第200話 交渉
「「「ぶもっ!?」」」
倒れた【6】の指揮下にあったシードン達が急に指示が途絶えた事に対して反応を示す。
それをカバーするように残った【6】のシードン2匹は身の回りを警戒する事を後回しにして、そのシードン達に声を掛ける。
だがその判断は悪手。
俺は心の中で分身達に連続で攻撃を仕掛けるよう声を掛けると、そのまま隙だらけの【6】シードンの胸の装備をジャマダハルで突いた。
装備が熱い事は知っていたから撃ち込みは貯めずに短く、隙が無いように。
まるでボクシングのジャブの様に。
「よしっ」
俺が完全に胸の装備を破壊すると、そこでようやく【6】のシードンがカウンターを打ち込もうと腕を振り上げる。
しかし、反撃する間もないまま【6】シードンの胸は大きく凹み、そのまま地面に倒れ込む。
姿は見えていないが、状況を見ていた分身がタイミングよく攻撃を仕掛けてくれたのだろう。
「ぶもぉっ!!」
しかも、残っていたもう1体の【6】シードンは、いつの間にか毒に侵されそれだけでなく、攻め入ってきていた反対側の集団のシードンに一撃を貰っていた。
慌てて指揮下にいるシードン達がそのシードンの処理をするものの、【6】シードンのHPは刻一刻と減り、もはや助かる見込みはなさそうだ。
そんな【6】のシードンを守るように取り囲む支配下のシードン達だが、今の状況はそんな事をしている程暇はないはず。
なぜなら、勢いに乗った反対側の集団がさっき【6】シードンを攻撃した個体を皮切りに一気に攻め入ってきたのだ。
こうなってしまえばここでの俺と分身の仕事は十分に果たしたと言ってもいい。
「行くか、頭を狩りに。『瞬脚』『隠蓑』」
これだけ攻め込まれて敵が流れ込んでいる状態ならメア達でも【5】のシードンは高確率で倒せるはず。
その間に俺は俺で仕事をこなす。
俺は『隠蓑』を重ね掛けし、『回避の加護』のリキャストタイムを待ちながら『瞬脚』でその場から移動を開始したのだった。
◇
「――身構えてるな。取り敢えず、『回避の加護』」
【5】のシードンの元に辿り着くと、俺はスキルをかけ直してそろりそろりと【5】シードンの元に近寄る。
横には側近のような【7】のシードンもいるな。
攻め込めている状況の中、こうして移動する様子が無いのはきっと俺を出迎える為だったんだろう。
一気に攻めるのは危険な気がする。ここはゆっくりと――
「――おい、誰だか知らないがお望み通り隙だらけだぞ。隠れていないで出てきたらどうだ?」
【5】のシードンが人間の言葉を発した。
知能が発達した個体ならそれ位はするだろうと思っていたが、やはりか。
ただ思ったより日本語が流暢だな。
「ふう……。俺は今お前を攻撃するつもりはない。理由はどうあれ、俺達の軍に加担してくれた事に対するお礼、それと交渉がしたいんだ」
【5】のシードンは両手を上げながら無抵抗な事をアピールする。
だが、俺はそんな【5】シードンに対して返事をするつもりは毛頭ない。
「返事なし、か。なら勝手に話させてもらうが、俺は【1】の奴、種族のトップを超える強さを手に入れてこのダンジョンを支配したい。それには強い仲間が必要だ。頼む、目的が達成された暁にはお前に好きな階層をくれてやる。俺の配下、ついては――」
――ぼと。
「こんな雑魚ではなく、お前に俺の腹心として側にいて欲しい」
【5】のシードンは【7】のシードンの首を素手で跳ね飛ばすと、その返り血で赤く染まった頭を下げて懇願するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。