暗い先頭

遅れて入ってきた列車の

先頭車両が真っ暗だった

一人一人に頭を下げる車掌

乗客は二両目に誘導される

すみません、すみません、上り坂を越えたら

普通のスピードで走れるはずです


南の海岸線から北の海岸線へ

深い緑の中を進む列車

確かに平坦になると

いつものように走り出した

駅に止まるたびに

駆け回る車掌

すみません、すみません、後ろの車両に

乗っていただけますか大丈夫ですから


進んでいる

少しいつもとは違うだけで 進んでいる


もしもこの箱が止まってしまって

もしも誰も助けてくれなかったら

海岸をとぼとぼと歩いて

家まで帰らなければならないだろう

雨が降ってきて

熊が現れたら

たどり着けないかもしれない

でもこの箱は動いている

真っ暗な一つ目を二つ目が押して

人々をきちんと運んでいる


終点まで無事たどり着いた

ありがとう ありがとうを

二つの車両と車掌に

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る