第252話 着地
風を切る音を聞きながら身体はどんどんと地面へと向かっていく。
『瞬脚』も空中では使えないし、『即死の影』の翼には飛行能力がない……。
つまりは無抵抗のままこのまま落下するのを待つ事しか俺に選択はないって事――
「ははははっ!! 何とか逃げおおしてやったわ!! まさか我がここまで無理をし、はしゃぐ事になろうとはなあ!! さぁ、地面に打ちつけられそうなものは吹っ飛ばした張本人であるこの我が受け止めてやろう」
リヴァイアサンは元の姿に戻ると、人一倍早く地面へと落ちていった。
ずしんと音を立てて地面に降り立つと、リヴァイアサンは身体を横に倒しその巨大な身体をマット代わりにしてくれている。
鱗の感じからしてそれでも着地は痛そうだけど。
「シーサーペント共は自分の息で着地の衝撃を和らげるのだ! メロウと白石輝明は臆せず突っ込んで来い!」
「みんな! リヴァイアサンの言葉通りに! でも、体表は思っている以上に硬いはずだから頭と首を守って、出来る人はお尻から着地、或いは受け身をとるのよ!」
セレネ様が指示を促すとメロウ達はリヴァイアサン目掛けて次々とお尻から落ちていく。
見た目はカッコ悪いけど、どの人も落下による怪我はなさそうだ。
「――いっ、てぇ。でも、怪我はない、か。しかもこの鱗なんか弾性がある」
「我が自分の体表の硬度を変える事も出来んわけがなかろう。全員無事だな?」
いつの間にかシャボンが消え、リヴァイアサンの体に着地した俺はジンジンと痛む尻を擦って周りを見た。
何とか無事に生き残ったメロウ達。
気絶していたメロウも回復が間に合ってしっかりと着地が出来たみたいだ。
凍った事によって封鎖された階段空は冷気を放ち、白い煙を登らせている。
元々の濁った水の色はどうにもならないが、気泡もほとんどなくやけに透明感がある氷だ。
「少し近くで見てみるか」
俺はすっとリヴァイアサンの体から降りると、階段に近づく。
遠目からでも中が透けて見えていたが近くで見るとより透明度が高く結構先まで見通すことが出来る。
叩いても息を吹きかけてもこの氷が溶ける気配がない。
どれぐらい持つのかは分からないが、これならかなりの足止めにはなりそう。
そういえば階段通路はもっと暗いものだったはずだけど、明るさを感じる。
この氷、普通の氷とは全然違う。
「わざわざ時間を掛けて力を込めたのだ。普通の氷と同じでは困る。魔力をしかも我の魔力を込めて吐かれた氷の息は通常とは比べ物にならない程の硬度、透明感、輝き、冷たさ、高い維持レベルの氷を精製出来る。いくら【1】といえど1週間は突破出来な――」
――ガンガンガンガン
「……ここまで音を響かせるか。女王と【1】のパワーを見誤っていたかもしれんな。この様子だと4日、いや3日くらいしか持たんかもな」
「じゃあこんなところでうかうかしてられないわね。早く集落に戻るわよ!」
不吉な音を響かせる女王達に一抹の不安を感じながら俺達はようやく帰路に着くのだった。
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