第104話 『ディバインシールド』

「はぁ、んっはぁ、ふぅ。白石君すみません、『挑発』の効果が思ったより早くきれてしまったみたいです」


 俺が攻撃を防ぎきるといつの間にか俺のそばには猩々緋さんが立っていた。

 あの攻撃を防ぐために俺の元に全力で移動して来てくれたらしい。珍しく呼吸が乱れている。


「大丈夫です。それよりも猩々緋さんはそこにいる刀の人を安全な場所へお願いします」

「でも一人じゃ流石に――」



「うがぁっ!!」

「『アイスファルコン』」



 猩々緋さんと話をしていると、こっちの事情などお構いなく桃ちゃんはスキルを発動させ、柿崎さんは複数の腕の中の1本とその手に持つ剣を振りかざした。

 

 すると十数匹の氷で出来た鳥と複数の火球が俺の眼前を埋め尽くす。


「お願いします」

「……分かりました」


 猩々緋さんは俺の顔をじっと見つめると刀の人を抱きかかえ、急いでその場を離れた。

 説明はしていないが、猩々緋さんは俺の様子がさっきとは違う事を瞬時に感じ取ってくれたらしい。


「『瞬脚』」


 時間が惜しい。

 俺は女性を再び背に移すと2人が仕掛けるよりも先に、攻撃へ打って出た。


 それに合わせるかのように氷の鳥と火球も宙を凄まじい速さで飛んでくる。

 だが俺は前方から飛んでくるそれらを避けることなく突っ込む。


 無情にも飛散する氷の鳥に消えていく火球。


 まさか自分達の攻撃がここまで効かないと思わなかったのか、桃ちゃんと柿崎さんはその表情を歪ませながら、一歩後退する。


「『ミラージュミスト』」


 自分達の身に危険が迫っていると理解したのか、相手側に居た女性が不思議な色合いの霧を発生させた。

 一先ずこちらの動きを封じて、勢いを殺そうというつもりなのかもしれないが、残念。俺にはこんな霧は効かない。


「《透視》」


 俺は念のため《透視》を重ね掛けさせ、相手の位置を確認する。

 前方に3人。少し離れた所に1人が移動中。


 おそらくサポート型のスキルを持った人が距離を取ろうとしているのだろう。

 回復やバフをかけ続けられるのは厄介だし、まずはこれを何とかするとしよう。



「『グランドパイソン』」



 俺がサポート型の女性に狙いを定めると、それを阻止するかのように目の前の地面が隆起し、ヘビの姿となって俺の前に立ち塞がった。

 氷の鳥や火球、それにこの蛇。

 鬱陶しいが魔法攻撃力が未だ0に俺にとっては、そのスキルは羨ましいとも思える。


「まぁ、今の俺には効かないんだけど」


 俺は土の蛇の顔面部分を蹴り飛ばし、邪魔な火球と氷の鳥を素手で撃ち落とすともう目の前まで迫ったサポートの女性にジャマハダルを突きつけた。


「ひっ!! 『クレイシー――』」

「『ディバインシールド』」


 咄嗟に地面を隆起させ、土の壁を張ろうとするサポート型の女性だったが、その壁は足元くらいまでしかせり上がらず、中途半端な形で止まってしまった。


「防御スキルの一部はこうして発動しきる前に止める事も出来るの。だから思う存分戦って!」

「……ありがとうございます」


 どうやらこれは背負っていた女性のスキルによるものだったらしい。

 

 俺は女性に礼を告げると、もう腰が引けている女性の急所にジャマダハルを突き刺し、そのまま毒で犯した。


 毒により飛び出した女性に寄生していたシルバースライムはさっきの刀の人よりも更に大きい。

 しかし強さに変化はなく、あっという間にそれも倒す。


『レベルが85に上がりました。新スキルを獲得しました』


 頭に流れるアナウンス。

 取り敢えず、俺はそのアナウンスを聞き流しながらサポート型の女性にポーションを飲ませる。


「さて、あと3人か。『隠蓑』」


 時間も残りわずか。

 俺は『隠蓑』を発動させると、アイテム欄からスルースライムゼリーを取り出し、一気に畳みかけに入る準備を整えるのだった。

 

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