第278話 ファイアリザード
「何なんだよこいつら! くそ! これじゃあ商売どころじゃねえぞ!」
「大丈夫か忠利!」
忠利の店に到着すると店の前に1匹の蜥蜴と対峙する忠利の姿があった。
『ファイアリザード』
橙色の体表に炎がトサカや背ビレといった部位を形作っている。
近づくだけでもそこそこな熱を感じるな。
「輝明っ! 帰ってきてたのか!? 桃ちゃん、何で俺に連絡してくれなかったんだよ……。というか灰人! お前から連絡がないのもおかしくないか!」
「いやぁサプライズした方が面白い反応してくれるんじゃないかなって思ってさ。ほら、喜びもひとしおだろ?」
「いやいやいやいや、サプライズする必要ないって!俺がどんな思いで桃ちゃんからの連絡を待ってたか――」
「ぐがぁっ!!」
忠利のツッコミが炸裂していると、ファイアリザードが勢いよく火を吹いた。
忠利はそれを避けつつ、びっしりと生えた鱗に剣を振り下ろすがその刃は簡単に弾かれる。
「説教は後だ。今はこいつを何とかしないと……。攻撃のスピードもこの炎も大した事はないが鱗がとにかく硬い。灰人と桜井さんは特に気を付け――」
「ふっ! ですわっ!」
――バキ。
忠利の注意を遮って桜井さんはいつの間にか手に携えていたメイスでファイアリザードをぶん殴った。
するとファイアリザードの鱗が割れる音が響き、そこの箇所が腫れる。
あれ? 桜井さんってヒーラーでいいんだよな?
「俺よりも力強いヒーラーって……。もっとレベル上げに専念しないとか……。はぁ流石に自信なくなるぜ」
「ぼやいてないで攻撃して頂戴! 今ので鱗が剥がれたから忠利はそこを狙うのよ!」
「了解した! これなら魔法も効きそうだし……これでも食らわせてやる!『アースハンマー』」
「『鎌鼬』」
桜井さんが発破をかけると忠利が鱗の剥がれた箇所に向かって攻撃を繰り出した。
忠利の攻撃は勢いよく地面から円柱状の突起を生み出し相手にぶつけるもの。
先端に細かくトゲが付いていて、アンキロサウルスの尻尾に似ているな。
「よし、当たっ――」
「ぎゅ、あ……」
そんな忠利の攻撃が当たるよりも先に灰人の鎌鼬がファイアリザードの喉をかっ切った。
あの鱗を切り裂く威力。
桜井さんだけでなく灰人もまた更にレベルを上げたらしい。
「ふぅ。結局俺の出番は無しか」
「兄さんが出るまでもないモンスターだったって事は他の探索者でも対応出来そうだね」
「いや、灰人と桜井さんがレベル上げ過ぎてるだけで今のかなり強かったぞ!ま、まぁ時間を掛ければ俺1人でも倒せたけどな。ふぅ。それにしても無事で良かったよ、輝明」
消えていくファイアリザードを見ながら忠利は顔を緩ませた。
忠利って本当にいい奴なんだよな。
今度からはちゃんと連絡しよ。
「忠利が進化の薬を桃先輩に渡してくれたお陰だ。助かったよ。ありがとう」
「へへ、なんか普通にお礼されるとちょっと照れ――」
「みんな!あっちから今度は複数来ますわよ!」
仲間のピンチに駆けつけてきたのか、ぞろぞろと俺達の周りに集まるファイアリザード。
さて、この数だと俺も暴れられそうだな。
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