第31話 奢り
「武器の製作費は俺が持つから大丈夫」
「お、太っ腹だな。……もしかしてまたレアな魔石を手に入れたりしたのか?」
「まぁ、そんなところだ」
レッドメタルスライムの魔石、それにゴールドホーンラビットの金角。
売却所で少しだけ売ってみたが、どれもかなりの高額で正直懐はほっかほかだ。
金策でこいつらを狩って素材を売り続けていれば、市場にそれが溢れ、そのうち値段は落ち着くだろうから、ある程度売却数は絞っていきたい。
「製作費は私が――」
「いろいろお世話になっているので、今回くらいは出しますよ。それにパーティーメンバーの武器は俺にとっても大事ですし……たまにはカッコつけてみたいんですよ」
「たまにはって……まぁそこまで言うなら仕方ありませんわね。でもこれは借りにはしませんわよ」
「はは、分かってますよ」
桜井さんが自分で製作費を支払おうとしたので、俺はそれを止めた。
いろいろ言ったがそもそも武器の提案をしたのは俺だしな。
「そうだな。そうしたら次に素材を選んでくれ。今俺のところで扱えるのは耐久値の高い武器を作れるレッドメタル鉱石、脆いが攻撃力の高い武器を作れる黒色のハイディグネイト鉱石、安価で暗いところで蛍光効果のある魔光石、それと――」
「私、白石君と同じものがいいですわ。赤色が好きですの」
「じゃあ、レッドメタル鉱石だな」
桜井さんは俺と同じレッドメタル鉱石の武器をご所望のようだ。
確かに赤いのは中二病心をくすぶるしカッコいいからな。
「だったらまだレッドメタル鉱石持ってるから使ってもらってもいいか?」
俺はアイテム欄からレッドメタル鉱石を1つ取り出して、忠利に手渡した。
売るのが何となく勿体なくて、貯めておいた、いわゆる箪笥の肥やし的な奴だったから都合がいい。
「勿論! 他に何か使いたい素材とかあるか?」
「だったら、これを使って欲しい」
「ん? これは……」
俺はアイテム欄からゴールドホーンラビットの金角を取り出した。
元々のモンスターの特性を考えると、これを素材にした時の武器特性は期待出来ると俺は踏んだのだ。
「ゴールドホーンラビットの金角。モンスター自体は珍しいわけじゃないが、こんなドロップ品は見た事がないぞ」
「たぶん俺が角を折ったからドロップしてくれたんだと思う。あいつ、角を折ると経験値が結構旨いんだよ」
「角を折った!? そんな話聞いたことな……でもお前なら可能か。はぁ、全く驚かせてくれるよ」
忠利はオーバーリアクションで俺の話を聞いてくれる。
正直こんなリアクションをしてもらえる事に俺は快感を覚えていた。
「それじゃあこの2つで武器を作らせてもらう。料金は10万。今回は流石にまけてやれないがいいか?」
俺は財布から10万を取り出すと忠利に手渡した。
これ位はするだろうとある程度お金を引き出しておいてよかった。
「白石君。ありがとうですわ」
「大丈夫です。そんな気にしないでください」
桜井さんに丁寧にお礼をされると俺は少しだけ照れ臭くなった。
やはりお嬢様だからなのか、頭を下げる所作が綺麗すぎて若干緊張する。
「それで、これから3人でダンジョンか?」
「ああ。依頼をこなさないといけないからな」
「依頼? もしかしてC級に昇級したのか?」
「今日したばっかりだけどな。これで給与が貰えるよ」
「それはあんまり期待しない方がいいかもしれないが……とにかくよかったじゃねぇか。俺から昇級祝いをやりたいところだが……」
どさっ!
「これ、購入したいんですけど」
忠利が手を顎に当てとっていると、カウンターに1本の剣と胸当てが置かれた。
今の今まで灰人は探索用の武器を選んでいたらしい。
本当は灰人にも武器を作ってあげたいが、まだ職業の解放をしていないし、今はこれでいいのかもしれない。
「忠利。これをちょっとだけ値引いてくれたら俺はかなり嬉しいんだが……」
「……。何かもっとプレゼントらしいものをあげたかったんだけどな……。祝いもので値引きなんてせこいこたしねぇよ。2つとも無料でいいぜ」
その言葉を聞くと灰人はアイテム欄を開き、それらをしまい込んだ。
こいつは遠慮という言葉を知らないらしい。
「ありがとうございます。大事に扱わせてもらいます。兄さんもありがとう」
「俺は何にもしてないさ。感謝する気持ちがあるなら出来るだけこの店を使ってやってくれ」
「そうだね。これからは御贔屓にさせてもらいます。店長さん」
「おお、輝明の弟だったのか。こっちこそよろしくな」
2人は熱い握手を交わすと、早速連絡先を交換していた。
まるで灰人が年下みたいに見えるが……。
きっと忠利の年齢を聞いて驚く事になるんだろうな。
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