虚空に咲く夢
未結式
とある宇宙飛行士の夢
「いよいよですね」
「ああ、これでようやく私の夢が叶う」
「四年前の船長の演説、感動しましたもん『私が見つけたあの星の名前は、星の前で発表する』って言って、本当に宇宙に来ましたもんね」
「ここまで長かったよ、お、見えてきた」
「綺麗な青い星ですね」
「ああ、見事だな」
「……それでこの星の名前は? この後地球との中継で発表するんでしょ、ここまで一緒に来た特権として、一番最初に教えてください」
「よし、いいだろう」
「私はこの星を『おっぱい星』と名付ける」
「……はい?」
「お、そろそろ地球との中継が始まるぞ」
「……」
「えー地球の皆さま、今私たちは四年前に発見した新惑星の前にいます」
「……」
「早速ですが、この星の名前を発表させていただきます。この星の名は――」
「ああああああああああ! 急に回線があああああああ!」
「何をする、いきなり回線を切るなんて」
「一応聞きますけど、船長この星の名前は?」
「おっぱい星」
「その心は?」
「ある日、私はふと思ったのだ、もし生命の宿る星を新発見し、その星をおっぱい星と名付けた場合、その星に生きる生命は『おっぱい星人』となるのではないかと、そしてその執念で私はこのおっぱいと形が似ているこの星を見つけた」
「……」
「この星に生命体がいるのは確認済みだ、故に今日から彼らは『おっぱい星人』となるわけだ、尻が好きな人も、腋フェチも、皆等しく『おっぱい星人』と定義されるわけだ、最高のジョークだろ」
「…………一応聞きますけど、そのためだけに宇宙飛行士になったんですか」
「その通りだ、さあ中継に戻るぞ」
「させるかああああああああああああああ!」
「何をする」
「何をするじゃないですよ、新惑星の発見という世紀の瞬間におっぱいっていう言葉が許されると思っているんですか⁉」
「いや見つけたの私だし」
「それでもやっていいことと悪いことがあるでしょ!」
「まあ地球の皆を待たせるのもあれだし、中継を再開する……」
「あれ船長どうしたんですか……ってレーダーに反応! あの星から出撃した宇宙船三隻!」
「おっぱい星人だ!」
「否、断じて否!」
『我々は惑星サーシャの防衛軍である、これ以上この宙域を侵犯するのであれば、旗艦を撃墜する、応答せよ』
「大変なことをなっているじゃないですか。それにこの星、惑星サーシャってかっこいい名前があるじゃないですか」
「……」
「急に通信切って何しているんですか⁉」
「……おっぱい星人だ」
「……はい?」
「彼らはおっぱい星人だ!」
「ちょ、ちょっとまて! 自分の都合の悪いことをなかったことにしないでください!」
「さて中継を再開――えーお待たせいたしました、ではあの惑星の名前は」
「サーシャです!」
「貴様ああああああああああ! いえあの惑星の名前はおっぱ……」
「惑星サーシャです、惑星サーシャ! 皆さんも復唱してください惑星サーシャ!」
「あの惑星の名前はあああああああああああああ!」
「あー! あー! あー! うわあ!」
「揺れたな……地震か? 揺れるのはおっぱいだけいいというのに」
「馬鹿なこと言っている場合ですか! 攻撃されてますよ!」
「仕方ない! こちらに戦闘の意志がないことを伝える」
「お願いします!」
「おっぱい星人諸君、こちらに抗戦の意志はない!」
「攻撃が激しくなりましたよ!」
「何故だ!」
「言わずもがなでしょうが! あっ、推進システムに異常が発生しました!」
「駄目だ、おっぱい星に墜落するぞ!」
「……地表が柔らかくて助かりましたね」
「ああ、まるでおっぱいのようにな」
「やかましい!」
虚空に咲く夢 未結式 @shikimiyu
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