第214話 進化の力

「2人ともその姿は……」

「ええ。私もトゲくんも進化出来たみたい。私は、えーっと『メロウプルミエール』、トゲくんの方は――」

「『アクアドラゴン』。蛇に近いシーサーペントからは大分変化したみたいだな。でも……」

「リヴァイアサンになるまでにはいくつかの進化の過程があるみたいね」


 もしかして、と思ったがトゲくんはこれでも目標のレベルには至っていない事がこの進化で分かってしまった。


 とはいえ相当な強さを兼ね備えているのは間違いないようだが……。



 ――すっかり正常に戻った目で辺りを見渡すと、そこは白銀の世界。


 さっきまで元気だったシードン達、しかも【6】のシードンまでもが氷の石像状態。

 白く凍ったその姿の右上には残り僅かになったHPゲージが表示され、その威力の高さをも表している。


 【5】のシードンに苦戦していたようだけど、今のトゲくんなら完封する事も出来そう……もしかして俺より強いとか無いよな。


「一応氷状態がいつ治るのか分からないから取り敢えず残ってるHP位私が削っておくわ」


 メアはそう言って喉元に両手を当てて、謳っているような仕草を見せた。


 すると、振動によって凍ったシードン達はガラガラと音を立てて崩れた。


 俺やトゲくんにダメージが無いのは特定の相手を選択出来るという事。


 しかも選択した相手以外には音が聞こえないらしい。


 こっそり相手にダメージを与えられるという点は俺みたいな職業の人間からしたらとてもそそられる。


「便利だな。その角も立派で……すっかり見違えた。雰囲気はセレネ様に近いかも……」

「そんなセレネ様と比べるなんて恐れ多いっ! でも、まぁ、褒められるのは悪い気がしないわ」


 メアは褒められたことが嬉しかったのか、それとも恥ずかしかったのか、顔を赤らめて尾の先をパタパタとはためかせた。


「それよりもどうする? 流石に上に戻るか? 今の集団みたいなのがまだこの下にいるはず。トップが2人いて争っているのか、1匹の【1】のシードンがシードンという種族を競わせて何かを企んでいるのか、真相は分からないがここから先は今よりも危険になる」

「うーん。メロウの集落の事もあるし、ここから下に行くにしても1度戻って守りを固めるようにとセレネ様に伝達したいところね。でも……」


 メアは振り返って、俺達がこの階層にやって来た場所を見た。


 ワープステーション。

 だが、その全体は凍っておりその機能を保っているかどうか怪しい程だ。


「あれってまだ使えるのか?」

「……。進化してからこの角で魔力を検知出来るようになったんだけど、あれは駄目ね」

「じゃあ階段か。登り階段は……」

「見当たらないわね。もしかしたら、上に行ける方法を減らして、上に行けるワープステーションの価値を高めているのかも……。それで上を求めた争いがああやって……」

「そういった争いを通じてより強いシードンを生んでいるのか。まぁ共食い目的で争うよりも、仲間同士で集団を形成し、その知能の向上も図れる。これがトップの、【1】のシードンによる種族強化戦略」

「でももしそれで自分より強い相手が出てきたら、危なくなるのは自分なんじゃない?」

「そうだな。でもそれを払い退ける自信がある。いや、もしかしたらその状況こそ【1】のシードンの……。はは、悟空並みの戦闘狂だな」

「強い奴と戦う為にこれだけをしてるって事なら私は全く理解出来ないわ」

「俺は……ちょっとだけ分かるかも。と、とにかく、階段を探そう。ここはもう寒すぎる」

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