憧れの彼女が実はとんでもない変態だった
Joker
まさかの出来事
彼女を初めて見たのは入学式だった。
どんな女子生徒よりも彼女は綺麗で凛々しくて、正直一目ぼれだった。
彼女は物語の主人公のようで、学校中の人気者だった。
しかし、それに比べて俺は物語のモブ。
彼女という主人公を引き立てる脇役にしか過ぎない。
だから、諦めた。
どうせ彼女に恋をしても実らない、ならば早めに諦めた方が良い。
そう俺は思っていた。
「………」
「くんくん……はぁはぁ……」
今日この光景を見るまでは……。
「あ、あの……何してんの?」
「え……な!? や、山城君!?」
驚く彼女を他所に俺は状況を整理する。
放課後、俺こと山城享明(やましろ たかあき)は体操着を忘れたことに気が付き教室に戻って来た。
そしたら、俺が一目惚れし諦めた女の子、優華島春美(ゆうかしま はるみ)が俺の体操着の匂いを嗅いでいた。
うん。
分からん!!
え?
何これ?
一体どういう状況!?
なんで俺の体操着の匂い嗅いでるの!?
何この状況こわっ!!
だって俺の前に今居るのは変態だよ?
しかも俺の体操着に匂いを嗅いでる変態だよ!?
絶対やばいじゃん!
何されるか分からないじゃん!
「ち、ちがうの! これはその……」
「だ、大丈夫誰にも言わないから……とりあえず体操着返してくれるとありがたい……」
「待って待って! 話を聞いて! ち、違うの! 私は別に匂いを嗅いでいたとかじゃなくて!!」
「体操着を持ちながら言われても……」
「だからまって! 距離をとらないで! 一定の距離を保って警戒しないで! ち、違うの! た、ただ私は……」
「あ、あのそれ以上こっち来ないで貰えます? ちょっと、怖いので……」
「だ、だからちがくて!! え、えっと……好きなだけなの! 山城君の事が好きなだけなの!!」
「………だからって、体操着の匂いを嗅いで良いことにはならなくない?」
いや、そんなカミングアウトをされたところで申し訳無いけど、どっちにしろ変態だよね?
なんだろうこの複雑な感情……。
憧れて、高嶺の華だと諦めた彼女からの告白はすごく嬉しいはずなのに、状況一つで恐怖に変わるなんて……。
「し、仕方ないでしょ! 接点なんてないからその……い、いろいろ溜まっちゃって……」
何を!?
多分エロい意味なのかしれないけど、今は全然興奮しない!
だって、俺が思い描いてた彼女のイメージが全部崩れていってるんだもん!
清楚だと思っていた彼女がまさか変態だったなんて……。
変態でも可愛ければ別に変態でも良い?
んなわけあるか!
普通に変態を目の前にすると怖いぞ!
それがどんなに可愛い子でも!
「あ、あの……絶対誰にも何も言わないので許して下さい……何もしないで……」
「なんで急に敬語なの!? し、心配しなくても何もしないから!」
「じゃ、じゃぁ早く体操着返して下さい……」
「あ、はい……」
彼女はそう言って俺の体操着を畳んで体操着袋に入れて返してくれた。
よし、あとは全速力で帰ろう!
そして今日の事は忘れよう!
それでもう新しい恋を見つけよう!!
「じゃ、じゃぁ俺帰るから」
「ま、待って!」
「は、はい!?」
俺は彼女に腕をつかまれた固まった。
本当だったら憧れの女の子に腕を掴まれて嬉しいはずなのに、今は恐怖しか感じない。
一体何をする気だ?
ま、まさかエロい本見たいな展開になるのか!?
嫌だ!
初めては彼女と一緒にホテルのベッドって決めてるんだ!
教室で変態女子高生とアブノーマルな初体験なんて俺にはハードルが高すぎる!!
「あ、あの……一応告白したんだけど……返事は?」
「ごめんなさい無理です!」
「即答!?」
「いや、こんな最悪の初対面でなんでいけると思ったの?」
「いや、男の子はエッチな女の子が好きって聞いたから……」
「エッチと変態は全然違います。それじゃぁ」
「待って!」
「こ、今度はなんですか!」
「ほ、本当に好きなの! 友達からでもお願い!!」
「えぇ………」
本当は嬉しい出来事のはずなのに、彼女が変態だったと言うだけでここまで見方が変わるなんて……。
い、いや待て。
本当に俺の勘違いかもしれない!
そうだ、彼女がそんなド変態なわけ……。
「あ、あのなんでもするから……そ、そのご主人様って呼んだ方が良い? それとも私が豚野郎って呼んだ方が良い?」
顔を赤らめ、はぁはぁと息を荒げながらそう言う彼女。
あぁ、もうだめだ……絶対に変態だ!!
しかも上級の!
憧れの彼女が実はとんでもない変態だった Joker @gnt0014
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