第73話 レシピ
『レベルが70に上がりました。スキル【
疲労と水分の摂り過ぎで苦しい俺は、その場に座り込み、いつものアナウンスに耳を傾ける。
なんだかんだレベルは70。他の探索者、特にA級・S級がどれだけのレベルかは分からないが、自分もそれなりのレベルまで上がってこれたんじゃないかと思う。
骨刺鎧ヒポモスの膨大な経験値、それにこの部屋にいたファングヒポモスの群れの経験値。
俺みたいなギリギリの戦闘をするようなレベルじゃなければこの隠しフロアは経験値獲得に特化したボーナスゾーンだったんだろう。
結果として俺も全部倒しきれたからボーナスゾーンみたいなものだったと言えなくはないが――
「……あそこ、まさかモンスターか?」
少し落ち着き周りを見渡していると、少し先で砂がゆっくりと盛り上がり始めた。
大きさは通常のスライム2、3分ほど。そんなに大きな盛り上がりではない。
「急所……が見えない。モンスターじゃない?」
俺は目を細めて少し先のその盛り上がりを見つめた。
モンスターであれば≪透視≫の力で赤い点が浮かび上がるはずだが、それがどうも見当たらない。
「確認するか」
モンスターであるかの所為が限りなく0に近いと思い、俺は恐る恐るその盛り上がりに近づく。
序でに骨刺鎧ヒポモスのドロップアイテムの回収も行いながら一歩一歩慎重に慎重に。
さらっ。
ある程度近づいたところで砂の盛り上がりが崩れ始め、その中に何かが見え始めた。
一瞬ビクッとしてしまったが、害があるものではなさそうだ。
「これは、宝箱?」
砂の中に見えたのは金色に光る小さめの箱。
ローグライク系のゲームではよく見る光景だが、実際のダンジョン探索で宝箱を見るのは初めて。
というかそういうものがこの世界のダンジョンにもあったという事実に驚きだ。
俺は砂を両手で退かしつつ、宝箱に触れた。
鍵穴は特になく、簡単に開けられそうだ。
「ミミックっていう事もあるか?」
不用意に宝箱を空けて殺されたのはRPGではよくある事。
念のため『回避の加護』のリキャストタイムを待ち、それを発動してから宝箱を開けた。
「2枚の魔法紙と……これは?」
そこに入っていたのは帰還することの出来る緑色をした魔法紙と何かが書かれてある魔法紙。それと指輪でも入っているかのようなおしゃれで小さい箱。
俺はとりあえず緑色の魔法紙をアイテム欄に突っ込み、もう1枚の魔法紙に目を通す。
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スキル:『錬金』所持者用レシピ
・黄金鱗×虹光石=金虹ボトル
・エキドナの唾液×セイレーンの汗=妖精の雫
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『錬金』というスキルについてもよく知らない上に、どのアイテムにも全く見覚えはない。
ただ、こんなところに、しかも宝箱に入れられていることを考えると相当レアなものなんだとは思う。
探索者協会に売ってしまうのは流石に勿体ないか……。まぁ、帰ってから忠利に見てもらうか。
「さてこっちは……」
続いて小さい箱を開ける。
虹色に輝くそれは、宝石のようにキラキラと輝きを放つ。
この魔法紙と虹色のアイテム。
多分だがこれが虹光石なんじゃないか? これは相当な値段が期待出来そう。
「うーん。ちゃんとした人が見れば凄いものかもしれないけど……。それより俺はステータスチェックだな」
早々にアイテムをしまうと俺は宝箱を開ける時よりも、興奮を覚えながら自分のステータスチェックとポイント振りに勤しもうとするのだった。
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