第125話 鎧
「ありがとう。悪いけど君はもうちょっとここにいてくれるかな?」
円の中から現れたメタル系スライムはアダマンタイトスライムの命令に従うように寄り添う。
今までシルバースライムやマジックキャンセラースライムが絶妙な場所に居て、図ったかのように動いていたのもこの円による召喚が原因らしい。
唐突な出現だった事もあって、急所を急所を突く事が出来ない上、逆に攻撃を防がれた事で腕に反動ダメージを受けてしまった。
腕がじんじんと痛む。
今までこんな事はなかったのに……。
「それだけあれが硬いってことだ。『ダイヤモンドスライム』。まさか最下層のボスまで使役出来るなんて、いやぁ驚いた」
一色虹一が呆れるように声を発した。
それにしても『ダイヤモンドスライム』か。
ドロップ品を換金したら一体いくらになるのだろう。
というかなんでこの人は最下層のボスを知ってたんだ?
「おっ!やっと動けるようになった。こいつらに装備無しで戦うのは危険だったな。 さて……お前、俺の鎧になれ!」
ナチュラルスタンの効果が切れたのかアダマンタイトスライムは腕を回しながら体を確認する。
ナチュラルスタンについてよく分からない事ばかりだが、この様子を驚くようでそれでも広角を上げる一色虹一の顔を見るにこの状況は相当イレギュラーな事らしい。
「きゅっ!」
命令するとダイヤモンドスライムは可愛らしい声で鳴き、キラキラと輝く体を変化させながら、アダマンタイトスライムの体にへばりつく。
「うーん、中途半端だけど仕方無いか。呼び出しのコスト高いし……」
アダマンタイトスライムの体にへばりついたダイヤモンドスライムはその形を固定させ、鎧へと成った。
質量的な問題からなのか腰、胸、頭の一部分以外は覆えていないようだが、色合いとしては丁度良い。
そして何よりこの鎧、見事に急所を隠している。
中途半端と言いつつも十分な機能を有しているのだ。
しかもダイヤモンドスライム自身の急所は表面がキラキラと輝き過ぎて分かりずらい。
「急所が隠れた……」
「急所どころか体の多くを隠されちゃナチュラルスタンも入らんよ。って事で取り敢えずあの鎧を剥がすとすっか!」
一色虹一はそう言いながら相手の懐に入った。
アダマンタイトスライムはそんな一色虹一を鞭のようにしなる腕で捕らえようとする。
しかしスピードは一色虹一が上。
一色虹一は攻撃を全て紙一重で避け、逆に拳がダイヤモンドスライムの鎧へと向ける。
「つっ……」
拳が当たると鎧が一瞬ピクリと動く。
ダメージはあるようだ。
だが、ダメージがあったのは一色虹一も同じ。
鎧の表面にある細かい突起が拳に刺さったのだろう。
痛そうに拳を擦っている。
「これは流石に素手じゃ無理か……。あいつを使うの大変なんだけどなぁ」
一色虹一はぶつぶつと呟きながら、アイテム欄を開くのだった。
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