癒しのゆりかごWing

玉瀬 羽依

プロローグ

 ──ここは、数多の動物達が暮らすちょっと珍しい動物カフェ。

 聞くところによると、ここの動物たちと触れ合うと、気持ちが晴れやかになるそうな。


 今日も癒しを求めて、人間達がやってくるんだって。


 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 朝日が差し込む窓辺に、毛並みがツヤツヤと光り輝かせながら、気持ち良さそうに寝そべっている者がいた。


「ネコさん、おはよー」

「あら、カワウソさん。お早いのね」


 窓辺の方へと近づき、つぶらな瞳で見上げている子がいる。


「オハヨウ、オハヨウ!」


 バサバサと羽の音が上の方から聞こえた。見上げると、白い毛並みに黄色い觜を動かしながら、窓の柵に止まる者がいる。


「みんな、朝早いなぁ……」


 そこにまだ眠たそうな声を発しながら、カラカラと動く音が響き渡る。少し声が小さいので、よく耳を澄まさないと聞き取れない。


 そう、ここは色々な動物がいる。人間たちはここを『』と呼んでいるらしい。子供からお年寄りまで、実に様々な人がやってくるのだ。

 みんな、心に何かを抱えている人が多い。そして、僕たちに、“癒し”を求めて――――。


「今日は、どんな人が来るんだろうね?」

「厄介な人が来ないといいわね~」

「僕は、昼間は寝てたいよ……」

「ネテタイ、ネテタイ!」

 また、忙しい一日が始まりそうだ。

 従業員出入り口を出入りする人達を見て、彼らは一日の始まりを実感した。


「あ、眞島ましまさんだぁ。ごはん頂戴」


 眞島と呼ばれた人間は、動物かふぇの店長だ。朝早くから動物達のために、住み良い場所を提供するために尽力する、彼らが信頼をおいている人間の一人だった。


「みんな今日もよろしく頼むねぇ」


 春の麗らかな陽気に似た、柔らかな微笑が似合うこの店長は、必ず一匹ずつに挨拶を交わしていく。そのまごころに動物達も癒されていた。


「眞島さん、今日も優しい」

「今日も一日頑張れそうね」

「ガンバル、ガンバル」

「ふわぁ……眠たいけど、眞島さんに頼まれたら、起きてないとねぇ」


 さてと、と各々が顔を近付け合い、鼻先をくっつけて挨拶を交わすと、お気に入りの場所を取ってお客が来るのを待つのだった。


 カランカラン♪


 午前十一時。最初のお客は小さい女の子とお母さんらしき人。目を輝かせて入店する女の子は、動物達を見て早々小走りであちこちを見て回り始めた。

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