第29話 正式依頼

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from:探索者協会

to:白石輝明

添付:依頼リスト


 白石輝明様C級への昇級おめでとうございます。

 つきましては早速白石さんが現在受けられる依頼リストを添付させていただきました。


 C級に上がったばかりの白石さんには


 ・ダンジョン【獣】で入手で出来るコボルトの毛皮×30

 ・ダンジョン【ゴブリン】で入手できるゴブリンの耳×50

 ・ダンジョン【ゴブリン】30階層ボスより入手出来るゴブリンソーサラーの魔石×1


 などの納品依頼がおすすめかと思います。

 これらは受付後一週間の期限が設けられておりますので受付後はお早目に依頼達成報告をお願い致します。


 また受け付けはこのメールアドレスにご希望の依頼番号を記載の上返信してください。



 白石輝明様宛てに以前からご依頼が届いておりました。

 今回C級に上がられましたので、この度正式に依頼の受付をさせて頂きご連絡をさせて頂きます。


 依頼主は桜井コンツェルン社長桜井権蔵様です。


 以下記載内容は依頼の原文のままになります。



 今回白石輝明殿に依頼したいのは娘の探索者としての育成とパーティーの編成だ。


 探索者桜井綾子はまだまだ未熟。

 私は娘がダンジョンに向かう度に心臓が張り裂けそうな思いをさせられっぱなしだ。

 

 しかしS級の探索者に護衛を任せようものなら、娘の気を害してしまい、口さえも聞いてくれなくなる。


 そんなある日、君がレッドメタリックスライムの魔石を手に入れたという情報が私の元に届いた。

 私は君に人を使いに出させ、交渉をさせようとした。

 すると、この話を聞いた娘は率先して君と交渉をしたいと言い出したのだ。


 私は娘が仕事にこれほど前のめりになる姿など今まで見た事がなかった。


 そこで君を信頼して、娘の探索者としての育成と君と君の弟を含めたパーティーの編成を依頼させてもらう事にした。


 探索者としての育成に関しては他の案もあったのだが、君にお願いしたいという娘からの要望もあったため合わせて依頼させてもらった。

 因みに君の弟をパーティーに入れたいというのは娘たっての希望で私の意思によるところではない。恨むことだけはしないでくれ。


 また、娘が探索者になりたいと言い出したのも君が関わっているのではないか私は睨んでいる。


 決して娘の期待を裏切るようなことはしないで欲しい。勿論私の期待にもな。


 一先ずは娘をレベル40に引き上げてくれ。それで取り敢えずの依頼達成とさせてもらう。


C級10位目指して頑張ってくれ。



 依頼主 桜井権蔵



 この内容を探索者協会で受付させて頂きました。期限は無期限。依頼達成は探索者協会2階にてお願い致します。


 白石輝明様の更なる飛躍を期待しております。


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「C級なりたてに対しての依頼じゃあないな」


 まるで、事前にメールの定型文を用意していたかのようにとてつもない速さで送られてきたメールに目を通すと、なかなか面倒な事が記載されていた。

 

 それに最後の期待云々の一文が恐ろしすぎる。


「パーティーの編成か……」


 パーティーは探索者協会のシステムではなく、ダンジョン内のシステムだ。


 正直なところ今は1人で一気にレベルを上げたいし、なかなか辛い。


 パーティーのメリットとしてはMPの譲渡や一部回復アイテムの効果を共有出来るという点。

 さらに同じ階層に居ればパーティーメンバーに自動で経験値が割り振られるという点だろう。


 最悪、戦わずにぼーっとしていてもレベルを上げられる。


 これが当初は問題になったようで、上位の探索者であればあるほどソロでの活動を好む傾向にある。


「取り敢えず朝マック買って帰るか」


 俺はふうっと息を吐き、まだまだ寝ているであろう桜井さんと灰人のいる自宅に帰ることにしたのだった。


「というか、わざわざ灰人をパーティーに入れたいって……。あの2人仲良さそうだったし、そういう事なのか?」

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