第185話 氷の刺
切り裂かれた足から大量の血が噴き出し、トゲくんの身体を真っ赤に染め上げる。
しかしそんなことなど気にする様子もなくトゲくんはグランドタートルの首元まで飛び上がるとその鋭い牙を押し当てた。
ゆっくりと刺さっていく牙の様子からして首の強度も中々らしいが、3分の1位刺さりきった今の状態なら簡単に振り落とされる事もな――
「がっ!?」
足に大きな傷を負い、首に牙を刺され、もう打つ手無しだと思った矢先、グランドタートルはその首を頭ごと甲羅の中に勢いよく戻した。
余りにも早い収納だったせいで、トゲくんは逃げる事も出来ずそのまま甲羅の中に。
甲羅の中がどうなっているのかは分からないが、圧死、窒息死なんてこともあり得るかも……。
「ヤバそうだな。透――」
≪透視≫を発動してトゲくんを救出しようとすると、グランドタートルは手足と尻尾も甲羅にしまい、完全に防御態勢をとった。
まぁそんなことをしても無駄なんだけど。
「《透視》」
グランドタートルの急所は尻尾の付け根と腹部分。
腹部分が隠れているから1回ひっくり返さないといけないのは面倒だな。
「メア、腹部分を攻撃したいから協力して一緒にひっくり返そう」
「わか、きゃっ――」
メアと一緒に近づこうとすると、グランドタートルの頭、手足、尻尾から一気に冷気が噴き出した。
そしてその冷気は次第に形を作り、辺りには氷の結晶が散らばり始めた。
バキっ。
その数秒後、甲羅の割れる音がするとグランドタートルの背中から一本の氷の刺が現れた。
「がぁっ!!」
その後少し籠ったトゲくんの声が聞こえると、次々とグランドタートルの身体の内側から氷の刺が現れ、あっという間にHPを0にしてしまった。
だが、グランドタートルの身体は消えることなく、その場に残り続けている。
この状態はアルジャンやルージュがモンスターを食べる時と――
ぶち。
肉が引きちぎれる音と同時にグランドタートルの頭部分からトゲくんの尻尾の先がニョロっと飛び出したのが見えた。
ずるずると尻尾は出続け、遂に顔が見え始めた。
トゲくんの顔は氷で覆われ、角は何故か短くなっている。
なんというか、生え変わったばかりって感じがするな。
「が、あ……」
「うっ。ちょっとグロいわね」
顔を完全に露わにしたトゲくんの口には表面だけが凍ったグランドタートルの頭が咥えられていた。
雑に千切られたその切断面は何ともグロい。
「それにしてもあの巨体を1人、いや1匹で倒しきるなんてな」
「まぁこれぐらいは倒せないとここから先に連れていくのも不安だから。あ、それ、ちゃんと全部食べるのよ」
「がぁっ!」
メアが指示するとトゲくんは戦闘の疲れを見せることなく、グランドタートルの頭を割ってその中に顔を突っ込むと楽しそうに食事を始めるのだった。
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