-宇宙クジラと黒ウサギ-
みなはら
第1話 -宇宙クジラと黒ウサギ-
むかしむかし、
白いウサギの王国から追い出された、黒ウサギたちがおりました
彼らは生まれた星から
ある時、星を渡る船が壊れて、たくさんの黒ウサギがしにました
黒ウサギの生き残りは、星を旅する宇宙クジラの群れに出会い、
年若いクジラの少女に命を助けられます
少女と共にゆくことを選んだ黒ウサギは、
宇宙クジラの群れが目指す、彼らの故郷へと共にゆくことになりました
星の道行き
とてもとても長い時の、星の旅路を
黒ウサギと宇宙クジラは、
悠久の時を重ねる、はるかな道を歩みます
◆◆◆◆◆
時が流れました
クジラの少女のお腹の中で、
黒ウサギたちは増えて栄えていました
そして、宇宙クジラとの約束を忘れて、
彼女の身体を侵してゆきます
黒ウサギは、少女とした約束を忘れてしまいました
ここは宇宙クジラの中ではなく、
もともと居たウサギの世界の、自分たちが住んでいる穴の中なのだと
宇宙クジラの少女は、
クジラの群れ長から言われていたことを、悲しく思い出します
命の短い小さな生き物たちは約束を守れない
守りたくても約束を忘れてしまう
約束を正しく、次の世代へ伝えてゆけないのだということを
クジラの少女は、仲間と旅をすることができなくなりました
少女の身体をウサギたちは傷つけて、どんどん栄えてゆきます
ひどく病んだ宇宙クジラは、
仲間と同じ速さで星を渡ることができなくなったのです
初めに宇宙クジラと約束をした黒ウサギはもう居ません
黒ウサギたちは、クジラの少女のことも、
この世界が何なのかということも、もう忘れてしまっています
けれども、
黒ウサギが約束を忘れても、宇宙クジラは約束を覚えています
クジラの故郷へと黒ウサギたちが一緒にゆくか、
どこかの黒ウサギが住める星まで、ウサギたちをつれてゆくという約束を
◆◆◆◆◆
いつしか少女は、クジラたちの故郷へと帰ることをあきらめます
それでもウサギとの約束だけは果たそうと
そんな想いを胸に、クジラはひとり星の海を渡ってゆきます
最期の旅路の途中、宇宙クジラはその
なんとか黒ウサギたちが生きてゆける星を見つけます
その星は宇宙クジラとならなかった
少女はウサギたちのために、
とても苦労しながらゆっくりとゆっくりと星へと近づき、
宇宙クジラとならなかった、その大きな星の上に少女は静かに墜ちて息絶えます
宇宙クジラの体内で過ごしていた黒ウサギたちは、何があったのかもわからずに、
宇宙クジラの少女の
それまでと変わらずに生活を続けてゆきました
やがて、約束を守ってくれた宇宙クジラの身体のなかから出てゆきます
黒ウサギは約束の事などまったく知らずに、
生まれて、そして去りゆくことをを繰り返しながら、
クジラの見つけた新しい星の上で栄えてゆくのです
◇◇◇◇◇
黒ウサギたちのすむ星は、
ウサギたちで栄えていました
もともとその星に住んでいた空を飛ぶ生き物や、
草原に住んでいた生き物たちと共に暮らしながら、
ウサギたちの国は大きく豊かになってゆきました
『ウサギたちの星』、
クジラの少女が見つけてくれた星を、
ウサギたちはもともと居た星の名前で、そう呼んでいました
長い時が経って、
星のまたたく
宇宙クジラの少女のように、大きな大きな星を渡る船でした
星からの巨大な船は、
黒ウサギの住む星へと現れて、星の空へと留まります
それは黒ウサギが逃げ出したウサギの星の船
船にはたくさんのたくさんの白ウサギが乗っていました
ウサギの星はこわれてしまったのです
白ウサギたちも星の世界へと逃れて、旅のはてにこの星へとたどり着いたのでした
黒ウサギたちは、自分たちを追い出した白ウサギのことも忘れていました
けれども、自分たちと違う白ウサギたちを好きになれませんでした
白ウサギたちは、追い出した黒ウサギのことを覚えていて、今も自分たち白ウサギよりも低く見ていました
争いが始まります
黒うさぎと白うさぎがなかよく一緒に暮らすだけの場所はあるのですが
◇◇◇◇◇
落ちた星の欠片で壊される黒ウサギの王国
星の船から落とされる火の雨で、焼かれる黒ウサギたち
力なく四肢を投げ出し、焦点の合わない虚ろな目で横たわる、
