでもいいかな。


「安さで行きますと、こちらの車ですね。カーナビは無しですが、機能は充実しておりまして全然乗れます。そして、お値段がなんと12万!」


お兄さんが、タブレットを安い順に表示にして、その一番端に映ったやつを見せながら言う。


確かにお値段は魅力的だけど。ここまで安かったら、逆に不安になってくるし、カーナビはほしい。


その後も俺とお兄さんはあーだーこーだ言い合いながら何個か候補を絞り、実物を見てみることになった。


外に出れば、ズラーッと並ぶ駐車場が見える。

ほんと、何台あるんだか。


ここで火事が起こったり大変だなとか思うけど、全部の車にガソリンが入ってるわけじゃないのかな。


こういう専門店の裏側とか、少し気になるよね。


「こちらが、はじめに見ました新しめの車です。」


お兄さんが、左側の車を指さして言う。

それは、俺の求めるようなバンでありながら、周りよりも明らかな輝きを放っていた。


「これが新しいやつですか。」


確か、カーナビにワンセグにレコーダーついた最新級のやつで、35万円。

確かにいいけど、35は高いな。せめて、30切ってほしい。


まあ、新車で買うなら軽でも余裕で3桁いくし、それの比べたら破格なんだろうけど。


「こちらですね、ナビも最新のものでして、あおり運転対策のレコーダーも付属しております。」


お兄さんは扉を開けて、中まで見せてくれる。

うおぉ、思ってたより広いな。


運転席を見た感じ、普通にのびのびと座れそうだ。


「どうですか?」


「素晴らしいですけど、他のも見てみたいですね。」


お兄さんは、


「たくさん見て決めたほうが、後悔が少ないですからね。」


と、笑いながら次の車へ歩き出した。


俺の車探しは、まだまだ始まったばかりなのである。

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