第206話 メアサイド:掘る
「【5】のシードンはまだ逃げたりする様子はなさそう。でも、これ以上は近づくのが難しいかも」
岩陰に隠れながら【5】のシードンと【6】のシードンがいる後方まで何とか移動してきたけど、ここまで来ると【7】以下の有象無象のシードンの姿は少ない。
とはいえ、中央付近のシードン達がぐいぐいと押し込まれているし、この辺りがそのうち戦場の中心になりそう。
「今はまだシードンの集団に紛れて攻める事すら出来ない。ちょっと我慢して、中央の均衡が完全に崩れてから動き――」
状況を鑑みて、取り敢えず待機する様にトゲくんに命令しようとすると、少し離れた場所で不自然な動きをするシードン数匹に気付いた。
「何やってるのかしらあれ」
自集団が有利っていう状況だから、隙を見せても直ぐに攻撃を受ける心配はないのだろうけど、やってる事が明らかにおかしい
1、2、3、4、5匹のシードン達は頭を地面に突っ込んで、脚をバタつかせている。
もしかしてあいつら中に潜ろうとしてる?
【7】が見せた息をあの中で使っているのか、潜っていくシードン達とは反対に大量の砂がドサドサと掻き出されていく。
どこに向かっているのかは大体検討が付く。
だったら、私達はこれを利用する他ない。
「トゲくん。全速力で突っ込むわよ」
「がぁっ!!」
私とトゲくんは周りを注意して見渡すと、5匹の掘り進める内の一つに突っ込んだ。
「氷の息」
「がぁっ!!」
後を追いかけてこられても困るからトゲくんに穴の入り口は閉じてもらって……これで【5】の元まで進めるわね。
◇
「中は広く掘られてるけど大丈夫?」
「がぁ……」
シードンの堀進めるこの穴はシードンが通れるだけの広さは勿論、砂を掻き出さないといけない分それ以上の広さがある。
それでも空気が薄くて、中々進むのはしんどい。
早く出口に付いてくれないと、トゲくんがグロッキー状態になってしまう。
「シャボンは水の中でしか効果はないし。頑張ってトゲくん」
「がぁ――」
トゲくんを鼓舞すると、道の先から風が流れてくるのを感じた。
多分だけど堀り進んでいたシードンが地上に出たって事だと思う。
「開通した? 急ぐわよトゲくん」
「が、あっ!!」
「きゃっ! トゲくん!?」
私が先を急ごうとすると、トゲくんは穴の中でくるりと器用に旋回して尻尾を私の体に巻き付けた。
そして、そのまま氷の息を全力で吐き出す。
猛烈な冷気が体を包もうとするけど、それよりも速く私達の体は氷の息を全力で吐き出す事による反動でゴールまで推進する。
「出口っ!!」
「が、あ!!」
外からの光が見え、私達はその勢いのまま地上に出る。
勢いよく飛び出した事で数メートル上空まで飛び上がり、辺りの状況が見渡せた。
驚くような【6】シードン、それと対面している穴を掘り進めたであろう4匹のシードン。
それと……。
「あれ? 何であいつは倒れてるの?」
1匹のシードンを抱いたまま地面に横たわる【5】のシードンの姿が目に映ったのだった。
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