第168話 リヴァイアサン
「そんな事言って……本当は身体目的ななんじゃ――」
「「身体目的?」」
「あの、子供達の前なんで……」
女性ははっとした顔で口に手を当てた。
その辺のモラルはちゃんと備えているようだ。
「……。あなた達の目的が私達じゃないのは分かったわ。でもあなた達が帰ってからどんな人間に私達の事を喋るか分からないわ。だから――」
「待ってくれ。今すぐ俺達を信用してくれとは言わない、けど記憶を奪うのは待ってくれ。暑さ対策用のアイテムさえ手に入れたら好きにしてくれていいから」
再び歌い始めようとする女性に対して俺は慌てて声を掛けた。
隙あれば歌いだそうとするのはどうにかしないと……。
「……」
「取り敢えずポーションに帰還の魔法紙と……アルジャン、ルージュ。武器になってもらえるか?」
「「うん!」」
俺はアイテム欄から帰還の魔法紙とポーションを置いて、ジャマハダル状態になった2人を女性に手渡した。
こっちが無害なのを証明する為だ。
アルジャン、ルージュ、しばらく辛抱してくれ。
「……はぁ。分かったわ。アイテムを手に入れるまでだからね。それと各階にいる仲間に事情説明出来るっていうのもあるし、一応私もついていくから」
「やっぱり仲間がいるのか」
「ええ。偵察として決まった階層に仲間が配置されているわ。私はこの階層を担当していて、上の階層程レベルの低い仲間が偵察として働いているの。人間が入ってきたらスキルで報告、人間の状態次第ではその場で応戦、スキルによる排除を試みる事になっているの」
「疲れていたところを狙われたってことか」
「ええ。それに上で仲間が使ったスキルの効果がここに来て効いてきたみたいだから。私達の持つスキルは催眠作用もあるから」
「この階層で眠気を感じたのはスキルの所為でもあったのか」
ここに来るまで見てきた陰影はメロウの偵察隊だったのか。
確かにシーサーペントにしてはサイズが小さい陰影だったな。
「そういえば、シーサーペントと一緒に海の中とか危なくないのか? あいつ結構強かったぞ」
「大丈夫よ。シーサーペントだけじゃなくて何種類かのモンスターは先輩のメロウがスキルで手なずけていて、あなたが倒した子は私に割り振られた戦闘用の1匹。貰ったばっかりでまだまだ強くしていくはずだったんだけどなぁ……」
女性はこちらを睨みながら、ため息を吐いた。
そんな風に見られても最初に攻撃してきたのはそっちって事だろ。
正当防衛は許されるべきだ。
「……それで暑さ対策のアイテムだったわね」
「ああ。それさえ手に入ったら記憶を消してもらっても構わない」
「暑さ対策のアイテムの存在は知っているわ。これを少し見てもらってもいい?」
女性は手を後ろに回すと、どこからともなく小さくて青い球体を取り出した。
それ一体どこに隠してたの?
「これはシーサーペントのドロップアイテム。ただ残念ながらこれにはまだ暑さをどうにかする効果はないわ」
「まだ?」
「シーサーペントは敵を倒して、捕食して、レベルを上げて、それでこの『氷冷留竜玉』を育てるの。そしてこれが一定まで育つとそういった効果を持つ」
「ていう事はそれだけ強いシーサーペントを倒さないといけないのか」
「そこまでの個体は進化して姿と名前を変えているわ。その名は『リヴァイアサン』。このダンジョン最強のモンスターよ」
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