第126話 処刑巨剣と250万経験値

「なにそれ?」

「処刑巨剣エクスキューショナー。こんなだけど結構強いよ」


 一色虹一が取り出した1本の剣を見てアダマンタイトスライムは驚いた表情で呟く。


 その呟きに一色虹一は苦笑いで返答する。


 『こんな』。

 それは巨剣の見た目があまりにも錆び過ぎているから発せられた言葉だろう。


 剣は両刃の大剣でその大きさは2メートルくらい。

 

 錆びついている所為か、首を刎ねる処刑用の剣というよりハンマーとかそれの見た目に近い。


「こんなって言うなら世界で一番キュートでつよつよな私をはーやーくピッカピカに『進化』させなさい。それにあなたはいっつも私をして無欄に入れっぱなしで――」


 女性の声。

 桜井さんの声ではないし、探索隊のメンバーは喋れる状態じゃない。


 という事は……剣がしゃべったのか?


「悪かったって!! ……これだから使いたくなかったのに」

「今なんか言った? 言ったわよね?」

「い、言ってません!」

「ほーう。あなたが私に嘘をつくなんてね。偉くなったものね……。そこに座りなさい。今お説教をしてあげる」


 女性の声に凄みが増した瞬間剣が白い光に包まれた。

 

 光はうねうねと姿を変えるとあっという間に人の姿に。


 ダメージジーンズに白いTシャツという服装の女性で顔はキュートというよりファンキーの方が正しい気がする。


 それにTシャツの裾を結んでいるところがちょっと古臭い。


「あのぅ、説教は後にしてもらえ――」

「あ?」


 S級1位の肩書が嘘に思える程一色虹一は謙虚になった。

 これはこれで面白いし、しばらく見ていたい気もするが……今はそれどころじゃない!


「ばーか。隙だらけだよ」


 2人のやり取りを隙とみたアダマンタイトスライムが凄まじい勢いでショルダータックルを仕掛けていたのだ。


「危ないっ!!」


 俺が叫んだところでもう遅い。

 アダマンタイトスライムの攻撃は剣にクリーンヒットしたのだ。


 人間の姿をしていても材質は変わらないようでその音は、金属が叩かれた時の甲高いものと同じだ。


「ははははははははっ!! こっちを無視して2人で仲良くしゃべってるからこんな目に――」

「あ? 誰あんた?」


 攻撃に手ごたえを感じたのか、アダマンタイトスライムは高らかに笑うがその様子を見た剣の視線は冷ややか。

 

 その視線に俺まで恐怖を感じる。


「な、なんで? なんでなんでなんで!!」


 アダマンタイトスライムはまったくダメージが入っていない剣に違和感と苛立ちを感じたのか、今度は素手で殴打を始めた。


 だが、その攻撃のどれもがまるで効いていないのか剣は声を上げる事も避ける事もしない。

 変化があるとすれば目つきが更に険しくなったことくら――


「あーっ!! 鬱陶しいっ!! 説教をしている最中でしょうがあああああああぁぁぁ!!! 虹一っ!!」

「へーい」


 一色虹一は軽い返事をすると、女性の姿から元に戻った剣を握り、アダマンタイトスライムの胸部分を覆うダイヤモンドスライムへその刃を当てた。


 刃が当たるとダイヤモンドスライムの刺刺しい表面は浅くだが抉れ、鬱陶しいキラキラは著しく鈍くなる。


 都合のいいことに、その攻撃力に驚いたアダマンタイトスライムは隙だらけ。


 俺は考えるよりも早く駆け出し、思い切って一色虹一とアダマンタイトスライムの間にジャマハダルを突き出す。



 急所までもう少し。

 一色虹一はそんな俺に気付いたのか追撃しようとはせず、剣を止めた。


「くっ!」

「届いたっ!!」


 アダマンタイトスライムは急いで身体を翻そうとするが、もう遅い。


 俺が胸部分に張り付いたダイヤモンドスライムの急所を貫くと、見事に『即死の影』が発動してくれたのだった。



 +2500000



『レベルが90に上がりました』

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