第9話
気を使っているのか。
高嶺の顔を凝視する。特に不機嫌な様子は見受けられない。
調子が狂う。大して、高嶺とは交流があるわけではなく、あくまで一クラスメートとして傍から見ていて、下している評価は『よくわからない』だ。
笑い方は上品で、物腰も柔らかくて、育ちがいいのはわかる。でも、その一挙動がどこか不自然なのだ。それこそ、ロボットみたいにプログラミングされたような正確さで逆におかしく思う。
何となくだが、高嶺は俺とは正反対の性質だと思う。話していて、少しばかり苦痛に感じる。
だから、これまた何となくだけどウマが合わない気がする。
どうして、高嶺が俺に好意を寄せているなんて噂が流れたのだろうか。
自分で言うのもおかしいが、ここまでストレートな物言いをする俺のどこがいいんだか。
「話聞いてくれて、ありがとうね」
まるで満開の花のような可憐な笑顔で感謝を言う高嶺。
「……あ、あぁ。それくらいお安い御用だよ」
どんな人間に対しても礼儀正しいその無駄に人間が出来すぎている部分が俺とは正反対で嫌いになる。
「じゃあ、夏休み明けにまた会いましょ」
「……ちょっと待って。お前、それ全部持って帰るのか?」
「うん。パパとママが仕事が溜まっていて、泊まり込みで。だから、夜食を……」
医師の仕事は確かに忙しい。家に帰れないことなんて当たり前だろ。
懸命に働く両親の為に尽くす高嶺は褒められるべきだろう。
ただ、買物袋の中身の量が異常だ。恐両親の夜食らしきカップ麺やレトルト食品が詰められた買物袋に加えて、もう一つ生鮮食品や日用品がたんまりと入った買物袋もあった。
正直、かなり重いだろう。それぞれ十キロくらいありそう。
例え、なかったとしても細身で明らかに力のなさそうな高嶺には少々辛いだろう。
別にこのまま見て見ぬ振りをして、さっさと高嶺と別れても構わない。でも、そうした場合、心に後味の悪さ残すことになる。
高嶺が苦労しているのにそれを知った上で無視をする冷たい人間。
はぁと深く溜息を吐く。どうして、俺は余計なことに首を突っ込みたくなるのだろうと自分自身を戒める、
「……一袋、渡せ。病院くらいまでなら持っていくよ」
「……どうして?」
「無視できないだろ。そんな重そうな荷物」
「……おかしな人ね」
高嶺は柔らかい笑みを浮かべた。
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