湿原詩集

紺野理香

敗者

生物が地上に上がったのは

海での競争に負けたからだという

敗者が背負うハンデみたいに

私達は敗れて肺を手にした


どうして心に一番近いところに

こんな空洞を持たなきゃならないのか

体の何分の一かを空っぽにしないと

地上で生きていけないのか


しゃくりあげるように

原始の大気を吸い込んだとき

体をいっぱいに満たしていたあたたかい何かを

永久に失ってしまったのだ

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