4話 初めての投資

満はメガネ女子こと、斎藤茜と別れた後、永福町の自宅へ向かって歩いていた。


赤紫色だった夕焼けは、徐々に紫色へと色を変えていった。まるで今の満の心の中のようで、徐々に落ち着いた色へと変わっていった。。


40分程歩き、自宅に着いた。


家族での夕食後、自分の部屋でいつものように、保有株のチャートを眺めながら明日の売買計画を立てていた満は、再び今日の出来事を考えて焦っていた。。。


「初めて自分の正体を知る者が現れてしまった。。」


〜〜〜〜〜


満は、「SNSでは有名な億トレ」だ。


投資家には大きく分けて2種類いる。「ファンダメンタル投資家」と「テクニカル投資家」である。前者は皆さんがイメージする投資家であり「企業の価値にお金を投じる者」。還元すれば、これから投資対象企業が大きく成長すると分析、予測する者たちだ。

一方後者は別名「投機家」ともいわれ「確率」にお金を投じる者たち。乱暴な言い方をすれば、売買対象はどの企業だろうと構わないので、この後株価が上がるか下がるかを、チャートの動き、売買量、などから予測する者たちだ。

満は後者のテクニカル投資家である。


今までのお年玉で父の言う通り(たまたま買った)株60万円が3年後に89万円になったことから、株に興味を持ち、持ち前の探究心からSNSやYouTubeで億トレ達の発言で勉強を始めた事が、満が株の世界にのめり込むきっかけであった。


お年玉による投資利益29万円のうち、ユーフォーンSE購入代金10万円を引いた「19万円」が満のスタート資金であった。満は19万円が「何もしないで得たあぶく銭」だと思っていたので、無くなっても構わないとすら思っていた。

それよりも、様々な情報から株を調べていくうちに「株トレード」に対し興味を抱くようになっていった。


2018年11月24日、満は初めて、自分のお金19万円で株を買った。初めての銘柄はハイパーエージェント1209円100株(=12万900円)だった。

大した理由は無く、「どうせ買うなら知ってる会社が良いし、なんかこれからも伸びそうなIT系の会社」という根拠の無い推測からだった。


翌日は祝日で株はお休み(※株トレードはカレンダー通りの9:00〜15:00に行われている)ので、残念だった。

動いてないはずの楽天証券のトレード画面を何度も眺めては心地良い気持ちになり、何とも言えない充実感を抱えながら「ハイパーエージェント 株」とTwitterで検索をしてみては「良い情報のみ」を拾い集めて、将来ハイパーエージェントの株価が10倍になる妄想をしては、そのお金で何を買おうか考えていた。


11月26日、1時間目(現代文)。満はスマホで楽天証券のアプリから、ハイパーエージェントの株価を眺めていた。


9:00!

(※寄り付きといって市場が開く時間)


相場が動き出した。株価は1199、1201、1197、、、と目まぐるしく、すごいスピードで動き始めた。満は数字を見ては「1円上がった!」「3円下がった、、」「2円上がった!」と興奮、落胆、を猛スピードで繰り返していた。。


15:00

(※大引けといって市場が閉まる時間)


今日の終値は1189円だった。今の所、20円(2千円)のマイナスだ。。




最近の満の癖は、気がつくとTwitterで「ハイパーエージェント 株」と検索をしては新しい情報を収集している事だった。。


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