第50話 C級1位
その後俺は橙谷さんの帰りを待ちつつミニドラゴンスライムの魔石集めを続けていた。
「おっ! 調子いいな」
これで6匹目。ミニドラゴンスライムの魔石は全部で8個となった。
残念ながらシルバースライムはあれから出現していない。やはり出現率はかなり低いらしい。
たったったったっ。
俺が次のミニドラゴンスライムを待っていると、階段から足音が聞こえてきた。
おそらく、探索者協会から派遣されてきた人だろう。
「あれ? ボスがいない……」
「お疲れ様です」
降りてきたその人は辺りをキョロキョロと辺りを見回すと、俺を見つけて近寄ってきた。
取り敢えず、挨拶だけ済ませたが、ちょっと気まずい。
「お疲れ様です。私は探索者協会から派遣されてきた茶ノ木三鈴(ちゃのきみすず)と言います。貴方が探索者協会に連絡をくれた探索者ですか?」
「はい。大分時間が経ちましたが、小紫を見つけて……多分この先に行ったと思います」
派遣された方は眼鏡をかけた真面目そうな女性だった。
見た目で判断してはいけないが、デスクワークや受付での仕事をしていそうで戦うようには思えない。
「そうですか。この先は私が請け負いますので安心してください」
「えっと、一応ですけどランクって」
「私はC級です。でも順位は1位でB級の下位よりは強いと自負しています」
「C級……」
探索者協会は小紫の事をどう評価しているのだろうか?
人が死亡するような事件を起こした人物をC級、しかも1人で対処させようとするなんて。
それとも橙谷さんがこっちに来てる事を分かってて、増援はこれ位でいいと判断したのだろうか?
とにかく……。
「すみません。C級の方だとここから先に行くのは……」
「……私では力不足だと? 初めて会う人に対してそれは失礼過ぎると思いますよ」
俺がそれとなく橙谷さんの言いつけを守ろうとすると、茶ノ木さんは明らかに不機嫌な表情で睨みつけてきた。
「別に茶ノ木さんが弱いと言ってるわけではなくて、この先が探索者協会が思う以上に危険な場所になっている可能性があって……。それに橙谷さんからC級の侵入を――」
「ごがぁあぁあ!!」
俺が弁解しているといつの間にか30分経っていたらしく、ミニドラゴンスライムがリスポーンされていた。
話に邪魔だし、処理するのが先か。
「丁度いいですね。私がこの先に行っても問題ないというところを見せてあげましょう」
茶ノ木さんはミニドラゴンスライムを見てにやっと笑うと、ゆっくりと歩き始めた。
「ごはぁあああ」
それに反応したミニドラゴンスライムは霧を生み出し、視界をぼやかした。
「気を付けてください、そいつは炎と電気の息を吐いてきます」
「ご注意ありがとうございます。でも……」
茶ノ木さんは霧に隠れるミニドラゴンスライムを追いかけるように霧の深いところに入っていった。
俺はその行動を追う為に≪透視≫を発動した。
茶ノ木さんが敵の動きを的確に追えるようなスキルを持っていないのか、ミニドラゴンスライムを追わず、その場に留まっている。
「ごがぁ……」
ミニドラゴンスライムが茶ノ木さんの背後に回った。
少し距離をとっているところを見ると、炎か電気を吐くだろう。
「そっちっ!!」
茶ノ木さんはミニドラゴンスライムにどうやって気付いたのか的確に距離を詰めた。
「ごがぁああぁぁああ!!」
霧の深いところ、2人が居るところからミニドラゴンスライムの叫び声が聞こえてきた。
どうやら茶ノ木さんが優勢のようだ。
ミニドラゴンスライムのHPゲージはかなりのペースで減っている。
ただ、減り方を見るに俺の会心攻撃よりかは威力は低い。
「ごがぁああぁあ!!」
ミニドラゴンスライムがモンスターを召喚するときの声が聞こえた。
スルースライムと黒い点が現れ、俺はスルースライムだけは処理してあげようと、自分も霧の深いところに突っ込んだ。
「おおっ」
俺がスルースライムを処理していると、茶ノ木さんの攻撃している様子をしっかりと見る事が出来た。
珍しく素手での戦い。見かけによらず拳闘士の職業という事か……。
「でた。『瞬脚』」
俺はスルースライムを処理すると、黒い点が飛び出したのを確認して『瞬脚』を使った。
「たぁあぁあっ!! よし! どうですか私の実力、は」
俺が飛び出したスライムと向き合っていると、茶ノ木さんがミニドラゴンスライムを倒しきりこちらにやってきた。
「何ですかそのスライムは?」
「あれはシルバースライム。たぶんあれが倒せないとこの先にいる化け物も倒せない。まさか俺がこの様だなんてな……」
シルバースライムに驚く茶ノ木さんの横には下の階層を確認しに行っていたはずの橙谷さんが立っていた。
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