たくさん、たくさんの、数えきれないほどの、それまで黒いウサギだったもの
黒ウサギを狩るものが船から下り、ウサギの世界を闊歩します
白ウサギたちの星の船から落とす火の雨は、
黒ウサギだけでなく、その世界に住む、他の生き物たちも焼き、
黒ウサギを狩るものは、他の生き物たちを傷つけました
星の生き物たちは、生き延びた黒ウサギたちの力になり、
黒ウサギと共に、白ウサギと戦います
戦いは激しくなり、多くの生き物たちの命が失われてゆきました
ある時、
黒ウサギと共に戦う空を飛ぶ生き物たちの中から選ばれた、
鳥の勇者のひとりと、黒ウサギの一握りの生き残りたちは、
星の船をこの世界からなんとか無くそうと考えたのです
ウサギたちは、苦労の末に星の船へと向かうため、
白ウサギの船を空から落とすことを果たし、
そしてやっと、長く苦しい戦いを終わらせることができました
星の船に乗ってきた、
争いの種を持ち込んだウサギたちは、すべて居なくなってしまいました
そして、その時の星の船の欠片の一部は、
この星を巡る、みっつめのちいさな月となって、
今も、星の
◆◇◆◇◆
やがて、ウサギたちの星と呼ばれていた世界に安らかな日々が戻ります
争いや喧騒で満ちあふれていた世界
草原や穴ぐらや、水辺や森の影に静けさが戻ります
争いはもうありません
世界はとても静かになりました
時と共に、草原や森の傷跡は癒されてゆき、
世界の営みは、穏やかに進み続けてゆくのです
数を大きく減らしてしまった、この星の生き物たちも、
やがてはその数を、ゆっくりと戻してゆくことでしょう
もしかしたら、
やがて、この
もしそうなったのなら、
それは、まだ少女だった宇宙クジラのように、いつかはこの広い星の海を旅するのでしょうね……
ロバート・F・ヤング氏、リチャード・エイヴァリー氏、リチャード・アダムス氏に捧ぐ -宇宙クジラと黒ウサギ-
-あとがきといいわけ-
たぶん、ネタの初めはパクり、良く言うならオマージュです。お話を合わせて繋げただけ。
そんな印象です。
ヤング氏の『ジョナサンと宇宙クジラ』と、エイヴァリー氏の『タンタロスの輪』-コンラッド消耗部隊-を読んだことのある人はそう言う気がいたします(^_^;)←自分もそう思います。
リチャード・アダムス氏の『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』の黒うさぎのイメージから始まって、
ヤング氏の『ジョナサンと宇宙クジラ』と、エイヴァリー氏の『タンタロスの輪』-コンラッド消耗部隊シリーズ-から骨子の一部を借り受けて、
お話を整えていったのですね。
アレンジはしてもアイデアの元ははっきりとしている。←自分は知っています。少なくとも。
なぜそんなものを仕上げたのか、よくわかりません。
物書きの人格が活動を開始した印象はありますね(苦笑)
それが書きたがるように書いて、整えた印象です。←これを書きながら、メイン連載の登場人物たちが書いている内容について、周りであれこれと勝手にしゃべっているのが聞こえました。書きながらうるさいと思ったのは久しぶりですね(^_^;)
書きながら、子供の頃に読んだ絵本、『しろいうさぎとくろいうさぎ』を思い出していました。
たぶん、ウサギたちの行動によっては、絵本にあるような穏やかな世界が訪れる事もあったと考えています。
でも、そうはならなかったんですね。
そういった意味では、世界の作りは初めのイメージにあった、『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』に近いものになっていったのかもしれません。
結局のところ、ウサギの物語は、
拙作としてのメイン連載で触りだけ語られた物語、-空から悪魔が落ちてくる-というお話の原型のようなものへと落ち着いてゆきました。
ウサギと書きつつも、ウサギでない生き物と無意識に一部を重ねているからでしょうね。
-宇宙クジラと黒ウサギ- みなはら @minahara
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