第157話 イミテーション
「イミテーションスネーク20階層、左でラミア101階層から199層、レッドラミア201階層~399階層、エキドナ550階層か……。それにしても深すぎる」
「20階層でヘトヘトのあなた達じゃ厳しいかもね。多分だけどあいつはそれよりもっと深い階層にいると思うけど」
俺達が快適な部屋でエニスさんが差し出してくれた麦茶を飲みながら絶望に打ちひしがれていると、それを嘲笑うようにエクスが話し掛けてきた。
ずっと一色虹一と行動しているエクスからすれば、俺達がこんなに早く戻ってきた事がおかしく感じるのだろう。
「とにかくあの暑さですわ。あれをどうにかしない限りもっと深い階層まで進むのは絶対に無理ですわ」
「あー確かにここのダンジョンは殆どの階層が信じられないくらい暑いわよね。武器の私でもあいつのスキル無しじゃキツかったわ。ダンジョンって殆ど走って移動するでしょ?その時にどうしても呼吸がねぇ」
「対暑さスキルなんてものがあるのですわね……。ってダンジョンを殆ど走って?」
「え? ダンジョンの移動は走るのが基本でしょ? レベル上げするにしても目的地以外はスルーだし……」
思えば猩々緋さんも移動は凄まじく早かったし、上位の探索者はそれが普通なのかもしれない。
そもそもエキドナがいると分かった550階層までとろとろ進んでいたら一体いつ迄かかってしまうのか……。
そんな間に最悪椿紅姉さんは……。
「ま、まぁ走って進む事に関しては頑張り次第としまして、私も灰人もそんな都合のいいスキルを持っていませんわ。白石君はどうですの?」
「残念ながら俺も持ってないです」
「はぁ、そうですわよね」
八方塞がり。
折角一色虹一のいるダンジョンを見つけて、しかも最大の目的であるエキドナの居場所まで分かったっていうのに……。
「『蛇の寝床』の暑さは20階層までの比じゃないわ。対策は必須よ」
「……そういえば、その『蛇の寝床』っていうのはダンジョンの名前ですか?」
「100階層にある左右の分かれ道を分かりやすく『蛇の寝床』と『蜥蜴の寝床』って言い分けてるだけ。寝床っていうのはリザードマンの住みかがあったりもしたからそれにちなんでね。あまり深い意味はないわ」
「そうだったんですね」
「それより暑さ対策ね。私がパッと思い付くのは2つ。1つはスキルを持つ人に予めスキルをかけてもらう。もう1つはアイテムね」
「アイテム、ですか」
暑さ対策のアイテムか。
ありそうではあると思っていたけど、本当にあるんだな。
そんなの夏に売り出したら絶対ヒットするだろうけど、出回ってない事を考えると入手難易度は高そうだ。
「探索者協会の保有するダンジョン『海辺の唄』で以前あいつが入手した事があったわ。すぐに誰かにあげちゃったけど。私としてはあんまり他の探索者をこのダンジョンに関わらせたくないし、存在を匂わせる事もしたくないの。だから……」
「アイテムの入手ですね……分かりました。情報ありがとうございます。灰人と桜井さんもそれで――」
「先に言っておくとあのダンジョンはA級以上限定よ」
釘を刺すように放たれたエクスの言葉に灰人と桜井さんは表情を歪ませたのだった。
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