第211話 メアサイド:まさかの決着
「がっあ……」
【5】のシードンが打ち出した光線を受けながらもトゲくんはジリジリと前へ進む。
身に纏った氷の先端が水の光線によって割れたり、溶かされたりして分厚目になっている箇所にまで当たりはじめると、その衝撃は更に大きくなる。
その衝撃によってトゲくんのHPは減り始め、このままではじり貧、かと思いきや、【5】のシードンの表情が明らかに苦しそう。
小さな氷のドラゴンによる攻撃だけでなく、この光線による反動によって【5】のシードンの身体にはダメージがあるらしい。
「ぶ、おおおおおおおおおおっ!!」
「がっああああああああああっ!!」
両者のけたたましい叫び声が辺りに響き、この衝突が戦闘の終わりを告げるのだと感じさせる。
私に出来るのはただトゲくんを応援する事だけ。
もうちょっと……頑張って耐えてトゲくん。
――バリン。
「がっ!?」
「はぁ、はぁはぁやったか!?」
そう念じた時遂に纏っていた氷が水の光線によって貫かれた。
しかもそれはトゲくんの腹まで貫いたのだ。
トゲくんはパタリと倒れ、纏っていた氷はパラパラと地面に落ちる。
私とトゲくんを繋いでいた氷も同じ様に落ち、私もトゲくんの背中からポトリと落ちた。
水のドラゴンが消えているところを見ると、あともう少しだったのかなと思わせられる。
悔しい。
ここまで、ここまで頑張ったっていうのに……。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、まさかここまで追い詰められるとは……シーサーペント、それに力の一端になっていたであろうメロウ。こいつらは早々に根絶やしにする必要があるな」
【5】のシードンがふらふらと私達の元まで歩いてきた。
小さな氷のドラゴンは消えているが、その身体の一部は凍っておりHPもかなり減少している。
元気な状態であれば私1人でも倒せそうな程の見た目。
「スキルはもう使えないか……。なら直接その頭を踏み潰――」
【5】のシードンは重そうにその足を上げた。
殺される。
そう思い目を瞑る。
しかし、その時はまるで来ようとしない。
私は不思議に思いそっと目を開く。
「くっ。まさかもうここまで押し込まれていたか……」
【7】のシードン数匹の牙によって胸を貫かれる【5】のシードン。
私達が戦っている間に反対の集団がこちら側の集団を抜けてとうとうここまで攻めいって来ていたらしい。
まさかシードンに止めを、命を救われる事になるなんて……。
これも輝明の作戦が活きたって事、か。
「が、あ」
「トゲくん……良かった生きてたのね」
【5】のシードンが倒れ、トゲくんや私に経験値が分配されるとレベルアップしてHPに余裕が出来たみたい。
私もトゲくんも何とか身体が動く。
でも戦うのは無理そう……。
逃げる、しかないわね。
「「ぶもおおおおおおおおお!!」」
眼前には歓喜の声を大量のシードン。
今は私達よりも対象の首をとって勝ったという事に意識が向いているらしい。
これなら逃げられ――
「ぶも?」
そう思った瞬間1匹のシードンがこっちを見て鳴いた。
それに釣られて他のシードン達の視線が私達に集まる。
あ、これ駄目かもしんない。
「はぁ、んっ。はぁはぁ、ふぅー。大分数が減ってるし……トゲくんもメアもレベルアップしてる、よな?」
「してる……って輝明っ!? いつの間に――」
「よし! だったらしばらくは後片付けの時間だ。あ、これポーションな」
「わ……。それより話は最後まで聞きなさいよっ!」
唐突に私達の前に現れた輝明からポーションを投げ渡されると、私はマイペースな輝明に怒りながらも少し安堵してしまうのだった。
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