戦乙女の若旦那
車田 豪
第一幕
第1話・プロローグ
「不況だねぇ~」
金髪の男がそう言った。場所はあるロッカールーム。狭いコンクリート張りの部屋にむさ苦しい男六人が押し込められている。野戦服のままでいる者、着替え途中の半裸の者、着替えを終えてラフな私服に身を包んでいる者、様々だ。
「ワルキューレアーマーの整備費の割を食わされるのが俺達だとは」
「仕方ねぇや。落下傘も要らねぇ、武装も据え付け、おまけに縦横無尽に空を飛べる、となりゃ、ヘリから叩き落とされるだけの俺たち何ぞ、お荷物程度でしかねぇのかもな」
「それに乙女だぜ? アレに適合するのは、全員ぴちぴちの若いネーチャンばっかりなんだと」
「あぁ~、上層部も抜け目ねぇな。野郎よか美女のケツ眺めて戦争してたいって訳だ」
下品な一言に、ロッカールーム全体が笑った。ガラの悪い笑い声が鉄製のロッカーを揺らしている。
そんな中、黙々と着替えを澄ましている男がいた。筋骨隆々な周りの男達に比べ、一回り小柄な男だった。しかし、華奢と言う程ではない。
体中に付いた傷跡は他の誰よりも多く、それが、彼の越えてきた修羅場の多さを物語っている。
「なぁレイン? そう思わねぇか?」
ガラの悪い一人が、その華奢な男に話を振る。
「バカみたいだ」
溜息を付きながら、レインと呼ばれたその男は言った。
「あぁ? どういう事だよ?」
柄の悪い男の、ガラの悪い濁声がロッカールームに響く。威圧するような声だ。
「俺はもっと飛んでいたかった」
レインは物悲しく言う。ロッカーに手を突き、力なく頭を左右に振りながら言った。
「その方がもっと近くで眺められるのに」
空気が爆発するような大笑いがロッカールームを包む。腹を抱えて床に転がっている者も居た。
「おめぇも隅に置けねぇなぁ? えぇ?」
ガラの悪い男がレインの背中を叩きながら言う。レインは肩をすくめ、だろ? とでも言いたげに笑った。
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