第210話 メアサイド:光線

「な、なんだこいつらはっ!? は、離れろっ! くそっ!」


小さな氷のドラゴン達を【5】のシードンは手で払い除けようとするが、中々な強度があるようで簡単にはいかない。


その間にも足、腰、腹と増殖する氷のドラゴンは攻撃する場所を拡大させている。


しかも、トゲくんと同様に噛みついた箇所を凍らせ、【5】の体表に生え揃った毛を白く凍らせる。


その所為か、【5】のシードンの動きは鈍くなり、どことなく顔色も悪くなる。


流石に耐性があるのか、完全に凍らせるまでには至らないけど、【5】のシードンに大きな隙が出来た。


今のうちに攻め、いやここは逃げ――


「がぁっ!!」


トゲくんは自分を奮い立たせるように大きく吠えた。


相手は格上で自分は手負い。

身体もどことなく震えている。


それでも果敢に攻めの姿勢を見せ、新しい力で何とか戦況を変えた。


もしかしたら、トゲくんは今この【5】のシードンとの戦いの中で相手への恐怖以上に自分の成長に喜びを感じているのかもしれない。


その背中からはまだ戦いたいっていう思いが伝わって来る様な気さえする。


「……ここでまた強くなりたいのね、トゲくん」

「がぁ……」

「分かった。私も覚悟を決めたわ。思う存分戦いなさい。もし駄目だったら……責任とって主人である私も一緒に死んであげるわ。それならトゲくん、あなたも寂しくないでしょ?」

「がぁっ!!」


私の言葉を聞くと、トゲくんは真っ直ぐ【5】のシードンに向かっていった。

私のスキルでいくらか回復したとはいえまだ身体が痛むのかトゲくんの動きは鈍い。


それでも気迫だけは凄まじいものがある。


「くっ!」


【5】のシードンは力強く右手を水のドラゴンに向けて翳した。

すると、水のドラゴンの中を流れている水の勢いが増し、完全に初めに出していた氷のドラゴンを完全に砕いた。


そして、今度水のドラゴンはトゲくんの元へと身体を伸ばす。


操作する側の【5】のシードンが弱っているからなのか、こいつ自身も動きが鈍くなっている様だが、それでもこれをかわせる程今のトゲくんには余裕がない。


「がっ!?」

「トゲくんっ!」


水のドラゴンはトゲくんの腹な噛みついた。

トゲくんの腹からは大量の血が流れ、地面を赤くする。


普通なら動けなくなってしまう様な致命傷だけど、トゲくんはその状態のまま【5】のシードンの元へ。


その歩みは止まらない。


「この死に損ないがあっ!」


【5】のシードンは大きく口を開く。

その奥には何かが青く見える。


これは何かを打ち出そうとしてる?


「トゲくん! 強力なのが来るわ!! 氷の息で私ごと凍らせて……そのまま突っ込むわよっ!」

「があっ!」


私の命令に嬉しそうに答えてくれたトゲくんは直ぐ様氷の息を吐き、氷で全身を覆った。


しかし水のドラゴンはそれでも噛みついたまま残っている。

流石に今のトゲくんにこれを凍らせる程の力は残っていなかったみたい。


そして案の定、【5】のシードンはその口からまるで光線の様に煌めく一閃となった水を吐き出したのだった。

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