第25話 うまいものは美味しいのだよ
他にどんなのがあるのかなとか思って、俺がメニューをダラーっと見ていると、
「お待たせいたしました」
そんな明るい声が聞こえた。
スゴイな。全然おまたせしてないぞ。
体感だと10分も経たないうちに、料理が運ばれてきた。
俺のイメージだとこういうところは長々、出てくるまでに30分くらいかかる感じだったけど今どきは進化してるんだな。
「前、失礼致します」
ペコリと頭を下げながら器用にテーブルへと食事を運ぶお姉さん。
俺らが何をすることもなく、目の前には注文したすべてのものがキチンとした向きに揃えられて並んでいた。
スゲェ、これがプロ……。
「こちら伝票になります。ごゆっくりどうぞ。」
華麗な礼を添えて店員さんは去っていく。
「す、すごい」
「本当にすごいですね。」
俺とさくやさんはしばらくお姉さんの影を追っていた。
「食べましょうか。」
少し経って、さくやさんが視線をテーブルに戻して言う。
「そうですね。」
俺もちゃんとした姿勢に戻って返事をした。
店員さんも見事だけど、食事の方も見事だ。
ピザもサラダもコーヒーも。どれをとっても一流って感じで、美味しそう。
「「いただきます」」
俺はまずは主役からと、ピザに手を伸ばす。
ピザの中には自分で切らないといけないのもあるけど、ここのやつは丁寧に8等分されていた。
俺はああいう切るの苦手なタイプだから助かる。
そんなことを思いつつ、チーズたっぷりのピザを口に運ぶ。
「あぁ……」
俺の語彙力ではなんとも言えないけど、とにかく吐息を漏らしてしまうくらいには美味しかった。
チーズチーズしいというか、ガツンとチーズが来るんだけどそれも強すぎずにあとから生地の優しさとかが来て、まぁとにかく旨いのだ。
「美味しいです」
対面に座ったさくやさんも満足げにそうつぶやいている。
安くて早くて美味しいファストフードもいいけど、やっぱりこういうちゃんとしたところのやつもたまには食べないとだめだよな。
俺は2切れ目を頬張りながら、そう思った。
どれ、シーザーサラダも食べてみようか。
俺は料理とともに運ばれてきたお箸で、サラダをつまんで口へと運ぶ。
うん。サラダも安定に美味しい。
薄味で良い素材の美味しさがフルに活かされていて、美味である。
「チーズもらいますね。」
俺が全部美味しいなと舌鼓を打っていると、さくやさんがそう声をかけた。
「あぁどうぞ。」
俺はお皿をさくやさん側に少し押しながら返事をする。
「うん、美味しいです!」
チーズを伸ばして一切れ食べた彼女は、輝くような笑顔で感想を述べる。
「ですよね。じゃあ俺も。」
俺は彼女の幸せそうな顔を見て、自分も彼女のピザを頂いた。
「マルゲリータも美味しいですね。」
モッツァレラチーズと違って、トマトとこの緑の葉っぱとチーズがいい感じにバランスを取っていて、これもまた美味である。
「トマトが活きてますよね。」
「はい。酸味がいいです。」
お互いに微笑みながら、感想を交わし合う。
こんな感じにすごく平和に幸せに、俺らのお昼は過ぎていった。
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