雨の日。


今日は台風。


毎年、誕生日近くに台風が来るのは当たり前。


流石に嫌になる。


ここ数日ずっと大雨だ。

風もひどい。


こんな日が続くと流石に憂鬱になる。


まあ、誕生日を忘れてお昼寝している彼はきっとこの大雨は気にならないのだろう。


でも、そんな彼を嫌いになれないのは好きという気持ちがまだあるから。

そして、わたしはこんな大雨の日に笑みが溢れてしまう。

きっとこれもあいつのせい。

ちょっと前からお腹が目立つようになってきたあいつのせい。




嫌になる。

学生の頃、気づいた時には学校が嫌いになって、不登校になった。


理由は特に覚えていない。

でも、なぜか全てが嫌になり学校に行かなくなった。

社会に出てからどうやって働けば良いのか不安しかなかった。


そんな時、なんとか働ける喫茶店が見つかり、気づいたらなんとか3年目。


常連さんとも仲良くなり、自然と笑顔も増えた。


そんな時に出会ったのがこのねぼすけくん。いや、誕生日を忘れた罪は重いので、ケーキを買ってきて欲しいという願いを込めてケーキくんと呼ぼう。



ケーキくんが初めてきた時、今日も見たいな大雨だった。


夕立か通り雨なのかわからないが、そんな雨に降られたために一時的避難でお店に入ってきたケーキくん。わたしの顔を見て彼は申し訳なさそうな顔をしながらコーヒーを注文してきた。


そして、座る前にしっかり雨を拭き取ってから座った。

彼にとっては当たり前なのかもしれない。

けど、わたしにはその小さい心遣いがとてもかっこよく見えた。


今でも忘れない。

そんな彼にわたしは一目惚れした。


彼にコーヒーとお店自慢のサンドイッチをおまけに出すぐらいには惚れてしまった。


そんな彼は定期的にお店に顔を出すようになり、いつのまにか常連の仲間入りになった。



でも、そんな楽しい日はあまり長く続かなかった。


オーナーであるお店の店主が倒れてしまってお店を閉めることになったから。

わたしがオーナーになることも考えたが、1人で回すには難しいことから無職なることが確定してしまった。


正直他でまた1から人間関係を気づくことが難しいわたしからするととても困った話だった。


そんな時ケーキくんは、告白してくれた。


きっと、勇気がいる決断だっただろう。だって、ケーキくんの会社もまた倒産したばかりだったから。


でも、彼は、


僕の隣に永久就職しませんか


なんて、セリフを恥じらいもなく真剣にしてくれた。

周りの環境音全てが私たちのために止まっているかのように感じるほどに時間がゆっくり流れた。

そんな真面目な人柄に改めて好きだと自認してしまったのだろう。





あの後


いろんなことがあった。

正直思い出したくないことばかりだ。




ピンポーン

珍しい、家の鐘が鳴る。

それでも起きない、ケーキくん。


仕方ない、動こう。



「はーい」

「配達便です。

お名前、お間違えないでしょうか」

「はい、大丈夫です」

「割れ物なのでお取り扱い、お気をつけください」

「ご苦労様でした」



なんだろう、わたし宛に違いないが、買った記憶はない。


「もう届いたの」


ケーキくんが起きてきた。

でも、ソファで寝てたせいで少し体が痛そう。

苦笑しながら、頷くわたしに、


「はっぴーばーすでー

いままでありがとう、これからもよろしく。

愛してます。」


全てひらがなのように聞こえてきたのに、ちゃんと決意が込められた言葉は本当にはっきり聞こえる。


すこし、驚きすぎて固まっていると、ケーキくんが勝手に箱を開け始める。

きっとこれはケーキくんからのプレゼントなんだろう。


中身は内緒だ。




これからもお互い頑張りましょう。

きっと言葉にならないことばかりな世の中だけど、ケーキくんの横なら笑っていられる。

だって、お互い愛し合っているのだから。



だから、わたしは雨が好きだ。

いつもわたしが彼に雨の日はいっぱい話をしてしまうのも雨のせい。

雨の日はいつでも彼を好きだったわたしを思い出せるから。

こんなに雨の日を好きにさせた彼は悪魔だ。

ケーキくん、いつも言わないけど、大好きだぞ。


でも、ケーキはちゃんと買ってきてね。

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