第219話 特別な数字

「【4】のシードン!? もしかしてここのボスはこいつ?」

「僕がボス? あはははははははっ!! 僕がそんな風に見えるの、メロウのお姉さん」


 今までのシードンと比べてどこか陽気な雰囲気のシードンは、メアの言葉に高笑いで返す。


 悪気がある様には見えない。

 ただただ素でメアの発言が面白かったのだろう。


「ち、違うの?」

「違う違う! 僕は地下の檻でメロウと遊ぶ……メロウが出てこない様に見張りをしているのさ。僕はメロウの唄への耐性を持ってるからね、ま、適材適所ってやつだね」


 得意気に説明する【4】のシードン。


 このシードンの言っている事が本当だとして、ここにはそれ以上、【3】以上のシードンがいるのだろうか?

 それとも同じ【4】のシードンがまだいるのか。


「それで君達は仲間のメロウを助けに来たんだろ? 上の階層にはこの階層から抜け出した【5】達とその仲間の群れが醜く争ってるはずだけど、そこも抜けてきてここに来た。仲間の為には命も惜しまない、そんな表情な気がするけど」

「仲間の為には勿論 ……って、あのシードン達はここから――」

「そうさ。逃げたっていうか、逃がした、だけど。普段消している階段も出現させて、こっそり階段の数を減らして……わざわざ回りくどくてめんどくさいとは思ったけど、自分達で育てるよりああやって自発的に争わせるほうが楽って考えらしいよ」


 メアが上の階層という発言を掘り下げると、【4】のシードンはやれやれといった表情で説明してくれた。


 大体俺の考えはあっていたようだな。


「その考えを思いついたのはここのボスなのか?」

「んー、ここのボスと逃がそうって言ったのは違うシードンだよ。ここに派遣されたシードン、僕も派遣されてきたんだけど、僕よりも序列の高いシードン【3】がボス。逃がそうって言ったのはその派遣元、大ボスの【1】」


 俺の質問にも問題なく答えてくれた【4】のシードン。


 敵に情報を伝える事にまるで躊躇が無いのはどういう事なのだろうか。


 ただノー天気な性格ってだけなのか?


「【3】のシードン……。それはあなたより強いって個体がここにいるって事ね。だったら、ある程度セーブしながら戦わないと。無駄なMP消費は出来ない」

「……お姉さん、それは僕の事ちょっと舐めすぎじゃないかな? 【1】から【4】っていう数字はね、他の数字と違って複数が持てないんだ。認められた個体だけが、たった1匹だけが持てる数字。その意味を今から教えてあげるよ」


 【4】のシードンは少し体を横に移動させた。

 すると【4】のシードンから陽気な雰囲気、それどころか姿、気配さえもだんだんと消えてしまう。


 これは俺の『隠蓑』と同じ内容のスキルな――


 「こっちだよ」

 「なっ――」


 声のする方向に慌てて顔を向けると、そこには宙の上に体を半分だけ、出している【4】のシードンの姿が。


 防御も回避も間に合わな――


「ぐっ!」

「クリーンヒットぉっ!」


 俺の腹を思い切り殴ると【4】のシードンは再びその姿を隠した。


 隠蔽と瞬間移動が組み合わさったようなスキル。


 しかも……俺の『透視』がまるで効かないだ、と。

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