第262話 多弁
「お主、もしかして自分の主を……」
「別に隠す事でもないか……。そうだ、俺は女王を食った。種の繁栄の為に仕方なくな」
やはりか。
風貌が変わっただけでなく【1】から以前よりも強く強者の雰囲気を感じる。
攻撃力、防御力……全ての能力が向上しているだけならまだしも、スキルまで合併されているとなるとかなり面倒くさい。
我の見立てだと女王は繁殖にばかり気をとられ、戦闘用のスキルを十分に使えてなかった。
それを【1】というシードンの中で最も戦闘に優れた者が保有したとあればこの面倒さがどれくらいのものなのか、よーく分かる。
「周りの奴らも様子が違うようだが……」
「道中生き残りのシードンを集めたんだが、大した戦力にならないような個体ばかり。そこで仕方なく自分の肉片を分け与えたらこのような姿になってくれたのだ。知能は低いが身体能力は【5】以上程度といったところかな」
「自分の肉を食わせるとはまたグロテスクな事をするもんじゃ。だがその割に傷は見えんの」
「女王の自動修復スキルだな。種を繁栄に導くもの、上に立つものが最も重視すべきは生存。それが面白いぐらいに反映されたスキルだ。とはいえ、修復はそこまで万能じゃない。状態異常は勿論、溺れた場合や凍らせられた場合の回復は適用外。それに一瞬で痛みが軽減されるような効果もない。肉を分け与えるのも簡単ではなかったさ」
「随分とペラペラ喋るの。それが勝負の鍵になるやもしれんぞ」
「今の俺には自信があるからな。相手がリヴァイアサンであろうと負ける気がしない」
「そうか。だったらこれも問題なく受けきって見せよっ!」
この姿になってからの『氷結リボルバー』。
魔力の量、質が上がった今威力は先日までとは比べ物にならないはず。
これを防がれるようなら、この戦いは想像以上に辛いものになる。
――バンッ!
放たれた氷の弾は一直線に【1】へと向かった。
【1】に避ける素振りは見られない。
我の言葉通り受け止めて見るつもりなのだろう。
さぁて【1】がどれほど強くなったのか……見せてもらおうではないか。
「派手な攻撃だ。見た目通り威力も高いのだろう。だが……」
「!? 口で、だと……」
【1】は我の放った弾をその歯で挟み、受け止めようとする。
強靭すぎる歯には驚いたが、弾を噛み砕く事は出来んはず。
その弾から発せられる魔力が霧散しなければ、次第に受け止めた【1】の体は凍り始め――
「その魔力は俺の養分。氷を溶かしたのがこの俺であるという事を考えればこんなものが通用する相手ではないと分かりそうなものだが……。リヴァイアサンといえど咄嗟の判断が必要なひりつく実戦経験は不足していると見た」
「なるほど。これは我の天敵だな。しかし我がそのスキル程度で終わるとは思っておらんだろ?」
「ふふ、このダンジョンを制した後おそらく戦場に身を置くことはなくなる。最後の戦いだ。存分と楽しませてくれ!」
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