第253話 安息の地

「おい! セレネ様達が帰ったぞ!!」

「人間も無事だ! セレネ様達がシードンを倒してくれたんだ!」

「待て! 見た事のない奴がいるぞ……あれはメロウ?」


 ほぼ休む事なく移動をしてきた俺達の前にようやく懐かしの集落が見えた。

 集落の入り口にいたメロウが俺達を発見すると、帰還の情報が集落全体に流れたのか、段々と他のメロウ達も集まってきた。


「ふぅ。……みんな、無事帰ってきたぞ」


 集まってきたメロウ達はそれぞれに自分の言いたい事思った事を口にしながらこちらに目を向けていたが、セレネ様の声に疲労の様子がみられると互いに視線を合わせて一呼吸。


 そしてメロウ達の口が縦に一斉に開かれると、全員の歌声が響き渡り俺達を包んでくれる。

 何ともメロウらしい出迎え方だ。

 しかも、疲労がゆっくりと抜けていく。この歌、合唱には癒しの力があるようだ。


「やれやれ、しばらく見ないうちにメロウの数がここまで増えていたとは……。建物もシードンの街と同等かそれ以上……」

「あなたが1人深い層へ向かった後、私は自分の理想郷を作った。もっと強くなってこのダンジョンで1番になりたいとか言ってあなたは1人で出ていったけど、仲間を集う事で得られる強さもあるのよ」

「お互い違う方向で強くなったという事か」

「そういう事ね」


 セレネ様とリヴァイアサンは懐かしむようにしみじみとしながら集落の入り口へと向かう。

 ここまでの移動中2人の関係について聞く事はなかったが、セレネ様とリヴァイアサンは今のメアとトゲくんと同じようにペアで生きていたのかもしれない。


「とにかく今日は疲労があるはずだからみんな自分の家で休んで。1日経ったらまだ生きている【1】と女王をどうするか考えましょう。リヴァイアサン、氷はまだ解けないって事で間違いないわよね」

「それは大丈夫だ。いくら奴らが強いといってもここまで来るのにはまだまだ時間が掛かる」

「じゃあみんな一旦解散。……リヴァイアサンはこの後どうするつもりかしら?」


 集落に足を踏み入れるとセレネ様が合図を発した。

 そうしてメロウ達はそれぞればらばらの方向に散っていき、その親族や友達が個々に出迎える。

 やはり俺を救いに行くという行為は1人1人の周りの人を巻き込んで心配にさせてしまったんだな。

 出来ればお礼をしに回りたいけど……いくら何でも日にちを使い過ぎた。

 それは何もかも全部終わった後だな。


「我は……どうしようかのう」


 残ったのは俺とメアとリヴァイアサンとセレネ様と野次馬達。

 リヴァイアサンはてっきりセレネ様の元に行くと思っていたからこの反応は意外だ。


「もしよかったら私の部屋に来ますか? 輝明も私の部屋に呼ぶ予定でしたし、1人くらい変わりません」

「そうか、それは助かる。流石にこいつと一緒だと息が詰まるからのう」


 え? 俺もう選択しないの?

 いや、行き先があるだけ喜ばしい事なんだけど。


「それじゃあトゲくんを預けた後に部屋に案内します。実は氷の息に魔力をっていうところで色々話を聞きたかったんです」

「そうか。それなら人間の中に氷を使う者もおるようだし、白井石輝明に聞いても一緒――」

「いや、俺は魔法攻撃とかそういったのにはちょっと……」

「そうなのか? 前に氷や水を使う人間を見たのだが……同じ種族でもここまで違うのは面白いな」

「立ち話もいいですけど、私はもう誰かさんの所為で精神的に疲れてですね……。結局トゲくんを進化させられていないですし。実は達成感も薄かったりして、もう限界が近いんです」

「そうかそれはすまんかった。それでは今日は早く休むとしよう。いくぞ誰かさん」

「そうですよねそれって俺の事ですよね。本当ごめんメア」

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