第199話 【6】

「羽での攻撃よりか近接の方が外れる可能性が低いし、勘づかれる前に狩れるか」


 前線のシードン達、特にメアに頼んでおいた【5】のシードンが統括しているであろう集団を俺は積極的に減らす。


 すると、戦況にも変化が見え始め、片一方の集団がガンガンと前線を押し上げる。

 対してもう片一方は俺達、見えない敵の存在による混乱と押し込まれた事での焦りで戦闘に精細を欠く。


 優勢な集団にも俺達は攻撃をしているが、自分達が優勢な事が分かっているのだろう、こちらはむしろさっきまでよりも威勢がいい。


 何というか計算通り過ぎて怖いくらいだ。


 あとはもっと集団全体が敵寄りになって、調子に乗った頭の首をとるだけ。


 取り巻いてる奴らは……まぁ分身に任せるか。


「それと、やっぱり場を乱すにはもっと強い奴を倒さないとだよな」


 俺は集団の後方で大声を上げる数匹のシードン達を見た。


 右左中央に2から3匹で散っているそのシードン達、【6】は明らかに冷静を欠いている。


 全員を倒す事も可能だろうが、それだと今戦っている【7】から【10】のシードンが統制出来なくなり、予想外な動きをするかもしれない。

 

 だからまずはネックになっているであろうあの中央の【6】のシードン3匹を殺る。


「『瞬脚』『瞬脚』――」


 俺は『瞬脚』を連続で発動させて、一気に【6】のシードン達に近づいた。


 数は3匹。


 大きさにそこまで違いはないものの、どこかで手に入れたのか、防具を身に纏っている。

 急所である右胸がその防具で隠されている為まずは防具の破壊をしないといけない。


 だから1度に複数のシードンに攻撃を仕掛けると2撃目の本命の攻撃の際に、適当なカウンターを放たれて足元を掬われるかもしれない。

 まずは1体ずつ、確実にいこう。


「――とった」


 3匹の内1番真ん中の腕を上げて指揮をとっていたシードンに大きな隙があったので、俺はまずそのシードンの懐に潜り込んで、胸の装備に見えた急所をジャマダハルで突いた。


「もう1発――」


 装備はあっけなく壊れ、俺はシードンがカウンターの態勢に入る前にもう片一方のジャマダハルで本体にある急所を狙おうとした。


 しかし……。


「ぶもっ!?」

「2重!?」


 胸を守る装備のしたのはさらに薄目の鉄板のようなものが隠されており、2撃目はそれを破壊するのがやっと。


 その間に【6】のシードンは自分に起きた異変に反応し、咄嗟にどの強靭な腕を振った。


「くっ! 『回避の加護』が……」


 腕が当たる直前念の為に発動させていた『回避の加護』が発動し、俺はシードンの背後から少し離れた所に移動した。


 ただもう一度急所を狙うには結局正面に戻らないといけない。

 注意力が高まってる状態で正面から仕掛けるのは難――



 ――ドンッ!!



 俺が攻めあぐねていると、【6】のシードンの右胸に槍のようなものが突き刺さり、【6】のシードンは地面に倒れた。


「――まさかあいつか?」


 槍が飛んできたであろう方向を見ると肩をぐりぐりと回し、やれやれといった表情を浮かべる【5】のシードンの姿があった。


「俺の事が見えてはいないだろうけど、存在は完全に把握され――」


 自分の存在に気付かれ、後の目標の達成が難しくなった、それどころか、直ぐに俺や分身をおびき出すような戦術がとられるかもしれない。

 そう一瞬思った時、槍を放ったであろう【5】のシードンはこちらに向けにやりと笑みを浮かべると、再び岩に腰かけた。


「あいつ、俺達すら駒にするつもりか? 気に食わないが……今はその驕りに乗っからせてもらうか」


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